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嬉野です。昨夜は、札幌の某ライブハウスで、とある大物俳優との撮影がありまして。心配そうにやって来た大物俳優も帰る頃には晴れやかな笑顔で車に乗って去って行きました。
で、一夜明けた本日の札幌は朝から快晴で☀️たいそう気持ちがよかった。えぇ日誌です。
私、出張中は毎朝我が家に電話するんですけど、そのときにね、14歳になる我が家の愛犬がね、布団の上で寝小便垂れて、うちの奥さんが「洗濯に追われて大変なのよ!」という話を聞かされることが多くなりましてね。
まったくもって犬も私も高齢化してますからね、寝小便も垂れるようになる。幸い私はまだ垂れておりませんよ。しかしながら犬は垂れている。ところが、それが粗相なのか、確信犯的に1日構ってもらえなかった不満からの嫌がらせであるのかが判然としないところがある。しかし、何しろ14歳。老化していることは事実でね。耳も遠くなっちゃって。うるさく吠えまくってたピンポンと鳴る呼び鈴にも反応しなくなって、それはそれで静かでいいんですけど、うっかり背後からヒョイと犬を持ち上げようとすると、今までのように気配がしないらしくとても犬は驚くんですね。それで一昨日手を噛まれましてね。痛いわけです。でもその噛み方にもちょっとは遠慮の跡が見える。前歯で遠慮がちにおちょぼ口で噛む。おちょぼ口で噛むとはいえ痛いわけです。そしてね、手も痛いけどショックで心も痛いわけです。仲良しだと思っていたのに違ったの?という寂しさがある。とはいえ、それでも長生きしてくれれば嬉しい。まぁ。今のところやたら元気なんですけどね。とにかく毎日腹を空かせてますから美味しそうによく食べます。
しかし、そこにもボケ老人の影を見ないでもない。食べたのに「食べてない」と主張されますお年寄り的なことなのかもしれない。今だって私の膝の上で寛いでいますが、はたして私に懐いているんだか、たんに私をソファーだと思っているのか、その辺りが判然としないところがある。
さて、先日もここに書きましたがね。今月の6日に、私が連載しております集英社の雑誌「KOTOBA」の冬号が発売されます。
みなさんは、ご自分の家族の何代前まで遡ったお話をお持ちですかしらねぇ。私は父が亡くなる直前に父から我が家に伝わる昔話を聞き出しまして、そこで私の実家がどうしてお寺さんになったのかの話に行き当たりましてね。その話に驚くやらあっけに取られるやらだったものですから、その話を今回の連載に書いたわけです。
私の4代前のひいひいお祖父さんから話が始まる因縁話めいたものなのですが。でも、おそらくね、娯楽のなかった時代には、先祖の苦労話だって小説みたいにその家に語り継がれていたのかもしれませんよね。実際、面白いんですよね、不便で貧しかった昔の日本の庶民の普通の暮らしの中で生きてた人のお話というのは。普通に生きてただけの人たちなのに、物語の登場人物として聞き応えのある振る舞いをするんですよね。感心します。
それを思えば、この先また日本が貧乏になったって、社会が不便になったって、生活は大変にはなるんだろうけど、その分、誰かに話したくなるような面白い話もたくさん生まれるのかもしれない。そう考えるとね、とにかく平和でありさえすれば、そこは人間、どんな時代になってもなんとか面白おかしく生きようとするんだろうなと思うわけです。ということで、ひととおり宣伝もさせていただいて、本日の日誌は終わりです。
そうそう😊今週末は所沢でイベントです。東京は20℃なんていう12月とも思えない気温になるって予報ですからお出かけにはちょうど良いんじゃないでしょうか。どうぞ、どんどこ所沢へおいでくださいませ〜。嬉野でした〜〜。
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藤村でございますよ
先週のモルック大会の不甲斐ない敗退から日々練習は重ねておりますが、若干風邪気味にもなりまして、そのまぁ、日誌はあとでいいだろ、ぐらいに思っておりましたね
ということでね、長い文章も書くつもりはなく、ここは、最近作った料理の写真で誤魔化しますよ
モルックと同じく、料理をしている時が楽しいんですね、今は
これはですね、白菜と豚バラのミルフィーユ鍋をアレンジして、豚バラをミンチにして、大根が冷蔵庫に余っていたので、半月切りにした鍋ですね
さらに
蓮根も余っていたので、同じく半月切りにして上に被せて煮込んだ鍋ですね
もうね、美味いに決まってます
これは、キャベツが余ってたんで検索したところ、リュウジのバズレシピが筆頭に上がったんで作ってみましたよ
豚バラ肉のモツ鍋風で、なんと言っても見栄えがいい
これ、キャベツが丸ごと入っているように見えるけど、実は4分の1のキャベツをドーム型に組んでいて中は空洞。下に豚バラが仕込んであって、20分煮込むうちに徐々にキャベツが沈んでいって、最後の5分ぐらいでニラが鍋に沈むという、そんな計算高い鍋ですね
これは段違いに上手かった
これは初めて作ってみました
韓国料理のカンジャンケジャンは、生のカニを醤油に漬け込んだものだけど、これはアルゼンチン生エビをつけこんだもので
カンジャンセウっていうやつですね
生のカニはなんか難しそうだけど、エビならいけそうだということでね
この写真はあんまり美味しそうに見えないけど、一晩漬け込んだこいつを翌日、頭と尻尾をとってね、熱々のご飯の上に並べて、その上に卵の黄身をたらし込んで食べてごらんなさい、もうたまらんですよ
これはもう定番の、カキフライと、これまた余っていたナスにひき肉も挟んでフライにしたものですね
カキは、小ぶりの安いやつを、4つぐらいだんご状にして揚げると値段以上の満足感が得られますよ
んで、これは今日の昼に作ったとんかつ。
本当は低温で揚げる「白いとんかつ」を作ろうと思ったら、思いのほか茶色の普通のとんかつになりましたね
以前作った時は大成功したんだけども
あのね、130度ぐらいの低温でじっくり揚げる白いとんかつは、肉汁たっぷりでほんと美味いですよ
難しいけど
で、さっき作ったのが肉うどんですね
肉うどん、何度もいろんなレシピ見て作ってるけど、今日のはイマイチ!
でした
以上!
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第20回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
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☆今月のお悩み☆
こんばんは。先ほど同期の裏アカと思われるTwitterで「同期にモヤっとする」という発言を見てしまいました。
つい私も裏アカからいいねを押してしまい、会社や先輩の愚痴やらをスクショしてしまったところ夫にドン引きされてしまいました。
ここで相談です。特定可能な愚痴を世間に垂れ流す同期と他人の裏アカをニラニラ楽しみにしている私、どっちが性悪でしょうか。
(P.N インキー子虎)
こんにちは。ご相談をお送りいただきありがとうございます。
まず、私の理解がずれているとお返事もずれてしまいますので、いったんお話しをまとめさせていただきます。
あなたは、前提として、
・お勤め先の同期の裏アカを把握して追いかけている
わけですね。そして、
・その同期の方が裏アカで、「同期=あなたにモヤッとする」と書き込んだ内容を見つけた
ということだと思います。同期の方から見た同期イコールあなたですよね。もしかしたらあなたを含めた数名かもしれませんが、そこは情報が足りていないので、間違っていたらご勘弁ください。
そして、
・あなたは自分の裏アカ(たぶん同期の人にはそうとはばれていない)を使って、「自分に対してモヤッとする」と書いた投稿にいいねをつけた
ということですが、これはちょっと深読みが必要です。いきなりあなたの裏アカにいいねを付けられたら、同期の方はびっくりするのではないでしょうか。こいつ誰だ、みたいな感じで。そのいいねが不自然じゃない状況には、ぱっと思い付く感じで三通りのパターンがありえます。
① あなたの裏アカを含めた複数のアカウントがいっせいにいいねをつけている状況で、同期の方はいちいちいいねを見ていないから問題にならない
② あなたは裏アカで、同期さん(の裏アカ)と仲良くしており、あなたの裏アカがいいねを付けることに不自然さがないし、同期さんはあなたの裏アカの正体があなただと認識していない
③ あなたの裏アカは鍵アカウントなので、いいねをつけても相手に見えないし、あくまであなたが同期の裏アカの投稿をチェック・保存するためにいいねをつけただけである
まあこのどれかではないかと思うわけです。なんとなく③な気がしますが、それはわかりません。続きもまとめましょう。
・その同期の方は、裏アカで会社の愚痴や、共通の先輩の愚痴をも投稿しており、あなたはそれらをスクショした
・その話をすべて夫さんにお話しされ、引かれた
こういった内容をお書きいただきました。
さて、以上の内容から、「ここで相談です」につなげる場合、文章の定跡通りに行くならば、
「このような行動をしてしまう私は性悪でしょうか」
が普通の流れだと思います。
あるいは、
「このような行動をして夫に引かれたのがちょっとショックだったのですが、やはり、他の人も私の行動を見ると、引くでしょうか」
あたりが自然だと思います。
しかしあなたは、「ここで相談です」の後に、
「同期と私とどちらが性悪でしょうか」
という内容を書かれました。
ここでひっかかりが生じます。
なぜひっかかるかというと、ここまでの文章を無心に読む限りでは、同期さんの「性悪さ」がいまいち思い浮かばないからです。
イヤイヤ、同期の方は、あなたのことを裏アカで「モヤッとする」と書いているのだから、性悪の候補ではあるだろうさ、という方もいらっしゃる……かもしれませんが……。
同期の方はどちらかというと、性悪というより脇が甘いというか、粗忽であるというか、うっかりしているというか、とにかく、悪というより失策、エビルというよりエラーで語るべき存在として書かれています。
なにせ「裏アカ」ですよね。根源的に隠しておきたいアカウントです。リアルでつながっている人たちにはわからないように運用する場所です。
それがこうして、こともあろうに当人にばれてしまっているのだから、悪いやつだなーではなく、ポンコツだなーという感想が出てくるのが自然です。
したがって、「同期さんとあなたとどちらが性悪ですか」という質問は、いまいち成り立っていないように思えます。
さらに言えば、あなたはあなた自身のことを「性悪」と読めるように文章を組み立てられています。
「つい私も裏アカから」と、あてこすりのような表現を用い、「夫にドン引きされてしまいました」と身近な家族からの反感をそえて、他人の裏アカをニラニラ楽しんでいる、とオノマトペ全開で不快をふりかけのようにまぶす念の入れよう。
つまり、この文章は、読む人に、「同期はポンコツ、あなたは性悪」と読めるように作られています。だから私は違和感にひっかかる。
「同期と私とどちらが性悪でしょうか」。いやいや、これは相談として成立していません。素直に読む限りでは、誰がどう考えてもあなたのほうが性悪だからです。
ここに書かれている内容だけを読むと、そう読めてしまうのです。
だから私はもう少し考えるべきなのだと思います。
あなたの本当の相談の内容は、「どちらが性悪でしょうか」ではないのではないか、と。
そもそも同期の方はなぜあなたにモヤっとしたのでしょうか。
同期の方が、あなたに対して少し嫌だと感じたことがあった。
それだけでしょうか。
同期の方が一方的にモヤッとしているのではなく、じつはお互いさまで、あなたはあなたで昔から同期の方にモヤモヤしたものを感じていたのかも。
昨日今日の話ではないのかもしれない。
だからこそ、同期さんの裏アカを把握して、今までずっと追いかけてきたのではないか。
あなたが相談の裏に(無意識に?)隠している背景情報として、今回のいいねやスクショのずっと前から、あなたと同期の方との間にはなんらかの摩擦がずーっと存在していたのではないかと思います。あなたはそれによって、それなりの期間、けっこうしんどい思いをしてきたのではないですか。
その結果、現在のあなたが同期さんに対して持っている、一番かんたんな表現語彙が、じつは「性悪」というものなのではないでしょうか。
あなたはずっと前から、この性悪な同期のヤロウめ、と、じくじたる思いを抱えていたのではないでしょうか。
しかしそれを表面に出さずに抑圧してきたのではないかと。
そこを抑圧していないなら、相談文に最初から書いていますよね。「この同期はそもそも昔から性悪で」と。
でもそういう内容を書かずに伏せた。
こじれてからの時間が長くて、どちらかが一方的に性悪だといえるような関係では、もはやなくなっている、ということかもしれません。
あなたも同期さんも互いに相手の本性をうっすらといやがっている。双方向で。性悪、性悪と念じ合っている。冷戦状態である。
仮にそうだとして、あなたは、同期さんを一方的に性悪とおとしいれることまではしていない。相談文になんて嘘を書いてもいいのだから、あなたはもっと、同期を性悪っぽく見せるような工夫をしてもよかったはずです。でもそれをしなかった。
そこは、なんというか、性悪どうしの仁義みたいなものがあったのではないか。
しかし今回、同期さんがポンコツな裏アカ運用をしたばっかりに、あなたに対する不満をあなたが直接受け取ってしまった。あるいはそれは「計算づく」なのかもしれないとすら邪推してしまうのですけれども、うーん、とにかく、同期さんがひとあし先に、あなたを、未必の故意的に殴った状態になってしまった。
あなたは裏アカを追いかけていたばかりに、ふいに、先に殴られた。
そういった背景を全部伏せたあなたは、伏せたつもりで相談文を書いたのだけれど、最後の最後に、つい、「同期と私とどちらが性悪ですか」と書いてしまった。もらしてしまった。
さて、ようやく核心なのですが。
あなたがこの相談文に用いるべき、本来のことばは、「性悪」ではなく、「痛くてつらくて悲しかった」なのではないですか。
たとえばそれはきっと、このような文章でもよかったのではないですか。
こんばんは。先ほど同期の裏アカと思われるTwitterで「同期にモヤっとする」という発言を見てしまいました。
そもそも私と同期とは、これまで、表だってケンカしたり陣地の奪い合いをしたりするような関係ではなかったのですが、内心ではなんとなく馬が合わず、いや、お互いにいい大人なので、そうとは互いに言わずに付き合ってきたつもりでした。
ただ、その裏で、けっこう前に見つけた同期の裏アカをつい追いかけてしまっており、今日にも職場の愚痴が出るかもしれない、明日にも私の悪口が書き込まれるかもしれないと、チェックするでもなくチェックしていたところ、果たして、先ほど私への愚痴を見てしまったわけです。
