水どうD陣自費出版本第3弾!
水曜どうでしょう最新作2023について語り尽くし!
好評発売中!
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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜
第21回
「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!
悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。
様々な「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。
毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開。
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。
今月はシャープさんの回答を無料掲載いたします!
ヤンデル先生の回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!
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「シャープさんとヤンデル先生のお悩み相談室~ただまぁ、打つ手はないです~」は、今月の連載をもちまして、終了させていただくこととなりました。
これまで多くの方にご愛読いただき、誠にありがとうございました。
お悩みをお送りくださった皆様にも御礼申し上げます。
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☆今月のお悩み☆
水曜どうでしょうの楽しさをコミュニティに入ってより感じます。この楽しさを伝えたいのに伝わらない。そして、伝えられないから、諦めてしまう私がいます。これ、解決方法はあるのでしょうか。私もどのタイミングでなんでこの番組に行きつき、この楽しさに気づいたのか?が全く記憶にないのです。
ここで楽しく生きてるから良いのですが、妻にすらこの楽しさが伝わらず、悲しくなります。
どーしたら良いのでしょうか。。
どうで荘にご入居の藩士あるいは同志のみなみなさま、いかがお過ごしですか。関西在住の私は、遅ればせながら、おそるおそる、ようやく新作を見終わりました。なにがあっても結局おもしろくなる魔法のような時間でした。われわれはその魔法を何度も見せられてきたので、またかよと思うわけですよね。私はゲラゲラ笑いながら「夢だとわかりながら見る夢みたいだな」と、妙な感慨に包まれたのでした。
ただし上記の感想は、私と同じ属性の人を相手にする時しか、まともに機能しません。まさにここ。どうで荘のような、同じモノを履修してきた同志がいると確信できる場所でだけ通用する、あまりにぶっきらぼうで、あまりに説明を省いた言葉です。もしここではない場所でどうでしょうの新作について語らなければならないなら、私はもっと言葉を選び、もっと長々とした語りを選択するでしょう。
文脈も注釈も言葉選びもすっ飛ばして、ただよかったというという気持ちを垂れ流してよい安心が保証された場所を、私たちはコミュニティと呼びます。なにかと生きづらい世の中にあって、そのくせ人の好みは孤島化する時代にあって、コミュニティは好きを楽しむ理想郷のひとつだと思います。家族とか友人といったつながりとは別に、好きを共通項に暗黙の連帯を感じられるコミュニティは、今後人生を長く生きようとする人類にとって、さらに重要になっていくのかもしれません。
一説によると、驚くほど多くのモノやサービスは、その売上の8割をわずか2割のファンが支えているそうです。業態や業種に関わらず、企業は満遍なく少しずつお客さんに依存するのではなく、熱心なお客さんの上位20%が繰り返し購入することで、モノやサービスはようやく存続できるそうです。ふだん私はSNSで多くの人にモノの購入を促す仕事をしていますが、積極的にそれを買おうとするファンや、リピーターと呼ばれるお客さんの姿を見る限り、この8割/2割の法則はあながち間違いではないという実感があります。
つまりモノを作ったり売ったりする側にとっても、コミュニティはとても重要なのです。むしろコミュニティこそが、死活問題とも言えます。コミュニティが活発に機能し、そこに集うファンが熱心に語りあうことが、実は好きの対象そのものの永続を担保している。言葉を変えれば、コミュニティが活性化すればするほど、作り手側は儲かる。儲かるは語弊があるにしても、少なくとも作り続けることができるといえます。
このサイクルは長年のどうでしょうファンなら、よくわかると思います。これは私の憶測ですが、どうでしょうD陣のおふたりは野生の勘というか天性の商魂でもって、番組の早い時期からファンとコミュニティの大切さを体得されていたのだと思います。だからこそ相談者さんが体験したような、現在のどうでしょうコミュニティの楽しさがあるのでしょう。
