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どうで荘

シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第10回


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シャープさんとヤンデル先生の相談室
〜ただまぁ、打つ手はないです〜

第10回

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☆今回のお悩み☆

仕事と子育てどう両立すればいいと思いますか?奥さんは子育てで大変そうだけど仕事をして稼がないと子育てが色々しんどくなるジレンマです。

(PN. たいさん)

 

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こんにちは、病理医ヤンデルです。いよぉーし、本日も粛々と悩みましょう。ええ、悩みます。きれいな回答は無理だなこりゃ。思いついたことからダーッと書きます。

 

最初に……あなたが一行目に用いていらっしゃる言葉、世の中でもかなり便利に使われている「両立」という言葉、これがよくないなーと思いますねえ。あーいやいや、文句言ってるわけじゃないです。なんでそんな言葉を使うんだ、っていう意味ではなくて、「言葉に呪われてるんじゃないかなあ、大変そうだなあ」って言いたい。

「両立」って言葉が私たちの生活をちょっと面倒にしてしまっているのではないかと感じる今日この頃です。

キャリアと家庭を両立、とか、仕事と子育てを両立、とか、みんな、日頃からあまり考えずに使ってしまっている言葉ですけれども、そんな、あのね、この話はね、両方いっぺんに立てられるほど簡単な案件じゃないんですよ。脊髄反射的に「両立」って言っちゃってるけれども。いやいや、そんな簡単じゃないんですって。ねえ。

 

「仕事」も「子育て」も、どちらも言ってみればお遍路をゆっくりゆっくりまわるみたいな行為でしょう。それだけに「かかりきり」になって一歩一歩進んでいったとしても、天候とか、ロープウェーの運行状況とか、クリームパンの奪い合いとか、いろいろままならないものに左右されて、予定通り次の札所に行けるかどうかは時の運みたいなところがあるわけです。「かかりきり」だったとしてもですよ。それがあなた、お遍路と番組の取れ高を両方なんとかしろ? どう考えても無理でしょう? なのに我々は人生で、「お遍路をまわって受験生の合格を祈願しつつ、おもしろいことも言え」みたいな無茶ブリをされるんですよね。

どだい、無茶なんですよ。

ところが、世の中に「両立」なんていう迷惑な言葉がありふれているせいで、なんとなく、「両方やってやれないことはないのかな?」みたいな気持ちになってしまうんですね。これはもう認知のゆがみを生み出す呪いの言葉です。

 

次に、「仕事」と「子育て」が、それぞれ1つの案件みたいな感覚でこの相談の文章を書かれてるような気がしますけれどもね、仕事って、じつは複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。子育ても、なんと複数の案件を同時にやっていくことなんですよ。

わかります?

仕事をきちんとやろうと思ったら、例のいまいましい「両立」みたいなことを、毎日言われ続けることになります。そう思いませんか? あれをまとめとけ、こっちは会議しとけ、そっちは学んどけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなことばかりじゃないですか。基本マルチタスクでしょう。

子育ても同じで、「両立」「両立」の雨あられです。そう思いませんか? あそこを面倒みとけ、これを作っとけ、それは片付けとけ、どこかでコミュニケーションしとけみたいなのが延々と続くんですよ。めちゃくちゃマルチタスクです。

そして極めつけには、仕事も子育ても、基本的に「フルの休日」ってないんですよね。負荷の波はあるんだけど、それがゼロになるってことはない。

 

となるとね。仕事だけで両立、子育てだけで両立して、さらに仕事と子育てで両立って、あなたそりゃ、いくつ両があると思ってるんですか。よっ、千両役者。やかましいわ。

 

何が言いたいかっていうとですね、「仕事」と「子育て」と、二項を立てて両方なんとかしたい、みたいな前提に無理があるし、そもそも仕事だけやっていようが子育てだけやっていようが、「両立」みたいなものが求められる限り、人間はいつも、過剰なマルチタスク状況を強いられるんですよ。

どちらかだけであっても無理なのに。

 

そこで我々の「先輩方」はどうしてきたかっていうと……。

あそこで「両立」してるような方も、あっちで「専業」してるような方も。

まあ……小声で言いますが……みんな適度にサボってますよ。

 

仕事でやらなきゃいけないあれこれを、全部やってる人なんていません。なんでもこなしてすごい! みたいなバリキャリの先輩も、もちろん非常に高いレベルでいろいろこなしているのはその通りなのですが、どこかで必ず手を抜いています。仕事において絵は描かないとか。取引先との会話は減らすとか。そうじゃないと、千手観音でもない普通の人間は絶対に無理なんです。

 

で、家事や子育てについてもそれは全く同じで、じつは全員がほどよくさぼってます。子どもに対して完璧であろうとしたところで子ども以外の家族に対しては手を抜くことになるし、そもそも、「完璧な親」なんていませんよ。子に教えられることばかりですし。