予想していたこととは言え、ショックです。傷つきました。
というか、隠すならきちんと隠せよ。裏アカだってわかるようなアカウントを作るなよ。なんで私にばれてんだよ……。
もっとしっかりしろよ。なんで私を、陰で殴るんだよ。
思わずかっとなった私は、同期の他の発言をあさり、会社やほかの同僚に対する悪口なども見つけて、これは何かに使えるかもしれないと思ってついスクショを保存してしまいました。それを知った夫にはドン引きされました。
確かに、裏アカをストークするような行動はよくないのかもしれません。その意味では私は性悪だと思います。
でも、同期のことも許せません。モヤッとしたという陰口よりも、なによりも、あんなガードの甘い裏アカで、私に対する不満を適当にもらすなんて。
その程度のことで傷ついた自分も許せないです。
この気持ち、どう落ち着けたらいいと思いますか。それとも、裏アカを追いかけていた人間の当然の末路として、あきらめるしかないのでしょうか。
……さすがに私の妄想が過ぎたかもしれませんので、このへんにしておきましょう。
事実はまったく違うかもしれません。
「どうで荘向けの相談」を送るために、ライトなエピソードをちょっと盛って書いてみたにすぎず、こんな複雑な過去は一切なかったのかもしれません。
ただ、ひとつ言っておきたいことがあります。
あなたは今、思った以上に傷ついており、そこにはケアが必要なのではないかということを、私は心配しています。
しかし、「どちらが性悪ですか」という、もしかすると本来のご相談とは異なる、あなたの痛みをカムフラージュするための「かりそめの声」かもしれないものがどうで荘に届いてしまった以上、私からは、あなたをどうやってもケアできません。
必要なければいいのですが。
あなたの本来癒やされるべき「声」は、あなたの閉ざされた心の中にしまわれているのではありませんか。その「声」が私たちの元に届いていれば、それを「カギ」として、私はあなたのドアを開き、中に乗り込むことができたかもしれません。
しかし、あなたは「カギ」をうっかり心の中にしまい込んで、インキーしてしまっている可能性がある。
「どちらが性悪でしょうか」というご相談に対して、お返事は可能です。しかし、あなたの本当の傷がほかにあるのだとして、そのような「書かれなかった相談」に対しては、まあその、打つ手はないです。
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山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(45)
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第19回
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☆今月のお悩み☆
採血の際、腕の血管が逃げます。右手の血管はレジスタンスの様になっており、看護師さんによっては腕の中で針がマツケンサンバ並みに動きます。マツケンサンバが嫌な私は涙を流しながら「後生ですから、手の甲から、手の甲から採血をッ……」と懇願しますが、看護師さんのプライドを傷つけてしまうのか、マツケンサンバはさらに加速。ここは梅田コマ劇場かと思う位の熱演を繰り広げた結果、腕にはいくつかの注射針の跡と内出血の跡。次の日警察官に職務質問を受けたことは言うまでもありません。腕の血管が逃げないように説得したいのですが、どのように説得すればいいのでしょうか。嘘でもいいので教えてください。
(P.N:匿名希望の中川学)
どうで荘にお住いのみなさまにおかれましては、健やかにお過ごしでしょうか。私はそれなりに健やかです。ことほどさように医療の現場に注目と負荷が寄せられる時代にあって、幸いなことに私はお医者さんにかかりっぱなしということはありません。ここでお悩みの回答を担うもうひとり、ヤンなんとかも医療の従事者ですが、ほんとうにご苦労さまと思います。
では今月のご相談です。採血がいつもうまくいかず、何度も何度も針をぶっさされるからどうしたらいいでしょう、という内容です。これまた幸いなことに、私は採血されることに苦労するという経験はありません。しかし会社の健康診断なんかで「なかなか順番が来ないな」と顔を上げると、射す方も射される方も四苦八苦していたり、あるいは採血という行為に気分が悪くなり別室へ運ばれる人もいたりして、なんとも気の毒だなと感じます。ちなみに気分が悪くなった人は翌年も運ばれていました。
自分の身体の状態を調べるためにするのが採血ですから、治す治さない以前に、治療のスタートラインに立つ段階から苦労を強いられるのは、なかなか奮闘の気がそがれるだろうと思います。加えて採血の苦労にはそもそも、する側の熟練度と、される側の血管の特性という、原因の二面的複雑さがあるはずです。しかし相談文を読む限り、採血のうまくいかなさは終始、ご自身の生きのいい血管(というと医療の現場における矛盾が生じそうですが)にあると自ら語られています。決して看護師のせいだとはおっしゃいません。そこに私は相談者さんの、医療に従事される方への配慮、言葉を変えれば「注射のプロフェッショナル」への敬意を、ほのかに感じます。
プロフェッショナルに注文をつけるのは勇気がいります。ある事象や行為について、明らかに自分より経験量もスキルも多い相手へあれこれ言うことに、私たちはためらいをおぼえます。なにせ向こうはプロですから。飲食店へ入って、うまいまずいはともかく、作り方まで指示する人はいないでしょう。私もこういう仕事が長いので、ようやく言葉のプロという認知が進んできたのか、さいきんは言葉の選び方について社内からあれこれ指定されることはなくなりました。うまいまずいは相変わらず言われますが。なので、相談者さんも「後生ですから」という懇願というかたちでしか、プロに注文をつけることができないのでしょう。結果、腕の注射跡は増えるばかり、とは相談文に書かれているとおりです。
ご相談には「逃げる血管の説得方法を教えてくれ」とあります。私には不随意筋の管理方法などわかりません。だいたい随意の筋すらうまくコントロールできない、極度の運動音痴で知られる私です。尋ねる相手を間違っています。とはいえ、なかやまきんに君ですら、筋肉に聞いても答えはわからず、筋肉はルーレットだとおっしゃっています。きんに君でも無理なのですから、われわれが「逃げるのかい?逃げないのかい?」と自らの血管に説得を試みても、成功するはずがないと思われます。つまり注射をされる側に、打つ手はないのでしょう。やはり採血は、注射のプロが成否を握る領域なのだと思います。
と、ここまで私は胸騒ぎを覚えながらも、その胸騒ぎがいったいなにかを把握しないまま回答を進めてきました。回答も終盤に差し掛かるいま、胸騒ぎの出元を探るべく、ペンネームのお名前を検索してみたのです。そこでわかったのは「相談者さん、あなたもプロですよね…?」ということでした。
もちろん相談者さんがプロの作家さん、それもマンガ家さんであることは推測の域を出ません。私には確かめる術もありません。しかし、この相談文の流れるようなおもしろさ、客観性と躍動感にあふれた血管描写力、そして必要以上に語られるマツケンサンバへの多幸感に、私は一読目からただならぬ胸騒ぎをおぼえていたのでしょう。これはプロの仕事だ、と。
であれば、なおさらです。プロに注文をつけるなど、私にはできません。私にはそんな勇気はありません。私が申し上げることができるのは、この相談文で綴られたお悩みをぜひマンガで読ませてください、それだけです。ただまあ、打つ手はありません。
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第18回
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☆今月のお悩み☆
くだらない悩みですみません。夏はさっぱり、美味しい料理の時期ですね。こんにちは。
週末いま 推しているジャンルで某コラボカフェ的なものに通っています。ただここ最近、ヘルシーブームもあり腹八分目の生活から食べ物を沢山食べることが出来ません。歳のせい? 揚げ物は特に……
もっと推しに貢ぎたい!!健康も大事と思いますが、屈強ないっぱい食べれる胃袋をつくるにはどうしたらいいでしょうか…?内臓強くなれますか?出来ることがあればご教授願いたいです。宜しくお願いします。
(P.N:たくあん)
こんにちは。食ですね。なるほど食か。いいテーマだなあ。
思い起こせば我々は、幾年もの間、うまいものを食わせないというだけでタレントが激昂する番組を観察してきたわけです。「食」をめぐった感情のぶつかり合いというものは、じつに人間らしく、しみじみとあさましく、どことなくいさぎよく、むき出しの心と心のつばぜり合い、極上のエンタメ、人生劇場ここに極まれり。ため息まじりに感心するわけでございます。
いっぽうで、たくあんさんの場合には、「腹八分目以上に食べられなくなった」ことがお悩みであるということですね。ははあーそうですか、腹八分目ならいいじゃないのよ、健康にいいからそのままでいなさいよ、と書いて終わろうかと思っていたのですけれども、コトはそう単純ではないようです。
なぜ、たくあんさんは「いっぱい食べれる胃袋」をご所望なのか。
それはひとえに、
「推し活動においてコラボカフェでメニューを片っ端から平らげたい」
からなのですね。
栄養のためでもなければ、道楽のためでもなく、「推すために食わなければいけない」という使命感のため。利他が極まりすぎて一周回って超利己的になってて、最高ですね。
ではそんなワガママなあなたにしっかりとお答えいたします。胃を鍛えるというのは、「劇場に芸人をたくさん出演させること」にひとしいです。
???
どういうことでしょうか??
大丈夫、順を追ってご説明しましょう。
まず、胃というのは、食物を胃酸で消毒しながら、適度に撹拌(かくはん)し、おおまかに砕き、その先にある「消化酵素が雨あられと降りそそぐトンネル(=小腸)」に食べ物を送り出す働きを担っております。
胃からはアルコール以外のものはほとんど吸収されません。体の中に栄養を取り込むのは、胃の先にある小腸の役割です。ちなみに水分の吸収は大腸で行われます。
ここで、食べ物を「舞台で活躍する芸人」に例えますと……。
胃は待機室であり、「楽屋」です。消化吸収のメインステージではありません。
胃には、食べ物が1時間半から2時間くらい留まります。食べ物たちは、「楽屋」でそれくらいの時間待機して、十分に緊張がほぐれてから、小腸という舞台に出て行くわけです。
では、俗に言う「胃の強い人」というのは、どういう状態なのでしょうか?
ひとつには、胃袋の中にたくさんの食べ物を抱えて混ぜることができる人。
もうひとつは、胃袋の中からさっさと食べ物を小腸に送り込んでしまえる人。
さっきの芸人さんの話でいうと、「楽屋のキャパがでかい」とか、「楽屋での待機時間が短い」ことを、俗に「胃が強い」と呼ぶわけです。
ここでひとつ考えてほしいのですが。
芸人さんを、楽屋にたくさん収納し、短時間にいっぱいさばくことが、お笑いのクオリティと関係しますか?
私は……関係しないと思います。
それは芸人さんたちの緊張を高め、本来の能力を発揮できなくする、愚行です。
劇場は儲かるかもしれませんけれど……。いや、お客さんからすると、たくさんの芸人が次々舞台上で入れ替わっていけばいいというものでもないと思うんで、結局は売り上げも落ちると思います。
胃での食物の処理をオザナリにすると、小腸や大腸で食べ物がうまく吸収できなくなります。ゴツゴツしてろくに砕かれてもいない食べ物は、消化酵素の効きも悪くなりますし、内臓の中をうねうね先に進ませるにも苦労するので腸が必要以上にウニョンウニョン、ウニョンウニョン動くことになって、お腹がグルグルしたり、ときにお腹の真ん中がズーンと痛くなったりします。
そういえば、YouTubeなどでご活躍のフードファイターの方々が、総じてあまりお太りになられていないことを、不思議に思ったことはありませんか?
あんなに食べてるのにどうして太らないんだろう。うらやましい! と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここはむしろ、ぞっとすべきポイントです。
あれだけ食べてるのに太らないって、それ、消化や吸収があんまり効率良くないってことなんじゃないのかな、と考えた方がよいです。
一般的に「胃の強い人」と考えられている方々は、みなさん、とんでもないクオリティのウンコをします。詳しく書くとこの原稿の意味合いが変わってきますのであまり書きませんが、「これは……栄養はほぼスルーしてるね……」ということになっております。
というわけで、あなたの健康を第一に考え、食べ物にとっても幸福な結末を第二に考えたとき、「胃が強くていっぱい食べられる」ことには、大きなメリットがありません。それは芸人を潰すシステムです。劇場の価値も下げることになります。
よろしいですか! すこやかな暮らし! うつくしい人生! 食べ物を愛で、食べ物に愛でられるようなフードライフをおくるために! 早食いも! 大食いも! 百害あって一利なし! やめましょう!!!!!
……と私が申し上げたところで。
うるせえ! こちとら推しのためなら自害も厭わんのじゃ! という、たくあんさんからのお悩みに答えたことにはならないと思います。
コラボカフェの全メニューを制覇することが第一義であって、そこで多少自分の健康が害されようがかまわないという気持ちに、「胃をだいじにしてください~食べ物をリスペクトしましょう~」と正論をぶちかましたところで、それはあなたの心には入っていかないでしょう。
今日のここまでの原稿は無駄です。原稿料はいただきます(以前にここで原稿料はいりませんと書いたら本当に原稿料ナシになりました)。
そこでここからは、推しコラボメニュー全制覇のために、人体の構造をハックした私が考え得る最善手を記します。
(1) 満腹中枢をだませ!
食べ始めて20~30分くらいで満腹中枢が動き始めます。したがって、注文したメニューが手元に届き、一口でも口にしたら、食行動以外の作業は一切せずに食べ物を口の中に運ぶことだけを考えてください。それが量を食うコツです。途中でよい画角の写真を撮るとか、SNSにあげて同担を喜ばせるとか、反応のリプに2秒でいいねを付けるといった活動に1分以上使わないでください。あなたのその1分で、食べられた2口があるはずです。あなたの承認欲求と、コラボ商品への課金の総量、どちらを大事にされますか? これはもう価値観の問題ですが正義の在処は明白です。
(2) 水分の取り方に注意しろ!