じゃあコミュニティをどんどん大きくすれば、さらにどうでしょうは飛躍するのではないか。コミュニティに入るファンをどんどん増やせば、儲かるのではなかろうか、という話になりそうですが、おそらくモノゴトはそう単純ではありません。むやみにコミュティの大きさを目指すと、コミュニティの熱量が失われたり、逆にコミュニティの囲い込みを追求すると、その閉鎖性が活度をじわじわ奪っていく現象もよく見聞きするところであります。なんでも比例しないところが、好きという人間の気持ちを扱う難しさなのです。
現に、どうでしょう関連のコミュニティで、あからさまに規模を大きくするようなアクションを私は見たことがありません。ここ、どうで荘の入会案内も楚々としたものですし、キャラバンといったイベントも知りたい人に向けて開催を伝達するだけで、知らない人を振り向かせるような広告的アプローチはとられません。コミュニティからいかに離脱させないかという、逆方向のあからさまさも感じたことがありません。むしろ去る者は追わずといった自然体を、運営されている人たちの中に見ることができます。たぶんコミュニティを維持する人も、コミュティに集う人も、大事なのはそんなことじゃない、ということがわかっているからだと思います。
ですから相談者さんも、だれかをコミュニティへ無理に引き込むような勧誘をする必要はありません。たしかに「布教」とか「沼」という言葉はよく目にします。好きを周囲に感染させることは、推しを抱く者の務めといった言説もたしかにあります。しかし相談者さんがすべきは、どうでしょうの敷居を下げることでも、上げることでもありません。まずあなたがやるべきは、安心して好きを謳歌することです。それこそが、コミュニティにとっても必要なことなのです。
相談者さんは書かれています。どうでしょうにいつどうやって出会い、なんで好きになったのかわからないと。たぶん、好きとの出会いはそういうものなんだろうと思います。好きは、他人にわかるように理路整然と説明できるものではありません。それを過不足なくわかってくれるのは、同じ好きに出会った人たちだけです。好きは複雑で奥ゆかしくて、かんたんに説明されることを許さないから、好きはつねに言葉足らずでしか伝えらないのでしょう。だから相談者さんが妻にすら伝わらないと絶望するのも無理はないことだと思います。
ただしひとつだけ、好きを伝える手段はあります。あなたがその「好き」によって、たのしそうにしていればいいのです。人は、たのしそうにしている人に興味を持ちます。それがなにかわからなくとも、他人はたのしそうにしているあなたに興味がわくのです。おそらく相談者さんも、きっかけはそうだったんじゃないですか。だれかがどうでしょうに夢中になる様を見て、興味を持ったのではないですか。私には、相談者さんの「記憶にないあいまいなきっかけ」は、そういう風にファンが楽しむ姿を通してどうでしょうの魅力が伝わった証に思えます。
だから相談者さんはそのまま、たのしそうにしていればいいのです。たのしそうな姿を隠す必要はありません。とりわけ身近にいる家族は、あなたが好きを謳歌する姿を見せることこそが、相手にどうでしょうのたのしさを伝える唯一着実な手段なのだと思います。ただし相談者さんの配偶者さんがまた別の好きを抱えている場合、あなたが勧誘される可能性も非常に高いわけです。ただまあ打つ手はありません。
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あらかじめ解決を放棄したお悩み相談は今回でいったん終了です。理由は諸般の事情によりけり、打つ手はありません。
当初の予想を超えて、21回の連載となりました。どうで荘にご入居のみなさま、おつきあいありがとうございました。また、解決しないぞと看板を掲げているにも関わらず、相談を寄せてくださった方々にも感謝申し上げます。
なによりこの相談室は、私とヤンデルという他者なる二者が、同じ相談に鏡のように回答する対比こそが真骨頂だったと思います。その四苦八苦は、同じく迷走してきた私がいちばん理解できます。おつかれさま。ヤンデル先生、ありがとう。
連載中はひそかに、このコンビがどうでしょうD陣のおふたりの姿に重なって見えればいいなと、図々しく思っていました。藤村さんと嬉野さん、私はおふたりの生き方が好きです。
それでは機会がありましたら、またどこかで。ありがとうございました。
山本隆博
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もう一人の回答者、ヤンデル先生の回答はどうで荘入居者限定でお読みいただけます!
【回答者プロフィール】
山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。
病理医ヤンデル/市原真(45)
好きなどうでしょうはユーコンです。
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