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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜

第19回

 

「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!

悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。

様々な「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。


毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。

今月はシャープさんの回答を無料掲載いたします!

 

ヤンデル先生の回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております! 

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☆今月のお悩み☆

採血の際、腕の血管が逃げます。右手の血管はレジスタンスの様になっており、看護師さんによっては腕の中で針がマツケンサンバ並みに動きます。マツケンサンバが嫌な私は涙を流しながら「後生ですから、手の甲から、手の甲から採血をッ……」と懇願しますが、看護師さんのプライドを傷つけてしまうのか、マツケンサンバはさらに加速。ここは梅田コマ劇場かと思う位の熱演を繰り広げた結果、腕にはいくつかの注射針の跡と内出血の跡。次の日警察官に職務質問を受けたことは言うまでもありません。腕の血管が逃げないように説得したいのですが、どのように説得すればいいのでしょうか。嘘でもいいので教えてください。

 (P.N:匿名希望の中川学)

 

 

どうで荘にお住いのみなさまにおかれましては、健やかにお過ごしでしょうか。私はそれなりに健やかです。ことほどさように医療の現場に注目と負荷が寄せられる時代にあって、幸いなことに私はお医者さんにかかりっぱなしということはありません。ここでお悩みの回答を担うもうひとり、ヤンなんとかも医療の従事者ですが、ほんとうにご苦労さまと思います。

では今月のご相談です。採血がいつもうまくいかず、何度も何度も針をぶっさされるからどうしたらいいでしょう、という内容です。これまた幸いなことに、私は採血されることに苦労するという経験はありません。しかし会社の健康診断なんかで「なかなか順番が来ないな」と顔を上げると、射す方も射される方も四苦八苦していたり、あるいは採血という行為に気分が悪くなり別室へ運ばれる人もいたりして、なんとも気の毒だなと感じます。ちなみに気分が悪くなった人は翌年も運ばれていました。

自分の身体の状態を調べるためにするのが採血ですから、治す治さない以前に、治療のスタートラインに立つ段階から苦労を強いられるのは、なかなか奮闘の気がそがれるだろうと思います。加えて採血の苦労にはそもそも、する側の熟練度と、される側の血管の特性という、原因の二面的複雑さがあるはずです。しかし相談文を読む限り、採血のうまくいかなさは終始、ご自身の生きのいい血管(というと医療の現場における矛盾が生じそうですが)にあると自ら語られています。決して看護師のせいだとはおっしゃいません。そこに私は相談者さんの、医療に従事される方への配慮、言葉を変えれば「注射のプロフェッショナル」への敬意を、ほのかに感じます。

プロフェッショナルに注文をつけるのは勇気がいります。ある事象や行為について、明らかに自分より経験量もスキルも多い相手へあれこれ言うことに、私たちはためらいをおぼえます。なにせ向こうはプロですから。飲食店へ入って、うまいまずいはともかく、作り方まで指示する人はいないでしょう。私もこういう仕事が長いので、ようやく言葉のプロという認知が進んできたのか、さいきんは言葉の選び方について社内からあれこれ指定されることはなくなりました。うまいまずいは相変わらず言われますが。なので、相談者さんも「後生ですから」という懇願というかたちでしか、プロに注文をつけることができないのでしょう。結果、腕の注射跡は増えるばかり、とは相談文に書かれているとおりです。

ご相談には「逃げる血管の説得方法を教えてくれ」とあります。私には不随意筋の管理方法などわかりません。だいたい随意の筋すらうまくコントロールできない、極度の運動音痴で知られる私です。尋ねる相手を間違っています。とはいえ、なかやまきんに君ですら、筋肉に聞いても答えはわからず、筋肉はルーレットだとおっしゃっています。きんに君でも無理なのですから、われわれが「逃げるのかい?逃げないのかい?」と自らの血管に説得を試みても、成功するはずがないと思われます。つまり注射をされる側に、打つ手はないのでしょう。やはり採血は、注射のプロが成否を握る領域なのだと思います。

と、ここまで私は胸騒ぎを覚えながらも、その胸騒ぎがいったいなにかを把握しないまま回答を進めてきました。回答も終盤に差し掛かるいま、胸騒ぎの出元を探るべく、ペンネームのお名前を検索してみたのです。そこでわかったのは「相談者さん、あなたもプロですよね…?」ということでした。

もちろん相談者さんがプロの作家さん、それもマンガ家さんであることは推測の域を出ません。私には確かめる術もありません。しかし、この相談文の流れるようなおもしろさ、客観性と躍動感にあふれた血管描写力、そして必要以上に語られるマツケンサンバへの多幸感に、私は一読目からただならぬ胸騒ぎをおぼえていたのでしょう。これはプロの仕事だ、と。

であれば、なおさらです。プロに注文をつけるなど、私にはできません。私にはそんな勇気はありません。私が申し上げることができるのは、この相談文で綴られたお悩みをぜひマンガで読ませてください、それだけです。ただまあ、打つ手はありません。

 

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もう一人の回答者、ヤンデル先生の回答はどうで荘入居者限定でお読みいただけます!

 

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【回答者プロフィール】

山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。

病理医ヤンデル/市原真(45

好きなどうでしょうはユーコンです。

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