胃ではアルコール以外のものは吸収されません。「水分をとって食べ物を押し流せばいっぱい胃に入るやろ」と考えている人がいますが、幽門(胃にとっての肛門みてぇな場所)はそれほど甘くはありません。水分ごと、胃の中できっちり撹拌されます。飲んでも食えません。推しコラボメニューにドリンク系が混じっているときは、早々と楽屋のキャパを圧迫することを覚悟してください。推しの色にあわせた二種類のドリンクを購入して写真を撮ったあと、飲み下したそれらは胃で1時間半混ぜられます。むしろ他のものを投入して混ぜないほうが関係性は強固になるのではないですか? なぜ、複数のドリンクといっしょにシロノワールのパチモンみたいなデザートを追加で頼んでしまうのですか? それは本当にあなたの大事な推しを愛でることになるのですか? 箱推し? うるせえ黙って読め
(3) 直参回数で勝負しろ!
楽屋のキャパは鍛えられません。となれば、コラボ期間中にお店を訪れる回数を増やして対応するしかないです。朝昼晩、すべて通いましょう。栄養の偏り? 今さらあなたがそれを気にされるのですか? や、もちろん、私は気にしますよ。医者としての責任で、「パンケーキで君の筋肉を置換するつもりかい?」と申し上げますよ。しかしあなたにとってそんなことはもう関係ないはずです。プリンとアイスで3食×7日=21回転くらいなら人体は適応してくれます。長い目で見ればそういう生活をすればするほどたぶん早く死にますが、それでいいんでしょう? 人生なんて壮大なひまつぶし、と言った人がいますが、私が考えますに、人生というのは推しによって生の苦痛を緩和する壮大な緩和ケアです。
今回の原稿、「とんでもない医者だ!」と炎上するかもしれませんが、その場合怒られるべきはこんな質問を選んで私の記事が無料公開されるタイミングで送り付けてきたどうで荘スタッフですので、ご了承ください。推し活に、医学的に打つ手はないです。
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山本隆博
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病理医ヤンデル/市原真(45)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第17回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
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様々な「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。
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ヤンデル先生の回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!
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☆今回のお悩み☆
シャープさん、ヤンデル先生、こんにちは お二人に聞いて欲しい悩みが一つあるのですが、それがうつ手がない悩みなのか?この悩みを相談していいのか?と言う事にも悩んでしまって。悩みってなんでしょうね笑。
世の中は、コロナがなんとなく明けたような空気があり、飲み会が解禁みたいな雰囲気を醸し出し、飲み会の活気が戻りつつあるこの頃。 先日、半年程前に赤ちゃんの生まれた友人に会ってきました。
赤ちゃんの機嫌も良く、沢山笑ってくれて、可愛かったです。 その友人はチャゲアス好きで知り合った古い友人なのですが、その他の古い友人も集めて、久しぶりにお披露目会を企画しました。
そのチャゲアス好きの古い友人の中に、一年半前に、奥さんを亡くした友人がいます。企画をしたときに、すぐ反応してくれたのは彼でした。
彼 「ありがとう。その日は奥さんの誕生日なので、申し訳ないけど欠席します🙇🙇」
自分 「了解です。一杯楽しかった事を、思い出して下さい。今度、個人的に飲みましょう。」
自分の返信もこれで良かったのかと思いましたが、その後、違う日に個人的に飲もうと誘ったら、心良く承諾してくれ、後日二人で飲むことになりました。
二人で会った際、彼に何を言ってあげればいいのか、それとも何も言わない方が良いのか。なるようにしかならないとも思いますが、それでも経験豊富なお二人に、ご意見、アドバイスなどを頂きたいと思い、質問させて頂きました。 よろしくお願いいたします。
PN: M.H
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どうで荘にご入居のみなさま、最近だれかと飲酒しましたか。私も時々、だれかと飲酒しています。結局どこからいつなにが解禁になったのか、明確な線引きもわからないままにぬるっと変化した毎日ですが、少なくともだれかと外で飲むという選択に、ほとんど逡巡がいらなくなったことは、ありがたいことだと思っています。言いたいことがあろうがなかろうが、のべつまくなしにしゃべろうがぽつぽつ口を開こうが、声の届く範囲でだれかと飲むのが、私はやっぱり好きです。
では今月のお悩みです。重いです。さっきこの原稿の下書きファイル名を見たら、打つ手がない相談室もどうやら今回で17回目のようです。解決をあらかじめ放棄した相談室とはいえ、毎月の連載を続けていると、回答するのに気が重い回と、そうでもない回があります。その気の軽重はひとえに相談内容によるのですが、どこに重さを感じるかは、つまり「死」です。どうで荘管理人から月末に送られてくる相談内容に、死の文字があったり、死の気配を感じたとたん、私は自分の喉がキュッと閉まる感覚を覚えます。生老病死とはよく言うけれど、「おもんぱかれなさ」でいえば、死ほどわからないものもないと思います。
ですから今回は重いです。激重です。まだ最近といっていい過去に奥様を亡くされた友人とひさしぶりに飲む時の態度を、相談者さんはお悩みです。相談文には、再会のきっかけが共通の友人に赤ちゃんが生まれたことであるとも記されていました。その生と死のコントラストに、相談者さんも気後れする気配が感じられ、私も胸が詰まります。
それにしても敬服するのは、相談者さんがその友人を、ちゃんと誘うところだと思うのです。私を含めたほとんどの人は、悲しみに暮れているであろう人のことを「そっとしておく」というかたちで思いやろうとします。私たちは、悲しいことがあった人を前にして、その悲しみの種類には想像がついても、それが本人にとってどれほどの悲しさなのか、ほんとうのところはわかりません。そして私たちは、わからないならば立ち入らず、そっとしておくべきだと判断してしまう。その判断には、なにもできない自分を正当化するような、自身への言い訳が含まれているのですが、ともかく私たちは、思いやりを「時間が解決してくれる」という可能性に丸投げしがちです。
そこを相談者さんは、そっと、でもちゃんと誘う。よかったら来ないか、あるいは飲みに行かないかと、そっとしておきません。おそらくご友人も、相談者さんの毅然とした「ほっとかない」気遣いを感じ取り、だからこそ飲みに行く約束に応えようとされたのだと思います。
だから相談者さんの思いやりは、この時点ですでに達成されているのではないでしょうか。ご友人はもう、あなたの思いやりを受信している。そしてすでにいくらか慰められているのだと思います。相談者さんは約束の日当日の態度を決めかねていますが、飲んでいるあいだは、友人の悲しいできごとについて言っても言わなくても、きっとだいじょうぶなんだと、私は思います。
飲んでる間も、別に陽気にふるまう必要もないと思います。煽るように酒を飲む必要もないと思います。たぶんご友人の悲しみは、にぎやかな一晩を過ごしたり、前後不覚に酔っ払って解消するような種類のものではありません。ただふつうに、目の前の料理を食ってうまいねと言えばいいし、次なに飲む?と相談しながら、あなたの近況を、あるいはチャゲアスの近況を話せばいいだけだと思います。その上でもし、ご友人が自分の抱える悲しみについて話されるなら、その時は友人のグラスの空き具合を気にしながら、じっと聞いてあげてください。そうやってふたりとも、ふわふわと酔っぱらうことができれば、それでもうじゅうぶんではないですか。
ただし一点だけ。飲み会はできれば少し早めに切り上げてください。いくらふたりの話が盛り上がろうとも、ふたりの酔いが心地よく進もうとも、できれば終電ギリギリではなく、小一時間ほど早めに切り上げ、もう一軒ひとりで飲み直せるような時間を作ってあげてください。もちろんあなたの誘いも、気遣いも、なにげない話も、確実に友人を慰めます。しかしやっぱり、彼の悲しみをなかったことにはできません。
われわれには、自分で慰撫するしかない感情というものがあります。孤独とか喪失に関わる悲しさは、それに類するものだと思います。ご友人があなたに悲しいできごとを話すのか話さないのか、私にはわかりません。しかし少なくとも、あなたと会うことで、あらためて悲しさが輪郭を持った夜の最後は、友人がひとりでその悲しさをそっと撫でる時間で終わるべきだと思うのです。
しかし、ご友人がひとりで飲み直す時間は、一概に悲しい時間とは呼べないはずです。ひとりで反省したり反芻したりする時間は、今日までのあなたの気遣いも、あなたとの今日の思い出も含まれているはずです。だから心配することはありません。ただ、友人の悲しみを癒すのは友人にしかできないのです。そしてそのためには、われわれがおもんぱかれない「長くて静かな時間」が必要なのだと思います。ただまあ、打つ手はありません。
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もう一人の回答者、ヤンデル先生の回答はどうで荘入居者限定でお読みいただけます!
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☆今回のお悩み☆
小さな医療機関で働いてます。 口コミのスルーの仕方で悩んでます。 先生の心が少し折れて復活しましたが、モチベーションをかなり折られた姿が気の毒でこちらに参りました。
簡単に申しますと腰痛をヘルニアと診断できなかったので、能力なしの医者(+酷い捨て台詞)です、とのことです。
ざっくり反論するとしたら、腰痛とは原因がヘルニアであれ狭窄であれまずは痛みをとるためにお薬やリハビリ安静で改善することも多く、収まれば病名はつきません。それでも改善しなければ、手術も視野に入れてMRI検査に紹介して精査となります。(小さい医療機関はココまで)ヘルニアはMRIで確定診断できますが、動ける程度の腰痛に対し、既往でもない限り初診からMRIは健康保険制度が許してくれませんので、MRIを持ってるような大きな医療機関は小さい医療機関からの精査依頼や明らかに重症で運び込まれた場合などに初診から検査をしてくれるのです。
つまり、この方はつぎの予約に来て数回経過観察していれば翌月にはウチからの紹介でMRIにたどり着けたかもしれないのに、ドクターショッピングをしたのか半年もかけてやっとMRIにたどり着き、なかなか口汚い口コミを書き込んでおられるのです。
なんでも一発で診断できるという期待に応えられてないといえばそれまでですが、不満をココにぶちまけてスッキリされている以外、本人も半年も痛い思いをし、医師をけなし、それを見てる人を不安、不快にさせて、全員損をしてます。このプラットフォームで言うのもなんですが、口汚い部分だけでも削除してもらいたいとグーグルにコンタクトを取ると、ビジネスオーナー登録をしろといわれ、登録をしたらページをより快適に運営するために広告料を払いませんかとお誘いが来ただけで、口コミの翌日には「マイナスの口コミ削除依頼受付けます」という謎の営業のfaxがガンガン入るし、クチコミ→削除申請→広告商法に狙われているのかなと別の危機を感じたり、勝手に土俵に上げといてみんな丸損させるプラットフォームもどうなんだろうと、もはや何に対して何をなやんだら良いかも分からなくなって、なんだかもんもんとしています。
シャープさんからこちらのコーナーをしり、いつも大事な勉強をさせていただいています。けなすことなくうまく言葉にまとめて右から左に流す心の持ちように導いて下さい。
PN: ぐーるぐる
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こんにちは、誠にお疲れ様です。ご相談をまとめますと、「グーグルのサービスでひどい目に遭ってグルグル悩んでしまったぐーるぐるさん」、ということだと思いますので、さらにまとめますと、「グーグルぐーるぐる」となりますが、こういうのはまとめないほうがいいですね。まとめると細かな現場のニュアンスがふっ飛びますからね。ニュっ飛びますからね。まとめないほうがいいですね。
で、えー、まとめないほうがいいと思いつつ、お悩みの根っこにある構造を探りますと、ここには医療現場で高頻度に観察される、
という摩擦が存在しているのでございます。
えっそうなの? 問題はグーグルの口コミシステムのほうなんじゃないの? と思われるかもしれませんが……。
今回のケースでは、たとえグーグルが対処したところで、根本的な解決にはならない気がします。なぜならグーグルのコメントが削除されたとしても、その人はおそらく別の病院口コミサイトへの投稿をするでしょうし、Twitterに書き込んだり新聞に投書したりするでしょうし、最終的にはそれこそFAXを使ってでも嫌がらせしてくるのではないかと思われるからです。
感情発露の場を抑え込んだところで、実際に不満を育ててしまった人の感情まで抑え込むことはできません。
グーグルの口コミ、ヤフーのコメント、アマゾンのレビューあたりに対しては、ぶっちゃけ私も忸怩たる思いを抱えており、実際に泣かされた人も多数存じ上げてますので、もうちょっとなんとかならんのかと思うところではありますが、だからといってグーグルに突撃して口コミを個別に削除したところで、いたちごっこと申しますか、問題の根本がちっとも解決されないと言いますか。
なぜこの手の問題が解決できないかというと、これはもう、相当悲しい理由なのですけれども、現代の人の少なくとも一部は、「理不尽な悩み」を自分で抱えて終わりにせずに、他人に投げつけることで多少なりともストレスを発散させようとする方向へと「進化」してしまっているからです。ここでいう進化というのは、良くなったという意味ではなく、「選択圧によってある種の傾向が強まった」くらいの意味で使っておりまして、つまりはひでぇ話です。
もちろん、グーグルのようなプラットフォーム側がこのような状況を漫然と眺めていてよい、とは思いません。少なくともぐーるぐるさんの遭遇されたようなケースはマジでしょっちゅう見かけますし、あちこちで問題視されてもいますので、そのうち何らかの形で改善がもたらされるんじゃないかなあとも思っております。その意味では、まだ、打つ手はあります。でもその手を打つのは我々ではない(グーグルがやることです)ので、これについては今回の私のお返事では保留とさせてください。