 

そんなこと、ネットでも現実でもみんなが言ってますよ。サボりかたを覚えよう、みたいなね。

でも同じネットの中に、「両立」っていう言葉があるばっかりに、なんとなく、「仕事」と「子育て」はどっちもやってかないとダメなのかなー、許されないのかなーみたいに、圧迫されちゃうんですよね。

 

だからね、両立なんて言葉から自由になりましょう。

我々はどっちにしろ、仕事だけをしようが、子育てだけをしようが、マルチタスクにあわあわしながら、適度にあっちを立てたりこっちを立てたりを微調整しつづけて、それでなんとかやりくりしていくものです。だったら、たとえば、「仕事というマルチタスク+子育てというマルチタスク=仕事と子育てというマルチタスク」みたいにね、1+1=2ですけど、「たくさん+たくさん=たくさん」みたいに考えてね、はい、数学からも自由になりましょうね、いいですか、そんなまじめに考えてないで、思考も多少はサボったほうがいいですよ、でね、たくさんのできごとを簡単に「仕事 VS 家庭」みたいに切り分けるんじゃなくてね、家族みんなで協力しながら、「全部はむり!」っていう気持ちを共有してですね(これ大事)、その場その場で、今はこっちを大事にしようかな、今日は13番札所までとりあえず一緒にいこうかなという感じで、随時相談しながらやりくりしていくということでどうですか。マルチタスクにはマルチメンバーでマルっといくしかないんじゃないか。

 

ねえ。

 

それでもなお両立したいって言われたら、まあその、打つ手はないです。

 

 

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病理医ヤンデル/市原真(44)
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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第9回


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第9回

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☆今回のお悩み☆

父が67歳で定年、再雇用でまだまだ働くサラリーマンです。平日は仕事、土日はパチンコと忙しそうですが、母が仕事辞めない?ゆっくりしたら??と父に話します。ただ、父の生きがいは仕事であり、その他はオプションなので、やめた後の反動が気になります。私は仕事は続けてほしいと思うのです。なぜなら、生きがいだけでなく、熱意で生きるタイプなので。父は高卒で、学歴を忌み嫌っていて、子供は大学へ!と話し、私は大学に行けました。またマイホーム購入で67歳で一軒家をガッツリ買うと話しております。すごい父親をもったなーと誇らしく思います。母の意見もわかるし、父の性格もわかるので、悩ましいです。母や父にどんなアドバイスやコメントをすれば良いでしょうか。。

PN.きむら さん

 

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どうで荘にご入居のみなさま、師走いかがお過ごしですか。私はダメです。年々しんどい。起こったことに対処する、頼まれたことをやるという、熱意も意識も低い仕事ルールを敷く私に、気力と体力の低下が追い打ちをかけます。増え続ける一方の頼まれごとに、私は疲弊を差し出すことでしか乗り切ることができません。ウンウン考え、ヨロヨロ動き、ヘトヘトになる一方です。

 

すでにヘトヘトな私ですから「67歳で定年、再雇用でまだまだ働く」という、相談者さんのお父さまには、素直に頭が下がります。老いてなお盛ん、老いても気力が漲り続ける境地とは、私にはちょっと想像がつきません。

 

少なくともサラリーマンという、雇用を条件に「させられる」種類の仕事において、自身の衰えを内なる熱意でもって補えるとは、私にはとても考えられないのです。だから相談者さんのお父さまも、あえて「今から一軒家を買う」と家族に宣言することで、内なる熱意を外部化し、半ば強制的に衰えの退路を断とうとされているのではないか。虚弱な私は、ついついいらぬ心配をしてしまいます。

 

ただし仕事に熱意も意識も低い私でも、意欲や体力の衰えに対する処方を、ひとつだけ知っています。それは習慣です。ルーティーンと言い換えてもいいでしょう。とにかく長年続けてきた自分なりの段取りや行為は、意外なほどに自身の衰えを補完します。長年の習慣といっても、ご立派なものではありません。そもそも雇われの身ゆえですから、サラリーマンの習慣なんて、自ら意識して作り上げたというより、出社時間や勤務地や組織によって半ば強いられた、受動的なルーティーンがほとんどでしょう。

 

しかし、その習慣は時間を経るほどに驚くべき強度を発揮します。出勤し、仕事をこなし、昼飯を食べ、帰路につく。そこで繰り返されるあらゆる行動や段取りは、自分への最適化を極めていきます。「いつどこでなにをする」が固定された生活は、多少の不調や衰えにビクともしません。それゆえ確立しきった習慣やルーティーンは、時に「生きがい」とすり替わるほどに、スムーズなリズムと強度を私たちの人生にもたらします。長らく同じところに勤めた経験のある人は、頷くところがあるのではないでしょうか。

