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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第11回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。
入居者からの「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。
毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開。
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。
今月はシャープさんの回答を無料掲載いたします!
病理医ヤンデル先生の回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!
また、お悩みの募集はどうで荘内で行なっています。入居者の方はドシドシお寄せください。
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☆今回のお悩み☆シャープさん ヤンデル先生 はじめましてよろしくお願いいたします。
たいしたことのないことなのですが、レジの仕事をしている時に、(ものすごくレジが混んでいる)列に並ばずに横からアレコレ聞いてきたり、「〜してくれ」とか言ってくるお客様へは、なんと言えば、きちんと並んでらっしゃるお客様たちを、ほっこりさせることができるでしょうか?良いセリフがないかといつも考えております。
(PN. ここっけこさん)
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どうで荘にお住まいのみなさん、いかがお過ごしですか。私は切羽詰まってます。なぜならこのお悩み相談の締め切りが、とうにお過ごしなさっているからです。お恥ずかしいことに日々の大事小事にまみれて、すっかり原稿を書かねばならぬことを失念しておりました。なので私は、なにをもってしても、これを最優先で書かねばならぬ。まさに今、相談者さんのお悩みのごとく、ずらずらと列をなす私の用事をすっ飛ばし、原稿が「書いてくれ」と横入りしてきた状態です。並んでいた他の用事からすれば、舌打ちのひとつでもしたくなる状況でしょう。
ただし私の場合は、居並ぶ用事の優先順位を私が決定することができます。あくまで列の主導権は私にある。それに比べて相談者さんは、レジに並ぶお客さんの優先順位を決めるなど、とうていできません。お客さんは、前から何番目という順番以外はまったく公平。シンプルかつ偶然性を徹底したルールだからこそ、われわれも黙って従うわけです。
そのルールが無秩序な他人の出現によって邪魔されれば、並ぶ人が殺気立つのも無理はありません。とはいえ相談者さんにはお客さんの順番を前後させる、列の主導権はないのです。しかも「お客様は神様です」が必要以上に拡大解釈されがちな私たちの社会。列の殺気がレジの人へ向けられるのは、よく考えればそうとう過酷なことだと思います。
にもかかわらず、です。相談者さんは、並んでいるお客さんを「ほっこりさせたい」とおっしゃっている。立った殺気を鎮めるどころか、ほっと一息ついてもらいたいと望まれているところに、私はお客さんと直に対峙するプロフェッショナルを感じ、ほとほと頭が下がる思いがしました。そしてスマホ越しとはいえ、直にお客さんと対峙する私は、さらに一抹の共感を覚えるのです。
自慢ではないですけど、私も世間の殺気を一身に浴びるという経験をしてきました。現在も若干そうです。そしてその殺気は私の所属する会社がよろしくない状況をもたらしたことに起因するので、そもそも自慢にもならないのですが、とにかく殺気やイライラといった感情は宛先を求め、宛先が見つかったとたん、いっせいにそこへ集中する性質があることを、私は身をもって知っています。つまり世間の殺気やイライラは、組織や団体に満遍なく押し寄せるのではなく、誰かあるいはどこかを標的に向けられるということです。
だからといって、そういう場合にどうふるまえば適切なのか、私もよくわかりません。ただ私が行ったのは、殺気に宛先があるのなら、せめて受信したことは表明すべきだろう、ということでした。なので私はツイッター越しに、迫り来る殺気をすべて読んでいることを明言し、そして私がどう思ったかを可能な限り開示しました。解決なんてとうてい私ができることではありません。しかし「あなたのイライラは着実に届きましたよ」というメッセージは、少なくともイライラを増幅させないことにつながるのではと、いまの私は考えています。
最近はずいぶん少なくなりましたが、電車で電話する人に私たちはなぜイライラするかというと、電話の向こうの人がなにを言っているか聞こえないストレスが大きいという説を読んだことがあります。たとえ他人の会話や感情であっても、打ち返しが見えないと、われわれはイライラするのかもしれません。
ですから相談者さんには、これが「ほっこりさせたい」という解決に直結するかはわかりませんが、横入りされたお客さんの対処が済んだ後、それがどういう内容でどう思ったかを、口にしてみてはいかがでしょうか。列を停滞させた謝罪ではなく、「割り箸を6膳くれと言われて面食らってしまいました」とか、「シーチキンがどこに置いてあるかなんてとっさに思い出せないんですよね」とか、その瞬間に相談者さんが心の中で呟いてきた気持ちをそのまま吐露すると、列に並ぶ人は自分のイライラが受信されたと感じ、少しばかりでも殺気が緩むのではないかと思うのです。
とはいえスーパーのレジには、まだまだ殺気のきっかけが潜んでいることは、みなさんもご存知でしょう。私たちは列に並ぶ時、どの列がいちばん速そうか、さまざまな観測と予測を経て、並ぶ列を決めます。そしてその決断が正しかったか、レジにたどり着くまでずっと答え合わせをしながら並びます。つまり列の停滞は、停滞そのもののイライラに加えて、隣の列の方が速かったという損の殺気を引き起こすわけです。
そんな損得の殺気なんて、もはや列を一箇所にするフォーク並びしかないのでは、と私なんかは思うのですが、店舗の動線やスペースの制約上、なかなか難しいのでしょう。そんな想像をするにつけ、結局のところ私は相談者さんに「ご苦労さまです」と声をかけるしかできないのかもしれません。
なるべく寛容でいたいものです。私もあなたも。ただまぁ、打つ手はありません。
毎月のお悩みへの回答はおひとりは全文公開。もうおひとりは「どうで荘」内のみでの掲載です。
病理医ヤンデル先生の今月のお悩みへの回答はどうで荘の入居者限定で公開中です!
【回答者プロフィール】
山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(44)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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