我々が個別に打てる手としましては、ぐーるぐるさんも書かれてましたが、スルースキルを鍛えてやり過ごす……くらいですよね。きっと。
あなたのペンネームがグーグルでぐーるぐる、から、スルースキルですーるする、へと変わることを心から願っております。
さて、ここからが本論です。えっ、今ので回答は終わったんじゃないの? と思われたかもしれませんが、私はどちらかというとスルースキル云々よりも、現代の社会が抱えている、「最適解は素人にとっては到達し難い」という構造的問題に興味があります。さっき、簡単な図でご説明したアレを、あらためて再掲しましょう。
これをもう少し詳しく説明します。
まず、元・患者さんは、腰痛でけっこうな期間苦しんでしまったわけですが、医療機関からすると、「クリニックの診療にすぐにケチを付けず、ドクターショッピングしないでもう少し通い続けていればよかった」という、初見ではまず気づきようがない最適解があって、それに導かれなかったという悲しみが存在するわけです。
この患者さんが短気さえ起こしていなければ(たぶんそういうことですよね)、次、もしくはその次の外来で、しかるべき高次医療機関へ紹介できて、無事診断にたどり着けた可能性は高いと思います。
でも、医療の素人である患者さんには、そんなのわかりようがないと思うんですよね。
この「最適解」は、「たくさんの患者を見るほうの立場」でないと普通は思い浮かばないと思うんですよ。
そういう、「素人にはわかんねぇよ」っていう状況自体が、元・患者さんにとって災難の基となっていたと思うのです。
ところが元・患者さんはその後、嫌な目に遭ったからということで貴クリニックに八つ当たりしているわけです。陰湿ですし大人げないと思います。普通に悪人です。弁護の余地はないです。
でも、なぜそのような悪に身を委ねたのかと考えると、大本を辿れば、「専門家じゃないとわからないような最適解、ベストルート、ライフハックを知らなかったから」なんですよ。
ね。
「最適解は素人には到達し難い」問題。
根深いと思いませんか。
これは別に医療業界に限った話じゃないと思います。以下、想像の範囲で書いてみます。
(1)
客「このキャンプ場は虫が多すぎるのでみんな行かない方がいい。夜中に蚊が煩くて眠れなかったので中央ロッジで蚊取り線香を買おうと思ったが夜9時を過ぎたら閉まっていた。キャンプ場なのだから売店は夜通し開いておかないと意味がない。もう行きません このキャンプ場はクソ」
キャンプ場スタッフのひとりごと: 事前に連絡してくれればキャンプスペースに設置できる蚊取り線香セットを無償でレンタルできたのに……。日中に中央ロッジに来てくれればそういったサービスの概要はポスターで掲示してあったし、なんなら、サイト受付時にカウンターでも説明を受けているはずなのに……。このお客さんは、それを聞き逃していたんだよなー。
(2)
客「このレストランはフロアスタッフが口うるさいのでみんな行かないほうがいい。彼女の誕生日を祝うために歌を歌ったらほかのお客さまのご迷惑になりますと言われたが、歌ってはだめとはどこにも書いていなかったし公衆の面前で他の客に聞こえるようにそれを言われて恥をかかされた。マナー違反だろう。もう行きません このレストランはクソ」
ソムリエのひとりごと: もし、事前にお店に相談してくれていれば、他のお客さんにもあらかじめそっと周知して、途中で歌を歌うくらいの調整ならできたのに……。誕生日特製コースだって事前予約可能だったのに……。オンライン予約にはそういうときのために「備考欄」があるのに、このお客さん、気づかなかったのかなー。
(3)
客「このレコードショップは現代に即していないのでみんな行かないほうがいい。試聴機がないのに曲なんて選べない。そもそもサブスク時代にハードコピーそれぞれに金を取るなんて時代錯誤。はやく潰れろ」
元バンドマン・今レコード店員のひとりごと: 今の時代、レコードの価値って、曲という知財・データだけじゃなくて、ジャケットとかライナーノーツとかの「物」に宿ってる部分も多いと思うんだけど、そういうことをぜんぜん考えてないのかなあ……。それに、せっかく店に来たのなら、店主に好きな音楽の傾向を伝えてくれれば、似たジャンルのおすすめも紹介できたのに……。「試聴」みたいなオンライン向きのサービスで実店舗の良さを語られてもなあー。
まあざっと書いたのでちょっと雑ではありますが、こういったトラブルやクレームの類いは、どこの世界にもありそうですし、貴クリニックの状況と多少似ているのではないかと思います。
店員側は「もっとうまく使ってくれればいいのに」と感じていますし、コアユーザーではない客は単純に損をしているんです。
ぐーるぐるさんのおっしゃるように、
「不満をぶちまけてスッキリする以外、本人もいやな思いをし、店/医者をけなし、それを見てる人を不安、不快にさせて、全員損をする」。
悲しい連鎖ですよね。なんとかなりませんかね。
うーん、そうですねえ。
なんか、厳しい気がするなあ。これぞというドンピシャの解決策はないのかも。
でも今、ふと思ったんですけど、少なくとも今回のぐーるぐるさんの投稿をご覧になった方は、「なるほど腰痛ってそんなに一発で診断できるものではないんだな。」と理解していただけるかもしれませんね。
たとえば、これを読んでいる人の中にも、将来、けっこう激しい腰痛に苦しむ人がいるかもしれません。
その人が、お近くのクリニックに行って、「まずは症状をとる治療」からはじめて、でもなかなか腰痛が良くならなかったとして、そこでブチ切れて、「なんだこのヤブ医者! もういい! ほかの病院で見てもらう」とドクターショッピングを開始して、半年くらいさまよって……とならずに、「そういえばどうで荘で読んだけど、このクリニックときちんと相談すれば次の一手を打ってくれるかもしれないんだな。」とかなったら、それはなんか、情報を共有できてよかったな、ってことになりますね。
さらには、この記事が掲載されたあとに、世の中で多少なりとも、「理不尽なクレームってあるよねー」みたいな話題が盛り上がったり、「病院に対する口コミってたまに偏ってるけどどうすればいいのかな」みたいな対話がなされたりしたら、それはそれで、なんというか、良かったなあとも思います。
ぐーるぐるさんはお悩みの最後のところに、「もはや何に対して何をなやんだら良いかも分からなくなって、なんだかもんもんとしています」と書いてくださいました。
そして、もんもんついでに、解決しないことに定評のある当コーナーに投書してくださったわけです。
答えのなさそうなどうしようもない悩みを投げ捨てる場として、どうで荘は立派に機能していますね。
フフッちょっとうけますね。
うけてはだめですね。
我々はここで、投げやりにお悩みを左から右へただ放流して、最後を「打つ手はないです」で締めるというしょーもない文章を書き続けているわけですが、そのような、「お悩みを一発で回答しない」というスタンス、ある問題についてダラダラ時間をかけてみんなで様子を見ていくというやり方が、「瞬間的に診断・治療!」には絶対に結びつかないのですけれども、何らかの解決……というか妥協……というか軟着陸……につながる可能性は、ゼロではない気がしますね。
今すぐに「最適解はこれだ!」と申し上げることまではできないんですけれどもね。
ぐーるぐるさんが今のお悩みをこうして不特定多数の方の目に触れさせたことで、なんか、どこかの誰かにとって悪くはない変化は起こるかもしれませんね。
すみませんね、こんなことしか言えないですね。
でもなんというか、ぐーるぐるさんのこの投稿によるお悩みの吐露と世間へのわずかな問いかけが、なんだかんだで一番効果があったね、将来の悲しいすれ違いをひとつ減らしたね、って感じの夢を見ても、我々、バチは当たらないんじゃないかって思うわけですね。
というわけで、まとめますと、「お悩みを送ってくださってありがとう」となるわけですが、まとめるとここまでのニュアンスがフッ飛んでしまうのでまとめないほうがいいですね。というわけで今回もやっぱりまあその打つ手はないです。
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第15回
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足の爪を切ることを日々の糧にしています。しかしながらあまり訴えてくれる患者さんがいなくて、自分の職業に必要性があるのか、存続の危機を迎えそうです。どうか足の悩みを気軽に打ち明けていただくにはどのようなアプローチがありますでしょうか?お教えいただければ幸いです。
PN: 碁盤街のマリー
どうで荘のみなさま、こんにちは。ご入居の方々におかれましては、それぞれの持ち場で日々あくせく働かれているでしょうから、とにもかくにもご健勝のこととお慶び申し上げます。私もそれなりにあくせく働いております。昔から私は、それが儲かるか儲からないかとは別のところで、他人の生業の話を聞くのが好きでした。知らない職業の話はいつも興味深いし、いつかみなさんの生業もお聞きしてみたいものです。
さて、今月のご相談です。私は一読してなんのことかわからず、相談文を繰り返し読んでようやく理解しました。これは「生業」のお悩みですね。相談者さんは生業が振るわず、シンプルに言うと、来客が振るわず、お悩みでいらっしゃる。つまるところ、相談者さんの生業をだれかに知ってもらうには、そして足の爪を他人に切ってもらうことを自分ゴトと認識してもらうにはどうすればよいか、という課題かと思われます。これはもう、広告とかPRと呼ばれる仕事の出番でしょう。ふだん私がネットを舞台に生業としていることにもつながります。
いきなりですが、相談者さんはこの課題について、すでに自力で解決策を編み出されています。それは「接触した人の興味をひく」ということです。その第一関門を相談文の冒頭でクリアされています。なぜなら私がいま、相談者さんの生業に少なからぬ興味を惹かれているからです。私は「足の爪を切ることを日々の糧にしています」という一文に、ガツンとやられてしまったのでしょう。
少なくとも私は、足の爪を切る「生業」を知りませんでした。思わず「爪 切る 職業」と検索したくらいです。そして私は、世の中に「フットケア」というサービスがあることを知りました。びっくりして、ますます興味がわきました。私と同じような人はたくさんいると思います。あなたの職業をまだ知らぬ人が、おそらく膨大にいる。そして知ると、新鮮に驚く。ここにまず、相談者さんと相談者さんの生業には広大な可能性があると思います。
知った時に驚きを感じてもらうには、まず「知らなかった事実」を強烈に印象付ける必要があります。言い換えれば、知ってもらうための端緒に立つには、出会い頭のインパクトが動力として必要です。ここでは「足の爪を切ることを日々の糧にしています」という自己紹介こそがそれでしょう。名刺でもチラシでもサイトでも、その自己紹介をキャッチコピーにすれば、相手の脳内には「なにそれ?」と知らなかった事実が立ち上がり、相談者さんの生業への認知は増えていくにちがいありません。
もちろん、課題はそこでクリアとはいきません。関門はさらに続きます。知って驚き興味を持ったとしても、行動を起こすまでには深い深い谷があります。爪や足のケアを行うサービスの存在を知り、相談者さんの生業に深い興味を持ったとしても、お店へ足を運ぶにはまだまだハードルは高いでしょう。たとえ近隣に住む人であっても、ちょっと行ってみようと行動を促すのは容易ではありません。
次に鍵となるのが、私は「名前をつけること」だと思います。足の爪を切ってもらう行為、足の悩みをプロに相談する行為へ、名前をつけるのです。われわれは「そうすること」に名前がつくことで、行動のハードルはぐっと下がります。そして名前が普及するにつれ、名前の行為と社会との間にコンセンサスや信頼が育まれていく。そこでようやく、行動する人は加速度的に増えるのです。
町中華や街コン、あるいは婚活や推し活という名前と現象を例に思い浮かべれば、よくわかると思います。未知は名前がついてはじめて、その存在が前景化し、やっと人間は行動に移すのでしょう。ですから相談者さんは、あなたの生業に名前をつけなければいけません。あなたは自分のお店の名前をアピールする前に、あなたに足の悩みを相談し、あなたに足の爪を切ってもらう行為に名前をつけ、名前の普及にコツコツと勤しむ必要があると、私は考えます。
それは商売としてどこか遠回りに感じられるかもしれません。しかし、知られていない行為を生業として持続させるには、案外と大切な活動だと思います。おそらく冷凍庫や洗濯機だって、それが普及する前の黎明期には、食材を冷凍保存する行為や衣類を機械で洗う行為に、「名前をつけて」「名前を普及させる」ことを必死に行ってきたはずですから。
たとえば、あなたに足の悩みを相談し、あなたに足の爪を切ってもらう行為を、歌に乗せるのもいいかもしれません。相談者さんのお名前を見るうちに、フットケアの歌が聞こえてきました。それでは聞いてください。
『碁盤街のマリーへ』
碁盤街へ行ったならば マリーの家へ行き
どんな足をしているのか 見て来てほしい
碁盤街は古い町で 昔から足や爪で
きっと悩んでいると思う たずねてほしい
マリーという娘と 遠い足を思い
つらい悩みの足音を聞いた それだけが 気がかり
ただし、いくら多くの人がメロディを口ずさめるといって、こんな都合のいい宣伝が大衆の唇に乗るとは思えません。だれかに知ってもらって、自分ゴトとして認識してもらうのは、かように難しいものだと思います。私の生業もままならぬものです。ただまあ打つ手はありません。
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※「藤やんとうれしー」への入会は「どうで荘の入居」とは異なります。予めご了承ください。
6月18日(日)@東京都江戸川区 小松川区民館
水どうD陣×ラパルフェイベント第2弾開催!
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※会場での観覧チケットは完売いたしました。
※どうで荘入居者の方はアーカイブは見放題!ですのでアーカイブ配信チケットのご購入は不要です。
6月18日(日)@東京都江戸川区 小松川区民館
水どうD陣×ラパルフェイベント第2弾開催!
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水どうD陣の自費出版本『なんだか疲れる』
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藤村Dが作りたかったDVD『藤村Dのひげキャン△』好評発売中!