 

そういう意味で、相談者さんのお父さまは「平日は仕事、土日はパチンコ」が極度に硬化したルーティーンと化しているのかもしれません。しかもお父さまは熱意をもって、さらにおそらくは学歴社会への反骨心をもって、仕事に邁進されてきた。お父さまは平日の仕事の中でも、高度に洗練された習慣を大小さまざまに確立されていたはずです。

 

もくもくバリバリと働いてこられたお父さまは懸命に生きる中で、だれにも邪魔できない繰り返しを作り上げた。しかしその繰り返しは繰り返されるうちに固くなるあまり、自身も手が出せないような、不可侵のものになってしまった。だから定年後も「それをやめる」という選択が消えてしまった可能性は、じゅうぶんある気がします。「ゆっくりしたら?」とおっしゃる相談者さんのお母さまには、それをわかっていらっしゃる気配がします。

 

そのようなケースは、なにも珍しいことではありません。あなたの会社でもあなたの身内でも、習慣の強度ゆえに縛られ、続ける以外に選択肢を持たない人はたくさんいるはずです。人でなくとも「存続させること」が目的になってしまったルールや組織など、私が働く会社の中でさえ枚挙に暇がありません。大げさにいえば、人あるいは組織における習慣の強度を拠り所に社会をゴリゴリ発展させてきた日本は、その恩恵の反動として「変化がしにくい社会的習慣」を作り上げてしまったのでは、と思う時があります。

 

もちろん強度ある習慣も、それぞれ個人のレベルにおいては、なんら非難されるものではありません。むしろ尊いものです。老齢の職人の所作が無駄なく美しいように、熟年サラリーマンの仕事には一定の説得力があります。それはそれぞれが築き上げた歴史というべきものであり、だれかが否定できるものではありません。おそらく、子どもであっても、親の職業上の固い習慣を否定する余地はないでしょう。そこは人間の尊厳に関わることですから。

 

つまりは、長年続けた仕事をやめさせることは、だれにもできないのです。それどころか長年の習慣を切断するのは、本人にもできない場合がある。そう考えると、家族には労わり応援する以外にできることはないのでしょう。おそらく私たちは、ルーティーン化した仕事を、雇用が終わるとか体を壊すといった、第三者的無情な事情でしか終わらすことはできない。なかなかどうして、悲しい気持ちになってきます。

 

働きたいという意思に、打つ手はありません。どれだけ親を気遣おうとも、習慣が習慣を保持しようとする慣性の法則に、子は打つ手はありません。私も親がそういう状況に直面する年頃です。私も親に「仕事をやめろ」とはとうてい言えそうにないから、ただまぁ打つ手はありません。

 

 

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☆今回のお悩み☆

シャープさん、ヤンデル先生、こんにちは♪

 

お2人のこのコーナーがとっても好きです♪
私も何かお2人からのお言葉が欲しい!
と、意気込んで、Googleフォームを開き、

 

回答を入力
の文字を、何度見送ったことか☺︎

 

肝心のお悩みが、うまいこと出てこないのですよ。
せっかくのチャンスなのですから、小洒落た感じのお言葉が欲しい♪

そんな欲にまみれた想いでは、採用されないですね。
ここは正直に、1番聞いてみたい事を書くしかない!

やっとここまできました☺︎
ただ、まぁ、打つ手はないです。

わかってます。

 もう会えない人に、会いたくなった時、
どうしたらよいのでしょうか。

 

なるべく、笑って生きたいなと思ってるので、
そんな時は、どうでしょうさんの力をお借りしてるのですがね♡

(PN. ぢぢ@札幌さん)

 

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こんにちは。

冒頭からいきなり挨拶もそこそこに本質的なことを申し上げますと、今回、ぢぢさんからいただいたご相談は、今までの中で一番難しいです。なんとか「回答」しようと思い、何度も何度も書き始めてはみたのですが、どうにもうまくいきません。

悩んで、キーボードに両手を置いてバカスカ叩き、しっくりこなくて、右手の中指をおもむろにバックスペースに伸ばして全部消す、あるいは左手でCtrl+Aと押して全選択して、左手でdeleteするというのを、もう4回ほどくり返しています。

 

本来、そこまで苦しんで書くようなコーナーではないはずなのですが。



最後、オチの部分を定型文の「打つ手はないです。」で締めるという本連載のシステムは、書く方としてはとても楽です。なぜなら、これによって、悩み相談系コンテンツの一番難しい部分を回避できるからです。結論が「打つ手はない」ということはすなわち、「解決」しなくていいということですからね。他人の問題に解決策を提示するほど難しいことはないですから。

 

