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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第10回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。
入居者からの「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。
毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開。
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。
今月は病理医ヤンデル先生の回答を無料掲載いたします!
シャープさんの回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!
また、お悩みの募集はどうで荘内で行なっています。入居者の方はドシドシお寄せください。
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☆今回のお悩み☆
仕事と子育てどう両立すればいいと思いますか?奥さんは子育てで大変そうだけど仕事をして稼がないと子育てが色々しんどくなるジレンマです。
(PN. たいさん)
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こんにちは、病理医ヤンデルです。いよぉーし、本日も粛々と悩みましょう。ええ、悩みます。きれいな回答は無理だなこりゃ。思いついたことからダーッと書きます。
最初に……あなたが一行目に用いていらっしゃる言葉、世の中でもかなり便利に使われている「両立」という言葉、これがよくないなーと思いますねえ。あーいやいや、文句言ってるわけじゃないです。なんでそんな言葉を使うんだ、っていう意味ではなくて、「言葉に呪われてるんじゃないかなあ、大変そうだなあ」って言いたい。
「両立」って言葉が私たちの生活をちょっと面倒にしてしまっているのではないかと感じる今日この頃です。
キャリアと家庭を両立、とか、仕事と子育てを両立、とか、みんな、日頃からあまり考えずに使ってしまっている言葉ですけれども、そんな、あのね、この話はね、両方いっぺんに立てられるほど簡単な案件じゃないんですよ。脊髄反射的に「両立」って言っちゃってるけれども。いやいや、そんな簡単じゃないんですって。ねえ。
「仕事」も「子育て」も、どちらも言ってみればお遍路をゆっくりゆっくりまわるみたいな行為でしょう。それだけに「かかりきり」になって一歩一歩進んでいったとしても、天候とか、ロープウェーの運行状況とか、クリームパンの奪い合いとか、いろいろままならないものに左右されて、予定通り次の札所に行けるかどうかは時の運みたいなところがあるわけです。「かかりきり」だったとしてもですよ。それがあなた、お遍路と番組の取れ高を両方なんとかしろ? どう考えても無理でしょう? なのに我々は人生で、「お遍路をまわって受験生の合格を祈願しつつ、おもしろいことも言え」みたいな無茶ブリをされるんですよね。
どだい、無茶なんですよ。
ところが、世の中に「両立」なんていう迷惑な言葉がありふれているせいで、なんとなく、「両方やってやれないことはないのかな?」みたいな気持ちになってしまうんですね。これはもう認知のゆがみを生み出す呪いの言葉です。
次に、「仕事」と「子育て」が、それぞれ1つの案件みたいな感覚でこの相談の文章を書かれてるような気がしますけれどもね、仕事って、じつは複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。子育ても、なんと複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。
わかります?
仕事をきちんとやろうと思ったら、例のいまいましい「両立」みたいなことを、毎日言われ続けることになります。そう思いませんか? あれをまとめとけ、こっちは会議しとけ、そっちは学んどけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなことばかりじゃないですか。基本マルチタスクでしょう。
子育ても同じで、「両立」「両立」の雨あられです。そう思いませんか? あそこを面倒みとけ、これを作っとけ、それは片付けとけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなのが延々と続くんですよ。めちゃくちゃマルチタスクです。
そして極めつけには、仕事も子育ても、基本的に「フルの休日」ってないんですよね。負荷の波はあるんだけど、それがゼロになるってことはない。
となるとね。仕事だけで両立、子育てだけで両立して、さらに仕事と子育てで両立って、あなたそりゃ、いくつ両があると思ってるんですか。よっ、千両役者。やかましいわ。
何が言いたいかっていうとですね、「仕事」と「子育て」と、二項を立てて両方なんとかしたい、みたいな前提に無理があるし、そもそも仕事だけやっていようが子育てだけやっていようが、「両立」みたいなものが求められる限り、人間はいつも、過剰なマルチタスク状況を強いられるんですよ。
どちらかだけであっても無理なのに。
そこで我々の「先輩方」はどうしてきたかっていうと……。
あそこで「両立」してるような方も、あっちで「専業」してるような方も。
まあ……小声で言いますが……みんな適度にサボってますよ。
仕事でやらなきゃいけないあれこれを、全部やってる人なんていません。なんでもこなしてすごい! みたいなバリキャリの先輩も、もちろん非常に高いレベルでいろいろこなしているのはその通りなのですが、どこかで必ず手を抜いています。仕事において絵は描かないとか。取引先との会話は減らすとか。そうじゃないと、千手観音でもない普通の人間は絶対に無理なんです。
で、家事や子育てについてもそれは全く同じで、じつは全員がほどよくさぼってます。子どもに対して完璧であろうとしたところで子ども以外の家族に対しては手を抜くことになるし、そもそも、「完璧な親」なんていませんよ。子に教えられることばかりですし。
そんなこと、ネットでも現実でもみんなが言ってますよ。サボりかたを覚えよう、みたいなね。
でも同じネットの中に、「両立」っていう言葉があるばっかりに、なんとなく、「仕事」と「子育て」はどっちもやってかないとダメなのかなー、許されないのかなーみたいに、圧迫されちゃうんですよね。
だからね、両立なんて言葉から自由になりましょう。
我々はどっちにしろ、仕事だけをしようが、子育てだけをしようが、マルチタスクにあわあわしながら、適度にあっちを立てたりこっちを立てたりを微調整しつづけて、それでなんとかやりくりしていくものです。だったら、たとえば、「仕事というマルチタスク+子育てというマルチタスク=仕事と子育てというマルチタスク」みたいにね、1+1=2ですけど、「たくさん+たくさん=たくさん」みたいに考えてね、はい、数学からも自由になりましょうね、いいですか、そんなまじめに考えてないで、思考も多少はサボったほうがいいですよ、でね、たくさんのできごとを簡単に「仕事 VS 家庭」みたいに切り分けるんじゃなくてね、家族みんなで協力しながら、「全部はむり!」っていう気持ちを共有してですね(これ大事)、その場その場で、今はこっちを大事にしようかな、今日は13番札所までとりあえず一緒にいこうかなという感じで、随時相談しながらやりくりしていくということでどうですか。マルチタスクにはマルチメンバーでマルっといくしかないんじゃないか。
ねえ。
それでもなお両立したいって言われたら、まあその、打つ手はないです。
毎月のお悩みへの回答はおひとりは全文公開。もうおひとりは「どうで荘」内のみでの掲載です。
シャープさんの今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
【回答者プロフィール】
山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(44)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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