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結婚して10数年、お金のトラブルが絶えない旦那に嫌気がさしています。結婚資金あるある詐欺(実際は貯金ゼロで結局ローン組んだ)から始まり、数えればキリがありません。離婚を考えたいですが子供がいるため我慢しています。早めに見切りをつけるべきか、子供が成人になるまで耐えるか、悩んでます。
(PN: ミスター小泉)
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ミスター小泉さんこんにちは。いきなりですが先ほど、もう一通の「お悩み」が届きました。これがですね、偶然なんですけれど、どことなくあなたのお悩みとも通じるところがありそうで、まあその、本質的には違うお悩みではあるんですけれども、今回はその……「両方」を読ませていただいて考えるのがよいのかな、と思いました。
こんなお悩みです。よろしければこちらを先にお読みください。
ーーー
春に社会人となったのですが、これまでを振り返って少し思うところがあったので、お手紙をお送りします。
私は、お金のトラブルが絶えない家庭に育ちました。母は父のことを陰で「詐欺」だなんだとののしっており、「そもそも結婚資金の段階からおかしいと思っていた、貯金がまったくなかったからローンを組むはめになった」という話も何度か耳にしました。家庭内はときに冷たく、ときにギスギスとしていて、子ども心に、うちの親が結婚できたことは不思議だなあと感じましたし、学校の帰り道や、ふとんの中などで、もしかすると親が離婚してしまうのではないかと、一人こっそりと心配していたこともありました。
その後、結局両親は離婚しませんでした。どことなく不安定な家庭のまま月日は流れ、紆余曲折を経て、先日、私の就職が決まりました。そして、機嫌の良かった母がふと漏らしました。
「やー、あんたが育つ前に離婚してなくてよかったわ~」
じつは、私が母の口から直接「離婚」という言葉を聞いたのはこのときがはじめてでした。それまで、いかに雰囲気が悪くなろうとも、私の前ではさすがに具体的なことは口に出さなかったのだと思います。しかし、私の就職を祝うムードの中、つい口が滑ったのであろう母は、そのまま続けてこう言いました。
「あんたは知らなかったでしょうけれど、ほんとはだいぶ悩んだこともあったのよ。でも、お金にしても仕事にしてもね、片親だといろいろ大変だし、あなたも受験勉強やらなんやらに身が入らなくなっても困るでしょう。だからね、我慢してよかった~。あんたが一人でがんばれるまでは支えようと思ってたからね、ほんとによかったわ」
私はこれを聞いたとき、その……一緒に「よかったよかった」と喜べればよかったのかもしれないのですけれども、あの……なんというか、もやもやとした感情におそわれたのです。母は、私という子どもがいたからずっと離婚を我慢していたのだと、あらためてはっきり言葉にされたのだと感じました。そこで思わず母に向かって、
「雰囲気のよくない家庭でずっと我慢して育った私もよくがんばった~」
と、皮肉を言いそうになったのですが、すんでのところでこらえました。
もちろん、ここまで育ててもらった親には感謝しています。
しかし、「子どもを理由に離婚しない」というのは、その……子どものためを思ったことになるのだろうか、と感じました。本当に子どものことを思うならば、性格やお金の問題で家庭内で揉め続けることをまずは避け、子どもが安心できる雰囲気のよい家庭にするべきだったのではないでしょうか?
「子どもがいたから我慢して離婚を思いとどまった」って、結局それって子どものためではなくて自分のためだと思うんですけれども、それを子どものせい、私のせいにされたことに、なんというか、引っかかってしまったのです。
こんなことをつい考えてしまった私は親不孝なのでしょうか。
母にも父にも感謝こそすれ、モヤモヤするなんてよくないことなのでしょうか。
誰にも言えない悩みだったので、ついここにお送りしてしまいました。長くなってすみません。手を打つ段階はとっくに過ぎ去っているんだろうな、ということもわかっております。でも、よろしくお願いします。
P.N. うれしいヒゲ
ーーー
いやー困りましたね。どうしましょうこれ。
まあその、打つ手がないです。
今さらねえ。どうしろってんですか。
うん、このコーナーではいつものことですけれどね。
それにしても手遅れ……というか、あまりに過ぎ去ったことがらばかりで、今から何か言葉をかけて、この人が少し楽になるようなシチュエーションが、想像できないです。
ごめんなさい。
うーむ。
「ミスター小泉さん」のお悩みにお答えする前に、ちょっと先に「うれしいヒゲさん」の話をもうちょっとだけ考えてもいいですか?
この方にまとわりついている、「問題」の芯はどこにあると思いますか?
私が考えるに、「うれしいヒゲ」さんは、優しい方です。それがたぶん問題なんです。
この人はずーっと、父と母がうまくいっていないことを目の当たりにして、傷つけられてきたのだと思います。家庭の中で「安全」とか「安心」とか「安楽」を感じられていなかったのではないかと思います。でも、両親を憎んではいないですよね、この文章を読む限り。なんというか、本人は親不孝だなんだと書かれていますけれども、それは逆で、むしろ愛情に満ちているように思います。文章の端々からそれが伝わると思うのです。
でも、その優しさにこそ問題がある。
母親から言われた「私はあんたのために我慢してたんだ」というセリフに、瞬間的にイラッとした自分が許せなかった、なんて……どうかしてますよ。優しすぎます。
本来ならば、
「はぁ? 子どものため? 親の都合だろうが!」
くらいの啖呵を切って、家を飛び出したってよかったんです。誰も責めないと思います。
でも、やさしいヒゲさんは優しいからそれができなくて、それでこんなに悩んじゃってるんだろうなって思うんですよ。
この方は就職を気に、もう少し落ち着いた家庭で暮らせたらいいなって思います。これからの人生で思う存分、ゆったりとしてほしいなと思います。でも、就職すればすぐに自分中心の生活がはじまるかっていうと、そんなことないですよね。たとえば就職を機に親との関係をばっさりリセットしていちから幸せな暮らしをはじめるなんて、この優しい方の性格を想像すると、なかなか難しいんじゃないでしょうか。
だからまあ、なんていうかその、ここまで来てしまうとちょっと……。
せめてこの親が、「あんたがいるから我慢してた」などと、子どもにデリカシーのないことを言う前に、「やさしいヒゲ」さんに声をかけておきたかったなあ、なんて、今さら言ってもしょうがないことを、考えています。
離婚を考えることは夫婦の権利であり、自由です。かつ、離婚という行動の責任は、夫婦が自分たちで背負えばいいです。それは当たり前のことだと思います。夫婦のありように対して、夫婦がそれぞれ立ち向かえばよし、あるいはぶっちゃけ逃げたっていいんじゃないかな。結局それって自分たちのことなんですからね。
私たちはみんな聖人君子じゃないんで、失敗もするし、微妙な選択もするし、後悔もする。でもその結果と自分たちで付き合えていればいいんじゃないでしょうか。失敗が悪だとは全く思いません。後悔だってどんどんすればいいです。
もっと言えば、責任から逃れようが、なあなあにしようが、思い込みで見当違いの理由を探してウソに逃げようが、それで夫婦が互いを傷つけようが、あらゆる結果が夫婦自身に跳ね返ってくる分には、別に……べっっっつに……いいんでない? と思います。
きれい事ばかり言ってられないです。
夫婦がどんな道を選んだとしても、自由ですよ。結果に関して夫婦自身が向き合ったり逃げたりしている分には万事OKじゃないですか。もちろん、「他人」に迷惑をかけなければ。
でも、夫婦の選択やら行動やらを、「子どものせい」にするというのは……ないですね。
いや、まあ、内心つい「子どもがいるからなあ」なんて感じてしまう弱い心は、どんな親にもあると思います。そこはめちゃくちゃ理解できます。でも、ついうっかり、気が緩んで、子どもの前でそれを言っちゃうってほんと、ぜんぜんだめです。あり得ないと思います。うれしいヒゲさんの親はそれをやってしまったので最悪だと思いました。夫婦の責任を子どもに押しつけるって、それを子どもに言うって、ちょっと、本当にやっちゃだめだと思うんですよ。うっかりやっちゃう可能性はあるんですけど(人間は弱いですから)、そのうっかりを、なるべく減らしたい。
子どもには子どもの人生があり、子どもだっていずれは自分の行動の責任を自分で取っていくようになります。ただ、人生の序盤、子ども時代に、「自由と責任」とはなんなんだろうなという難しいモンダイを、子どもがひとりで考えるのは大変で、だからこそ、先に生きている大人がある程度導いていかないとかわいそうだなと思います。
「自由にしてよいが責任は自分で取れ」という感覚は、学校だけでも社会だけでも家庭だけでも教えることができない、難しいものだと思いますから、別にその理念を子どもに教える際に、親だけががんばるべきだなんて微塵も思いません。そこは、子ども自身がゆっくりと時間をかけて、世界中から学び取ってもらうしかないと思います。だから親だけが子どもの成長の責任を負う必要はない。けれども……せめて……親とはつまり子どもの一番近くにいる大人なのですから……「自由に伴う責任」を背負おうとする姿くらいはときどき見せてあげたらいいんじゃないかと思います。
そして、夫婦の行動の理由を子どものせいにするというのは、それと真逆のことなんですよね。
すみません話がそれました。
うれしいヒゲさんの相談には答えようがないです。すでに終わってしまったことです。かわいそうに。親の責任を背負って苦しくなってしまっている。うれしいヒゲさんのせいじゃないのに。これからはぜひ、違う人生を生きて欲しい。過去の傷はもう治りませんけれど、きっとこの先、傷つきづらい人生が待っていると信じたい。この方はやさしいですから。
で、えーと、ミスター小泉さん。
ごめんなさいねすっかり後回しにして。
あなたの相談にはたぶん、打つ手があります。
どんな道を選んでもあなたはこの先、結局、なんとかなります。離婚してもしなくてもどうでもいいと思います。そこはたぶん本質ではないです。どっちを選んでも大変ですけれど、人生ってたいてい、大変なんで、ま、なんか、そういうもんです。
ただ、ひとつ、「子どもがいるため悩んでいます」という思考の部分は、なんとかしておいたほうがいいんじゃないかと思いました。それだけです。あなたは大丈夫。まだ大丈夫です。これからがある。
で、うーん、どうしてもこっちが気になってしまうな。
うれしいヒゲさんには打つ手がないです。ねえ。はあ。まあその……打つ手がないです。
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シャープさんの今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
☆現在、入居者の皆様からのお悩みを大募集中!
【回答者プロフィール】
山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(44)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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5月7日(日)@埼玉県熊谷市 八木橋百貨店
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※「藤やんとうれしー」への入会はどうで荘の入居とは異なります。予めご了承ください。
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第13回 
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。
入居者からの「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。
毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開。
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。
今月はシャープさんの回答を無料掲載いたします!
病理医ヤンデル先生の回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!
また、お悩みの募集は以下より行っております!ドシドシお寄せください。
お悩み相談室 お悩みフォーム
☆今回のお悩み☆10代のころから自己肯定感が低く、ずっとこんな奴は神様が長生きさせないだろうと思ってました。
が、なんとかかんとか45歳の今まで生きて、会社員、妻、小学生の母親、どれも中途半端にやり過ごしております。
先日ショックを受けたのは、弱者として振る舞うのはそれ自体が他者へのマウントと言っていたか、もっと別の言葉だったか、40過ぎて記憶もすぐに曖昧になるのですが、要は高齢の方の病気自慢のようなことはそれはそれで人のことを下に見ているというようなツイートを見てしまい、
ああそうか、自分なんてダメなんです、って言うのは、重責から逃げてるというだけじゃなくて、威張り散らしてる人と変わらない行為なのかと、そのことにハッと気づかされたことでした。
でもそこそこ身体は丈夫、ごく中流な私のような人間が、子供から見て元気で明るいお母さんでいたい、自己肯定感を上げたい、ただ長年のクセのようなものでなかなか自分か好きになれず、それゆえ必要以上に腰が低くなったり、逆にどうしてよいかわからず不遜になったり、はたまたそういったことを悔んだりするをやめるにはどうしたらよいのでしょうか?
私の自信がないことで得する人なんて誰もいないのは分かっていて、母として、仕事のリーダーとしてハツラツとしたい。
けど鏡を見て「あなたのことが大好きですよ」などという自己暗示をかけても大して変わらない。
自分という小さな枠から外に眼を向けるべきと思ってもすぐに自分の内側に戻ってきてしまう。
そのことをたまに「ああダメだ」と思ったり、SNSで呟いたり、身近な人に伝えたりするのは、人を下に見るいけないことなのでしょうか?
打つ手はなくても.何かよい視点を教えていただけたら幸いです。(PN:なみ)
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どうで荘にご入居のみなさん、こんにちは。すっかり春ですね。春は見知った人と別れたり、知らない人と出会ったりと、人間関係がめまぐるしい季節です。人見知りの民や自意識こじらせ族にとっては、なかなかどうして緊張を強いられる季節でもあり、春めく日々をのうのうと過ごすわけにもいきません。私もそういう傾向にある人間ですから、つまり春はあけぼのです。まだみんなが寝静まっていて、私がだれにも会うことがない、日の出前の時間。あのあけぼのが静かで安心で、私はいちばん好きです。
さて今月のご相談。自己肯定感の低い自分をどうにかしたい。私も身につまされるお悩みです。しかも相談者さんは「自己卑下は相手との関係性の上下を強いるという意味で、他者にも圧をかけている」という視点を知り、さらに卑下を重ねようとされています。らせんが根深くて、なかなか難しい問題だと思います。
私を含めて見回すと、なにかとオドオドしがちな人はたくさんいます。一方、なにかと他人に抑圧的な態度をとる人もまた、うんざりするほどたくさんいます。他人に抑圧的な態度をとる人に対して、時に「私なんてダメなんです」は盾となり、余計な衝突を避けられる場合もあるでしょう。幸か不幸かオドオドは戦略的に採用され、多用するうちにオドオドが固定化してしまった人は、実はけっこういると思います。
卑屈は自分の足元の地面を掘り、怖い人の前から姿を消すような、下方向のマウンティングとして作用する時があります。つまり人間関係がややこしい世間で、卑屈や卑下こそが処世のコツという側面は確かにある。でもやっぱり、相談者さんがお悩みのように、あらゆる方面に卑屈であることは健全な精神のあり方ではないと、私も思います。私たちが関わる他者は、抑圧的な態度をとる人ばかりではありません。ほとんどは対等で、あるいは無関心で、そしてときどき親密に、人はあなたに関わるのですから。
それにしてもいったいいつから「自己肯定感」なる言葉が当たり前に使われるようになったのでしょうか。自己なんて、肯定しようが否定しようが、おかまいなしに自分の中にデンと居座る存在です。そもそも物心がつく頃から、その物心こそが自己なわけで、自己とは肯定否定よりも奥にある、それゆえ触れることが難しい芯のようなものだと思います。
結局、自己肯定感が高かろうが低かろうが、いつだって自分が自分を追いかけてくるし、自分が自分を邪魔することもある。どうやったって自分は自分を追い払うことができないのなら、私は私という自分を、ちょっと距離を保って、見つめるようになりました。そうやって見つめていると「そうか私はこういう風に思うのか」と気付かされ、なかなかどうして自己は示唆に富み、興味深い対象となって、肯定したり否定するヒマがありません。
話は変わりますが、私は即興とかインプロビゼーションと呼ばれるジャンルの音楽を長らく続けています。ひとりで、あるいは数人で、決めることといったらだいたいの演奏時間だけで、あとはなにもルールを設けず、いっせいに各自の楽器を演奏します。ルールがないので、ただひたすら私は、私と私以外のミュージシャンが出す音を現在進行形で聴きながら、次に自分は何の音を出すか、どれくらいの音量にするかなど、発音に関するすべての行為を瞬時に判断して演奏をするわけです。
こう書くとあたかも私は、制約のない自由な地平に立ってのびのびと演奏をしているように思えますが、実際はちがいます。結局のところ、私は私ができる/知っている方法しか、演奏ができないのです。いくら自由といっても、私は私が思いつく中からしか次のアクションを選べないし、私は私ができることの中からしか、次の音を思いつけません。つまりそこにあるのは、私の持つ可能の順列組み合わせでしかないわけです。
ただの順列組み合わせに不満を感じた私は、いかに自分が自分を裏切る演奏ができるかを模索しました。利き手と反対の手を使うとか、自分で制御できない機械を介すとか、目を瞑るとか、知らない楽器を使うとか、いろいろ試したのですが、最終的に私が行き着いたのは「酔っ払う」でした。
なんてことのないアイデアでしたが、効果はてきめんです。飲みながら前後不覚になりつつ演奏する方法は、自分の中の順列組み合わせを狂わせるどころか、人見知りが人前で演奏するジレンマまで、みごとに解消してくれました。ひたすら酔っ払う。自分の音楽スタイルが確立された瞬間です。
しかしそのスタイルも、私はあっけなく放り出すことになります。ややこしくて、聴く人も限られるようなジャンルの音楽でも、続けていると海外に呼ばれるようになります。ある年、私にロンドンで演奏する機会をくれた現地の人が出演前にアドバイスをくれました。ロンドンではどれだけいい演奏をしようとも、その人が酔っ払っていると酒のおかげと解釈されるよ、というものです。だから飲みながらやらない方がいい、と。
それを聞いた私は、なんだか心の底から納得したのでした。ドーピングしているように見えるならバカバカしいことだなと、思ったのです。それ以来、私は酒を飲みながら演奏することをやめました。いい演奏をしたくてやっているのに、あれはドーピングのおかげだと思われるなら、これほど損なこともありません。とはいえ演奏前には少し飲むけど。
「自己肯定感が低い私」も、なんだか似ているような気がするのです。オドオドは自分の中の問題のどこかをカバーしてくれるのは確かです。「私なんて」は自分を守る盾になりえる。でもオドオドしている状態を「オドオドを選択している人」という目で見たとたん、その人は自分を卑下させるダウナーなドーピングをしているように思えてきませんか。もしそうなら、それはしんどいながらも自己と向き合おうとする人にとって、どうにもバカバカしい印象だと、私は考えます。
もちろん根本的な解決は別です。私が酒を飲みながらの演奏をやめたからといって、私がものすごく評価されたわけではありません。それはいまの私を見れば明らかでしょう。あいかわらず私は、演奏前にオドオドします。そういう意味で、ただまあ打つ手はありません。
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ヤンデル先生の今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
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山本隆博
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病理医ヤンデル/市原真(44)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第12回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
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☆今回のお悩み☆
シャープさんヤンデル先生、こんにちは。
最近、何かを質問するとAIが即座に答えてくれる機能やサービスがよく話題になっていますね。
私はこの連載を読んでいて、お二人のお悩みに対するあたたかみやユーモアのある回答がとても好きなのですが、AIにお悩み相談ってできると思いますか?
お二人のお考えを聞いてみたいです。
(PN:さるぼぼ)
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こんにちは。私たちもAIがどの程度お悩み相談に役立つことができるのかについて、興味深い話題だと思います。
AIは、多数のデータを分析し、関連性の高い情報を瞬時に取得することができるため、ある程度の情報や知識を持っている場合には、特定の問題に対する答えを提供することができます。しかし、AIは感情や人間の経験に基づく洞察力に欠けているため、一部の問題には適切な答えを提供することができません。
また、お悩み相談には、相談者とのコミュニケーションや共感、人間らしさが必要不可欠な要素です。AIが完全に人間の代わりをすることはできません。
つまり、AIがお悩み相談に対して役立つ可能性はある一方で、人間同士のコミュニケーションや相互作用を完全に代替することはできないということです。
したがって、私たちは人間同士のコミュニケーションや相互作用が欠かせないお悩み相談に対して、AIが完全に代替することはできないと考えます。ただし、AIがある程度の情報を提供し、人間同士のコミュニケーションをサポートすることは可能だと思います。
ですってよ。ChatGPTがこのように言ってます。さるぼぼさんからいただいたお悩みを、そのまま言語生成AIであるChatGPTにぶちこんで、回答をコピペしたものが上記(太字部分)です。これで原稿料もらうわけにはいかないので、今回の原稿料は辞退します。あなたはこれが「AI作」だと気づきましたか? わりとわかりやすかったかな?
こうして「AIに回答させました」と答えをばらしてしまうと、皆さんも「あー、なるほどね」となってしまいがちです。「あーヤンデルもとうとうそういうことするんだ」みたいなね。でも、ちょっと待って、あらためて今の回答を読んでみましょう。わりといい感じでお悩み相談できてるように見えますが、いや、待て待て。
これって本当に、お悩み相談になってるでしょうか――
――なーんて。ありがちな展開に持っていきたくなりましたけど。
うん。「お悩み相談の体裁」はきちんと保てていると思いますよ、私は。
まあ完璧とは言いません。言いませんさ、それはね。
たぶんここを見ている方のうち、半分くらいの方は、上記の文章を読んで途中で「目が滑った」んじゃないかと思います。私の尊敬する芸人のサンキュータツオさんとこないだお話ししたのですが、彼は言語生成AIの作る文章について、「平板で盛り上がりがない」とおっしゃっていました。たしかにそういう印象がありますよね。
けど、相談に対する回答、応答としては、よくできているんじゃないかなとも思いました。世の中の1億人くらいに、「AIにお悩み相談させたらどうなると思う?」と尋ねたときに返ってくるお答えの平均をとったかのような……もしくは、最大公約数的なお答えと言ってもいいかと思いますが、とにかく及第点の回答を非常に短い時間で作ることができている。すばらしいことです。ネットで検索しまくって間をとる、みたいなことを、秒でできるんですから。
一方で、このお悩み相談に気になる点がひとつあります。さるぼぼさんが書かれた、「お悩みに対するあたたかみやユーモアのある回答がとても好きなのですが」の部分がぜんぜん反映されてない。
あたたかみやユーモアのある回答が好きだ、と言われたら、普通の人間であれば無意識に、「そうか、だったらあたたかさのある、ユーモアもまじえた回答をしてみたいものだな」と思って、回答を微調整すると思うんです。でも、AIはそこの部分は一切無視してますね。
とはいえ、AIに「お前は人間と比べてだめだなあ」というのは大人げない(人間げない?)行為だと思います。
なにより、私の質問の仕方も悪かったかもしれない。さるぼぼさんは、シャープや私に向けてお悩みを書いてくださったわけですが、この文章にはシャープや私が受け取ることを前提としたニュアンスの調整が加わっています(さるぼぼさんを含め、多くの人はそのような高度な「さじ加減」を無意識のうちに会話や文章に加えていると思います)。それを本来「かやの外」であったはずのChatGPTにあれこれ答えさせるというのは、そもそもChatGPTに不利な座組みかもしれません。
よし、仕切り直しだ。いったんChatGPTの画面を閉じて、あらためて質問をやり直します。今回の質問者はさるぼぼさんではなく「私」にします。ChatGPTには、あくまで私というクライアントに向かって答えて欲しいと思います。さるぼぼさんの文章を活かしつつ、以下のように前後に説明を付け加えました。
[病理医ヤンデル]
私は「ヤンデル先生」と呼ばれるものです。インターネット経由で、以下のような質問を受け取りました。 シャープさんヤンデル先生、こんにちは。最近、何かを質問するとAIが即座に答えてくれる機能やサービスがよく話題になっていますね。私はこの連載を読んでいて、お二人のお悩みに対するあたたかみやユーモアのある回答がとても好きなのですが、AIにお悩み相談ってできると思いますか?お二人のお考えを聞いてみたいです。 これに、あたたかみやユーモアのある回答を返したいのですが、文案を考えていただけますか?
するとChatGPTはこのように返事してくれました。
[ChatGPT]
もちろん、喜んで回答いたします!
AIがあらゆる情報を瞬時に処理できることは確かですが、それでも人間特有の感性や経験、人間関係の複雑さには対応できないことがあります。お悩み相談についても、AIが完全に代替できるとは言い切れません。
しかし、技術の進歩により、AIがより人間に近い回答を提供できるようになってきています。例えば、AIによる感情解析技術を活用することで、お悩み相談においてもある程度の共感や理解を示すことができるようになってきています。
ただし、私たち人間の存在感や人間同士のコミュニケーションの大切さを忘れずに、AIを活用することでより良い解決策を見つけ出すことができると思います。
というわけで、AIを活用したお悩み相談には、人間とAIの力を合わせてより良い結果を生み出すことができるかもしれませんね。
なあんだ、挨拶が増えて、口調がちょっと変わっただけやんけ、と思いますが、あたたかみは増えたかもしれません。こういうところ、言語生成AIってすごいですね。空気を読んで文体を変えている。ただし、ユーモアについてはこれでも少々足りないようです。
さて、ChatGPTには会話を続ける機能があります。一度出た答えの気にくわなかったところを修正してもらうことができますので、今のチャットを閉じずに、続けてこのように入力してみます。
[病理医ヤンデル]
すばらしい回答です! とても参考になります。さすがAIですね! ところで……あたたかみについては完璧ですが、ユーモアが少し足りないような気もします。ユーモアをもう少し効かせた回答バージョンも考えていただけませんか?
するとすかさずChatGPTはこのように答えてくれました。ここで私は「ほう……」と感心してしまいました。
[ChatGPT]
ありがとうございます!ユーモアをもう少し加えたバージョンを考えてみました。
AIによるお悩み相談が一般的になると、人間同士の会話もこんな感じになってしまうかもしれません。「おお、君、その悩み、人工知能に聞いてみたらどうだい?」とか、「俺はもうAIに相談するしかないんだ。ヒトにはもう頼めない」とか。
でも冗談はさておき、確かにAIが進化すればするほど、人間とAIの役割分担が進んでいくことでしょう。AIが得意な分野ではAIに頼り、人間が得意な分野では人間が頑張る、そんな未来がやってくるのかもしれませんね。
とはいえ、AIもいつかはユーモアや感性を持った存在になるかもしれません。もしかしたら、あなたがAIに相談したお悩みが、AIの学習によってユーモアを理解するきっかけになるかもしれません。誰かが作ったプログラムに、新しい発見や価値を与えることができるのは、人間だけではないかもしれませんね。
どうですか? 最初の回答と見比べてみてください。あたたかみ、やさしさ、茶目っ気、ユーモア、まるで別人のようです。「でも冗談はさておき、」みたいな話題の転換もスムースですし、そもそも日本語の違和感がないってのもすばらしいです。
実験はここまでにしましょう。
以上の結果を踏まえ、「AIにお悩み相談ってできると思いますか?」というさるぼぼさんのご質問に、私は以下のようにお答えします。
「AIを人だと思って誠実に質問することが大事。AIが何か勘違いしてるなと思ったらそれとなく指摘し、もうちょっとくだけてしゃべってほしいとかわかりやすくしゃべってほしいと思ったらそれも素直に教える。一度、二度のずれくらいで人間と比べて「お前はだめだなあ」とか言わない。AIと一緒に会話を組み立てていくんです。そうすれば、十分にお悩み相談の『型』を再現することができます。ちなみに、AIが言うには、お悩みを投げかけることで私たちの役に立つだけでなく、AIも成長するかもしれないんですって! なんか、夢がありますよねえ」。
はい、大団円。
……でも、この回答、じつは、私が考える100点満点でいうところの、75点くらいです。
私の勝手な想像ですが、さるぼぼさんは、「Aにできると思いますか?」に、YesかNoかで答えてほしいわけではないんですよ。
私の独断的な妄想ですけれど、さるぼぼさんは、お悩みを読んだ私やシャープが「AIにできるかなあ? できないかなあ? うーんどうだろう、私が考えるに……いや待てよ……そういえば昔あんなことがあったっけ……最近こんなことも言われてるけどなあ……」などと、悶絶したり苦悶したり、試行錯誤したり紆余曲折するところを見たいんですよ。我々が難問に、理不尽に、些細なずれに、モヤりに、愚痴ったり悪態をついたり、でもどこかちょっと笑ったりため息をついたり、ジタバタしながらお遍路巡りを……じゃなかった毎月回答にお答えしているところを見て、アルカイックに微笑みたいんじゃないかなって思うんですよ。
「お悩み相談」に対する回答って正しさとか無難さが第一義ではないんですよ。適切さがないと困りますけど、そこだけではないんですよ。
今日の回答にしても、私が、ChatGPTにこなれた質問文を投げかけることで、こちらが納得し感心するような文章にたどり着くまでのプロセスを作っていく過程がちょっとおもしろいかなと思うわけで、最後のところを表面的に見ると、「おっ、AI、思ったよりできるな」っていう結論だけがポンと置いてあるようにも見えます。でも、じつをいうと、さるぼぼさんは、そういう結論を読みたくてお手紙を送ってくださったわけではたぶんなくて、さらに言えばプロセスさえもさるぼぼさんの本来望んでいたものに全て答えたわけではないかもしれなくて……。もっと、私の心の奥底にある獣の部分というか幼若な部分というか、原始的でドロドロとした情動や情緒の部分が、「とある叫び」を発しないだろうか? 直接叫ばないにしても文面からにじみ出てこないか? と、期待していたんじゃないかと思うんですよ。
その「とある叫び」というのは、つまり、こういうことですよ。
「世の中のどいつもこいつも、AI AIってうるせぇーッ! 南の島のサルか! なんだバカ野郎!俺の方がすげぇーッ!! 未来永劫、人間の勝ちだァーッ!! ウウッ……クソッ……」
おわかりでしょう。打つ手はないです。

毎月のお悩みへの回答はおひとりは全文公開。もうおひとりは「どうで荘」内のみでの掲載です。
シャープさんの今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
【回答者プロフィール】
山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(44)
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水どうD陣の自費出版本『なんだか疲れる』
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第11回
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☆今回のお悩み☆シャープさん ヤンデル先生 はじめましてよろしくお願いいたします。
たいしたことのないことなのですが、レジの仕事をしている時に、(ものすごくレジが混んでいる)列に並ばずに横からアレコレ聞いてきたり、「〜してくれ」とか言ってくるお客様へは、なんと言えば、きちんと並んでらっしゃるお客様たちを、ほっこりさせることができるでしょうか?良いセリフがないかといつも考えております。
(PN. ここっけこさん)
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どうで荘にお住まいのみなさん、いかがお過ごしですか。私は切羽詰まってます。なぜならこのお悩み相談の締め切りが、とうにお過ごしなさっているからです。お恥ずかしいことに日々の大事小事にまみれて、すっかり原稿を書かねばならぬことを失念しておりました。なので私は、なにをもってしても、これを最優先で書かねばならぬ。まさに今、相談者さんのお悩みのごとく、ずらずらと列をなす私の用事をすっ飛ばし、原稿が「書いてくれ」と横入りしてきた状態です。並んでいた他の用事からすれば、舌打ちのひとつでもしたくなる状況でしょう。
ただし私の場合は、居並ぶ用事の優先順位を私が決定することができます。あくまで列の主導権は私にある。それに比べて相談者さんは、レジに並ぶお客さんの優先順位を決めるなど、とうていできません。お客さんは、前から何番目という順番以外はまったく公平。シンプルかつ偶然性を徹底したルールだからこそ、われわれも黙って従うわけです。
そのルールが無秩序な他人の出現によって邪魔されれば、並ぶ人が殺気立つのも無理はありません。とはいえ相談者さんにはお客さんの順番を前後させる、列の主導権はないのです。しかも「お客様は神様です」が必要以上に拡大解釈されがちな私たちの社会。列の殺気がレジの人へ向けられるのは、よく考えればそうとう過酷なことだと思います。
にもかかわらず、です。相談者さんは、並んでいるお客さんを「ほっこりさせたい」とおっしゃっている。立った殺気を鎮めるどころか、ほっと一息ついてもらいたいと望まれているところに、私はお客さんと直に対峙するプロフェッショナルを感じ、ほとほと頭が下がる思いがしました。そしてスマホ越しとはいえ、直にお客さんと対峙する私は、さらに一抹の共感を覚えるのです。
自慢ではないですけど、私も世間の殺気を一身に浴びるという経験をしてきました。現在も若干そうです。そしてその殺気は私の所属する会社がよろしくない状況をもたらしたことに起因するので、そもそも自慢にもならないのですが、とにかく殺気やイライラといった感情は宛先を求め、宛先が見つかったとたん、いっせいにそこへ集中する性質があることを、私は身をもって知っています。つまり世間の殺気やイライラは、組織や団体に満遍なく押し寄せるのではなく、誰かあるいはどこかを標的に向けられるということです。
だからといって、そういう場合にどうふるまえば適切なのか、私もよくわかりません。ただ私が行ったのは、殺気に宛先があるのなら、せめて受信したことは表明すべきだろう、ということでした。なので私はツイッター越しに、迫り来る殺気をすべて読んでいることを明言し、そして私がどう思ったかを可能な限り開示しました。解決なんてとうてい私ができることではありません。しかし「あなたのイライラは着実に届きましたよ」というメッセージは、少なくともイライラを増幅させないことにつながるのではと、いまの私は考えています。
最近はずいぶん少なくなりましたが、電車で電話する人に私たちはなぜイライラするかというと、電話の向こうの人がなにを言っているか聞こえないストレスが大きいという説を読んだことがあります。たとえ他人の会話や感情であっても、打ち返しが見えないと、われわれはイライラするのかもしれません。
ですから相談者さんには、これが「ほっこりさせたい」という解決に直結するかはわかりませんが、横入りされたお客さんの対処が済んだ後、それがどういう内容でどう思ったかを、口にしてみてはいかがでしょうか。列を停滞させた謝罪ではなく、「割り箸を6膳くれと言われて面食らってしまいました」とか、「シーチキンがどこに置いてあるかなんてとっさに思い出せないんですよね」とか、その瞬間に相談者さんが心の中で呟いてきた気持ちをそのまま吐露すると、列に並ぶ人は自分のイライラが受信されたと感じ、少しばかりでも殺気が緩むのではないかと思うのです。
とはいえスーパーのレジには、まだまだ殺気のきっかけが潜んでいることは、みなさんもご存知でしょう。私たちは列に並ぶ時、どの列がいちばん速そうか、さまざまな観測と予測を経て、並ぶ列を決めます。そしてその決断が正しかったか、レジにたどり着くまでずっと答え合わせをしながら並びます。つまり列の停滞は、停滞そのもののイライラに加えて、隣の列の方が速かったという損の殺気を引き起こすわけです。
そんな損得の殺気なんて、もはや列を一箇所にするフォーク並びしかないのでは、と私なんかは思うのですが、店舗の動線やスペースの制約上、なかなか難しいのでしょう。そんな想像をするにつけ、結局のところ私は相談者さんに「ご苦労さまです」と声をかけるしかできないのかもしれません。
なるべく寛容でいたいものです。私もあなたも。ただまぁ、打つ手はありません。
毎月のお悩みへの回答はおひとりは全文公開。もうおひとりは「どうで荘」内のみでの掲載です。
病理医ヤンデル先生の今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
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山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(44)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第10回
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☆今回のお悩み☆
仕事と子育てどう両立すればいいと思いますか?奥さんは子育てで大変そうだけど仕事をして稼がないと子育てが色々しんどくなるジレンマです。
(PN. たいさん)
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こんにちは、病理医ヤンデルです。いよぉーし、本日も粛々と悩みましょう。ええ、悩みます。きれいな回答は無理だなこりゃ。思いついたことからダーッと書きます。
最初に……あなたが一行目に用いていらっしゃる言葉、世の中でもかなり便利に使われている「両立」という言葉、これがよくないなーと思いますねえ。あーいやいや、文句言ってるわけじゃないです。なんでそんな言葉を使うんだ、っていう意味ではなくて、「言葉に呪われてるんじゃないかなあ、大変そうだなあ」って言いたい。
「両立」って言葉が私たちの生活をちょっと面倒にしてしまっているのではないかと感じる今日この頃です。
キャリアと家庭を両立、とか、仕事と子育てを両立、とか、みんな、日頃からあまり考えずに使ってしまっている言葉ですけれども、そんな、あのね、この話はね、両方いっぺんに立てられるほど簡単な案件じゃないんですよ。脊髄反射的に「両立」って言っちゃってるけれども。いやいや、そんな簡単じゃないんですって。ねえ。
「仕事」も「子育て」も、どちらも言ってみればお遍路をゆっくりゆっくりまわるみたいな行為でしょう。それだけに「かかりきり」になって一歩一歩進んでいったとしても、天候とか、ロープウェーの運行状況とか、クリームパンの奪い合いとか、いろいろままならないものに左右されて、予定通り次の札所に行けるかどうかは時の運みたいなところがあるわけです。「かかりきり」だったとしてもですよ。それがあなた、お遍路と番組の取れ高を両方なんとかしろ? どう考えても無理でしょう? なのに我々は人生で、「お遍路をまわって受験生の合格を祈願しつつ、おもしろいことも言え」みたいな無茶ブリをされるんですよね。
どだい、無茶なんですよ。
ところが、世の中に「両立」なんていう迷惑な言葉がありふれているせいで、なんとなく、「両方やってやれないことはないのかな?」みたいな気持ちになってしまうんですね。これはもう認知のゆがみを生み出す呪いの言葉です。
次に、「仕事」と「子育て」が、それぞれ1つの案件みたいな感覚でこの相談の文章を書かれてるような気がしますけれどもね、仕事って、じつは複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。子育ても、なんと複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。
わかります?
仕事をきちんとやろうと思ったら、例のいまいましい「両立」みたいなことを、毎日言われ続けることになります。そう思いませんか? あれをまとめとけ、こっちは会議しとけ、そっちは学んどけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなことばかりじゃないですか。基本マルチタスクでしょう。
子育ても同じで、「両立」「両立」の雨あられです。そう思いませんか? あそこを面倒みとけ、これを作っとけ、それは片付けとけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなのが延々と続くんですよ。めちゃくちゃマルチタスクです。
そして極めつけには、仕事も子育ても、基本的に「フルの休日」ってないんですよね。負荷の波はあるんだけど、それがゼロになるってことはない。
となるとね。仕事だけで両立、子育てだけで両立して、さらに仕事と子育てで両立って、あなたそりゃ、いくつ両があると思ってるんですか。よっ、千両役者。やかましいわ。
何が言いたいかっていうとですね、「仕事」と「子育て」と、二項を立てて両方なんとかしたい、みたいな前提に無理があるし、そもそも仕事だけやっていようが子育てだけやっていようが、「両立」みたいなものが求められる限り、人間はいつも、過剰なマルチタスク状況を強いられるんですよ。
どちらかだけであっても無理なのに。
そこで我々の「先輩方」はどうしてきたかっていうと……。
あそこで「両立」してるような方も、あっちで「専業」してるような方も。
まあ……小声で言いますが……みんな適度にサボってますよ。
仕事でやらなきゃいけないあれこれを、全部やってる人なんていません。なんでもこなしてすごい! みたいなバリキャリの先輩も、もちろん非常に高いレベルでいろいろこなしているのはその通りなのですが、どこかで必ず手を抜いています。仕事において絵は描かないとか。取引先との会話は減らすとか。そうじゃないと、千手観音でもない普通の人間は絶対に無理なんです。
で、家事や子育てについてもそれは全く同じで、じつは全員がほどよくさぼってます。子どもに対して完璧であろうとしたところで子ども以外の家族に対しては手を抜くことになるし、そもそも、「完璧な親」なんていませんよ。子に教えられることばかりですし。
そんなこと、ネットでも現実でもみんなが言ってますよ。サボりかたを覚えよう、みたいなね。
でも同じネットの中に、「両立」っていう言葉があるばっかりに、なんとなく、「仕事」と「子育て」はどっちもやってかないとダメなのかなー、許されないのかなーみたいに、圧迫されちゃうんですよね。
だからね、両立なんて言葉から自由になりましょう。
我々はどっちにしろ、仕事だけをしようが、子育てだけをしようが、マルチタスクにあわあわしながら、適度にあっちを立てたりこっちを立てたりを微調整しつづけて、それでなんとかやりくりしていくものです。だったら、たとえば、「仕事というマルチタスク+子育てというマルチタスク=仕事と子育てというマルチタスク」みたいにね、1+1=2ですけど、「たくさん+たくさん=たくさん」みたいに考えてね、はい、数学からも自由になりましょうね、いいですか、そんなまじめに考えてないで、思考も多少はサボったほうがいいですよ、でね、たくさんのできごとを簡単に「仕事 VS 家庭」みたいに切り分けるんじゃなくてね、家族みんなで協力しながら、「全部はむり!」っていう気持ちを共有してですね(これ大事)、その場その場で、今はこっちを大事にしようかな、今日は13番札所までとりあえず一緒にいこうかなという感じで、随時相談しながらやりくりしていくということでどうですか。マルチタスクにはマルチメンバーでマルっといくしかないんじゃないか。
ねえ。
それでもなお両立したいって言われたら、まあその、打つ手はないです。
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第9回
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☆今回のお悩み☆
父が67歳で定年、再雇用でまだまだ働くサラリーマンです。平日は仕事、土日はパチンコと忙しそうですが、母が仕事辞めない?ゆっくりしたら??と父に話します。ただ、父の生きがいは仕事であり、その他はオプションなので、やめた後の反動が気になります。私は仕事は続けてほしいと思うのです。なぜなら、生きがいだけでなく、熱意で生きるタイプなので。父は高卒で、学歴を忌み嫌っていて、子供は大学へ!と話し、私は大学に行けました。またマイホーム購入で67歳で一軒家をガッツリ買うと話しております。すごい父親をもったなーと誇らしく思います。母の意見もわかるし、父の性格もわかるので、悩ましいです。母や父にどんなアドバイスやコメントをすれば良いでしょうか。。
(PN.きむら さん)
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どうで荘にご入居のみなさま、師走いかがお過ごしですか。私はダメです。年々しんどい。起こったことに対処する、頼まれたことをやるという、熱意も意識も低い仕事ルールを敷く私に、気力と体力の低下が追い打ちをかけます。増え続ける一方の頼まれごとに、私は疲弊を差し出すことでしか乗り切ることができません。ウンウン考え、ヨロヨロ動き、ヘトヘトになる一方です。
すでにヘトヘトな私ですから「67歳で定年、再雇用でまだまだ働く」という、相談者さんのお父さまには、素直に頭が下がります。老いてなお盛ん、老いても気力が漲り続ける境地とは、私にはちょっと想像がつきません。
少なくともサラリーマンという、雇用を条件に「させられる」種類の仕事において、自身の衰えを内なる熱意でもって補えるとは、私にはとても考えられないのです。だから相談者さんのお父さまも、あえて「今から一軒家を買う」と家族に宣言することで、内なる熱意を外部化し、半ば強制的に衰えの退路を断とうとされているのではないか。虚弱な私は、ついついいらぬ心配をしてしまいます。
ただし仕事に熱意も意識も低い私でも、意欲や体力の衰えに対する処方を、ひとつだけ知っています。それは習慣です。ルーティーンと言い換えてもいいでしょう。とにかく長年続けてきた自分なりの段取りや行為は、意外なほどに自身の衰えを補完します。長年の習慣といっても、ご立派なものではありません。そもそも雇われの身ゆえですから、サラリーマンの習慣なんて、自ら意識して作り上げたというより、出社時間や勤務地や組織によって半ば強いられた、受動的なルーティーンがほとんどでしょう。
しかし、その習慣は時間を経るほどに驚くべき強度を発揮します。出勤し、仕事をこなし、昼飯を食べ、帰路につく。そこで繰り返されるあらゆる行動や段取りは、自分への最適化を極めていきます。「いつどこでなにをする」が固定された生活は、多少の不調や衰えにビクともしません。それゆえ確立しきった習慣やルーティーンは、時に「生きがい」とすり替わるほどに、スムーズなリズムと強度を私たちの人生にもたらします。長らく同じところに勤めた経験のある人は、頷くところがあるのではないでしょうか。
そういう意味で、相談者さんのお父さまは「平日は仕事、土日はパチンコ」が極度に硬化したルーティーンと化しているのかもしれません。しかもお父さまは熱意をもって、さらにおそらくは学歴社会への反骨心をもって、仕事に邁進されてきた。お父さまは平日の仕事の中でも、高度に洗練された習慣を大小さまざまに確立されていたはずです。
もくもくバリバリと働いてこられたお父さまは懸命に生きる中で、だれにも邪魔できない繰り返しを作り上げた。しかしその繰り返しは繰り返されるうちに固くなるあまり、自身も手が出せないような、不可侵のものになってしまった。だから定年後も「それをやめる」という選択が消えてしまった可能性は、じゅうぶんある気がします。「ゆっくりしたら?」とおっしゃる相談者さんのお母さまには、それをわかっていらっしゃる気配がします。
そのようなケースは、なにも珍しいことではありません。あなたの会社でもあなたの身内でも、習慣の強度ゆえに縛られ、続ける以外に選択肢を持たない人はたくさんいるはずです。人でなくとも「存続させること」が目的になってしまったルールや組織など、私が働く会社の中でさえ枚挙に暇がありません。大げさにいえば、人あるいは組織における習慣の強度を拠り所に社会をゴリゴリ発展させてきた日本は、その恩恵の反動として「変化がしにくい社会的習慣」を作り上げてしまったのでは、と思う時があります。
もちろん強度ある習慣も、それぞれ個人のレベルにおいては、なんら非難されるものではありません。むしろ尊いものです。老齢の職人の所作が無駄なく美しいように、熟年サラリーマンの仕事には一定の説得力があります。それはそれぞれが築き上げた歴史というべきものであり、だれかが否定できるものではありません。おそらく、子どもであっても、親の職業上の固い習慣を否定する余地はないでしょう。そこは人間の尊厳に関わることですから。
つまりは、長年続けた仕事をやめさせることは、だれにもできないのです。それどころか長年の習慣を切断するのは、本人にもできない場合がある。そう考えると、家族には労わり応援する以外にできることはないのでしょう。おそらく私たちは、ルーティーン化した仕事を、雇用が終わるとか体を壊すといった、第三者的無情な事情でしか終わらすことはできない。なかなかどうして、悲しい気持ちになってきます。
働きたいという意思に、打つ手はありません。どれだけ親を気遣おうとも、習慣が習慣を保持しようとする慣性の法則に、子は打つ手はありません。私も親がそういう状況に直面する年頃です。私も親に「仕事をやめろ」とはとうてい言えそうにないから、ただまぁ打つ手はありません。
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〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第8回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
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☆今回のお悩み☆
シャープさん、ヤンデル先生、こんにちは♪
お2人のこのコーナーがとっても好きです♪
私も何かお2人からのお言葉が欲しい!
と、意気込んで、Googleフォームを開き、
回答を入力
の文字を、何度見送ったことか☺︎
肝心のお悩みが、うまいこと出てこないのですよ。
せっかくのチャンスなのですから、小洒落た感じのお言葉が欲しい♪そんな欲にまみれた想いでは、採用されないですね。
ここは正直に、1番聞いてみたい事を書くしかない!やっとここまできました☺︎
ただ、まぁ、打つ手はないです。わかってます。
もう会えない人に、会いたくなった時、
どうしたらよいのでしょうか。
なるべく、笑って生きたいなと思ってるので、
そんな時は、どうでしょうさんの力をお借りしてるのですがね♡(PN. ぢぢ@札幌さん)
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こんにちは。
冒頭からいきなり挨拶もそこそこに本質的なことを申し上げますと、今回、ぢぢさんからいただいたご相談は、今までの中で一番難しいです。なんとか「回答」しようと思い、何度も何度も書き始めてはみたのですが、どうにもうまくいきません。
悩んで、キーボードに両手を置いてバカスカ叩き、しっくりこなくて、右手の中指をおもむろにバックスペースに伸ばして全部消す、あるいは左手でCtrl+Aと押して全選択して、左手でdeleteするというのを、もう4回ほどくり返しています。
本来、そこまで苦しんで書くようなコーナーではないはずなのですが。
最後、オチの部分を定型文の「打つ手はないです。」で締めるという本連載のシステムは、書く方としてはとても楽です。なぜなら、これによって、悩み相談系コンテンツの一番難しい部分を回避できるからです。結論が「打つ手はない」ということはすなわち、「解決」しなくていいということですからね。他人の問題に解決策を提示するほど難しいことはないですから。
私どもは、お題を見て、思ったことをただ書けばいい。それだけでいい。
疑問や懸念に本気で向き合うことなく、肩肘を張ることなく、ぢぢさんの書かれた文章から着想したイメージを随意に記していけばいい。シャープさんとはこの企画に関しては一回も相談をしたことがないので、彼がどういうやりかたで書いているのかはわからないですけれども、少なくとも私はこれまで「随想形式」で書いてきました。
しかし、今回は、どうもそれがうまく行きません。
理由はおそらく、ぢぢさんの文章全体から、強く、ねばっこく、絡まり合って、へばりつくような、強烈な苦しみのようなものが感じ取れるからです。それをぢぢさんは半分意図的になさっているようで、でも一部は無意識なのかなとも思います。苦しみの一部はどうやら自罰的にご自身に向いているようで、かつ、どうやら私どものほうにも向けられている。
今回のご相談内容は、段違いに重いです。こんなおちゃらけコーナーに送ってくる類いのものではない、まがまがしいオーラのようなものが、文章の奥からビンビン伝わってくる。
「これに、いつものように答えを用意することなく、シレッと随筆を書いていいのだろうか?」というとまどいが、私のキータッチを途中で止めてしまうのです。
ぢぢさんは、死別か離別かわからないですが、とにかく何らかの別れを経験されたのだということはわかります。そこは「誰もがわかるように書いている」。
しかし、その別れについて、私どもに「詳しいことを知らせる気はない」という意思もまた伝わります。本質の部分をホワイトノイズの中に埋もれさせて、このコーナーを読む人に「あまり心を探られないようにしたい」という、仮にも「相談企画」であるはずの本コーナーに対する本末転倒な心意気を同時に感じとることができます。
「小洒落た感じのお言葉が欲しい♪ そんな欲にまみれた思いでは採用されないですね」
いえ、そこまで厳密に相手を選別するような企画ではないんです、ここは。
ていうか大抵の質問者は「まあちょっとなんか小洒落たこと言ってくれや」くらいの軽い気持ちで投稿してくださってきたと思います。
「欲にまみれた」なんていう言葉をここで目にすると、ぎょっとする。コーナーの空気に合っていない。
「なるべく、笑って生きたいなと思ってるので、そんな時は、どうでしょうさんの力をお借りしてるのですがね♡」
「ですがね」が引き受ける、あるいは逆転させるべきものが、明確には書かれていませんが、普通に考えれば、この「ですがね」からは、「今は笑って生きられない」という意味を読み取れます。テンションが激重です。ハートが空虚です。
「打つ手はないです。わかってます。」
それは私どもの伝家の宝刀、あるいはエクスキューズ(言い訳)です。先に使われてしまいました。ご丁寧に、「わかってます」で無効化までして。
開示と秘匿とを同時に行っているような。軽量化しながら重装備しているかのような。
ここで唐突にごく個人的なことを申し上げることになり、大変恐縮ではありますけれども、「離別の悩み」は、私自身、背骨の辺りに一本貫通している、私の性格や行動に大きく影響を与え続けている、私の人生のテーマそのものと言って差し支えないものです。
この悩みに関しては私自身、誰とも共有したいとは思わないし、誰かが解決できるとも思っていないのですが、ぶっちゃけ、まれに、誰かこの悩みを引き受けてくれないかな、でも絶対に全部はわかってくれないだろうけどニュアンスだけでもわかったふりをしてくれないものかなと、何度も何度も何度も何度も考えて、でもやっぱりやめてきた、という歴史があるので、その……ぢぢさんがこの七面倒くさい形式の文章を書いた理由も、全部わかるなんて怖ろしいことは絶対に言いませんが50%くらいはわかります。「誰にもわかるわけないんだけど多少は他人に伝えておかないと苦しんでいる甲斐がない」みたいな感覚が、半分弱はわかる。
ぢぢさんが今回の相談文に書かれた言葉は、一文ずつ切り取れば明るくも読めますが、しかし総体として伝わってくるニュアンスは暗黒です。音符も絵文字もこれみよがしに「明るさを演じている」ように見えるし、「これだけやってあげれば、明るさを演じている私に気づくでしょう?」という、探偵が気づきそうなヒントをあえて現場に残す怪盗のような挙動にも見える。
あるいはぢぢさんは日常生活では、カムフラージュに成功しすぎてしまっているのかもしれませんね。周りに「明るく振る舞っている元気な人だ」と思われているのかもしれない。だから、相談文では、我々に「本当のつらさが伝わらない可能性」をおそれて、このようなある意味わかりやすい重さを配備した文章を書かれたのかもしれない。
そしてぢぢさんは今、あらゆる他人の言葉を、あまり自分の中に入れる気がないのではないか、とも感じます。誰に何を言われても私はどうしようもないのだということを、ご自身の中で何度も咀嚼して、あきらめるまでの時間を稼いでいる。だからこんな文章を私どもに送ることを思い付かれたのではないか。
こうしてひたすら読みとろうと試みていくと……そのいくつかはピント外れだったかもしれませんが……、しみじみ感じます。
打つ手がないです。
今回ばかりは全く打つ手はありません。
本当にそうだろうか?
はい、そうです。本当に打つ手はないです。
永遠の離別に打つ手はないのです。
ただし、待つ手はあるかもしれない。
「打つ手はないです」という言葉がゲシュタルト崩壊するくらい、何度も何度も入力していくと、「手を打たずに待っている棋士の姿」がふと思い浮かびました。長考をする。王も飛車も歩も動かさず、ただ待つ。なんらかの手を指したら局面が動いてしまって、それはあるいは、自分を敗北に導く一手になるかもしれないのだけれど、手を打たずに待てば、その将棋はいつまでも終わらないのです。
だから待てばいいのかなと思う。
将棋だと制限時間があるから許されないやり方ですけれどね。人生ならば待てます。
……まあ人生にも制限時間はあるんですけれども、ここは考えようでして、「永遠の離別」という言葉があるように、別れに伴う時間というのは基本的に無限に引き延ばされるんですよね。その無限を生きるのは本当に辛いことですので、人はしばしば耐えられないほどの辛さを感じます。しかし、無限に続くかのような時を過ごすというのなら、心象風景的には制限時間はなくなっていると言い換えることができます。となれば、いっそ、制限時間のない将棋みたいな気持ちで、いつまでも待つ。そういうことは可能なのではないでしょうか。
待つ間には本を読みましょう。永遠の離別を永遠に待つということは、理論上、永遠に本が読めます。
先日、エリザベス女王を主人公にしたフィクションを読みました。『やんごとなき読者』という本です。白水社から出ています。エリザベス女王は、多くの方よりも長生きしましたので、じつはとんでもない量の別れを経験している方です。もっとも、この本は女王陛下の別れの苦しみを直接書いたものではないですが、手を打たずに待つ女王の姿と、あるタイミングで手を打つ女王の姿とが両方描かれており、テーマは「限りある人生における、自分で選べない別れと自分で選べる別れ」ではないかと思います。湿っぽい本ではなく、ウィットに満ちあふれています。よかったらどうぞ。
あと、少し前になりますけれども、カズオ・イシグロの『クララとお日さま』という本を読みました。この本の主人公はロボットです。人より長く生きます。この「人より長く生きるモチーフ」というのを私はとても好んで、しょっちゅう読んでいます。よかったらどうぞ。
そう言えば20年以上も前になりますが、ライトノベルで『狼と香辛料』というシリーズがありまして、これ、基本的には経済ラノベでして、かなりよくできているのでいちいち感心するのですけれども、主人公は狼娘で、もちろん人より長く生きます。よかったらどうぞ。
この際ですから申し上げますと、『薄暮のクロニクル』というマンガがありまして、これは機動警察パトレイバーを書いたゆうきまさみさんの著作なのですけれども、主人公は人なんですがもう一人の主人公が吸血鬼で、もちろん人より長く生きますがよかったらどうぞ。
あとは『ダンジョン飯』も……いや、これはあまり語らない方がいいかもしれませんが、よかったらどうぞ。既刊12巻で現時点では完結していませんが、なあに、永遠に待っているうちに必ず完結するはずです。
以上、本日は胸を張って申し上げます。かれこれ8本書いて消してこれが9本目になりますが結論ははっきりしています。永遠の離別に、「打つ」手はないです。
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