私どもは、お題を見て、思ったことをただ書けばいい。それだけでいい。

 

疑問や懸念に本気で向き合うことなく、肩肘を張ることなく、ぢぢさんの書かれた文章から着想したイメージを随意に記していけばいい。シャープさんとはこの企画に関しては一回も相談をしたことがないので、彼がどういうやりかたで書いているのかはわからないですけれども、少なくとも私はこれまで「随想形式」で書いてきました。



しかし、今回は、どうもそれがうまく行きません。

 

理由はおそらく、ぢぢさんの文章全体から、強く、ねばっこく、絡まり合って、へばりつくような、強烈な苦しみのようなものが感じ取れるからです。それをぢぢさんは半分意図的になさっているようで、でも一部は無意識なのかなとも思います。苦しみの一部はどうやら自罰的にご自身に向いているようで、かつ、どうやら私どものほうにも向けられている。

 

今回のご相談内容は、段違いに重いです。こんなおちゃらけコーナーに送ってくる類いのものではない、まがまがしいオーラのようなものが、文章の奥からビンビン伝わってくる。

「これに、いつものように答えを用意することなく、シレッと随筆を書いていいのだろうか?」というとまどいが、私のキータッチを途中で止めてしまうのです。



ぢぢさんは、死別か離別かわからないですが、とにかく何らかの別れを経験されたのだということはわかります。そこは「誰もがわかるように書いている」。

しかし、その別れについて、私どもに「詳しいことを知らせる気はない」という意思もまた伝わります。本質の部分をホワイトノイズの中に埋もれさせて、このコーナーを読む人に「あまり心を探られないようにしたい」という、仮にも「相談企画」であるはずの本コーナーに対する本末転倒な心意気を同時に感じとることができます。

 

「小洒落た感じのお言葉が欲しい♪ そんな欲にまみれた思いでは採用されないですね」

 

いえ、そこまで厳密に相手を選別するような企画ではないんです、ここは。

ていうか大抵の質問者は「まあちょっとなんか小洒落たこと言ってくれや」くらいの軽い気持ちで投稿してくださってきたと思います。

「欲にまみれた」なんていう言葉をここで目にすると、ぎょっとする。コーナーの空気に合っていない。

 

「なるべく、笑って生きたいなと思ってるので、そんな時は、どうでしょうさんの力をお借りしてるのですがね♡」

 

「ですがね」が引き受ける、あるいは逆転させるべきものが、明確には書かれていませんが、普通に考えれば、この「ですがね」からは、「今は笑って生きられない」という意味を読み取れます。テンションが激重です。ハートが空虚です。

 

「打つ手はないです。わかってます。」

 

それは私どもの伝家の宝刀、あるいはエクスキューズ(言い訳)です。先に使われてしまいました。ご丁寧に、「わかってます」で無効化までして。



開示と秘匿とを同時に行っているような。軽量化しながら重装備しているかのような。



ここで唐突にごく個人的なことを申し上げることになり、大変恐縮ではありますけれども、「離別の悩み」は、私自身、背骨の辺りに一本貫通している、私の性格や行動に大きく影響を与え続けている、私の人生のテーマそのものと言って差し支えないものです。

この悩みに関しては私自身、誰とも共有したいとは思わないし、誰かが解決できるとも思っていないのですが、ぶっちゃけ、まれに、誰かこの悩みを引き受けてくれないかな、でも絶対に全部はわかってくれないだろうけどニュアンスだけでもわかったふりをしてくれないものかなと、何度も何度も何度も何度も考えて、でもやっぱりやめてきた、という歴史があるので、その……ぢぢさんがこの七面倒くさい形式の文章を書いた理由も、全部わかるなんて怖ろしいことは絶対に言いませんが50%くらいはわかります。「誰にもわかるわけないんだけど多少は他人に伝えておかないと苦しんでいる甲斐がない」みたいな感覚が、半分弱はわかる。



ぢぢさんが今回の相談文に書かれた言葉は、一文ずつ切り取れば明るくも読めますが、しかし総体として伝わってくるニュアンスは暗黒です。音符も絵文字もこれみよがしに「明るさを演じている」ように見えるし、「これだけやってあげれば、明るさを演じている私に気づくでしょう?」という、探偵が気づきそうなヒントをあえて現場に残す怪盗のような挙動にも見える。

 

あるいはぢぢさんは日常生活では、カムフラージュに成功しすぎてしまっているのかもしれませんね。周りに「明るく振る舞っている元気な人だ」と思われているのかもしれない。だから、相談文では、我々に「本当のつらさが伝わらない可能性」をおそれて、このようなある意味わかりやすい重さを配備した文章を書かれたのかもしれない。

 

そしてぢぢさんは今、あらゆる他人の言葉を、あまり自分の中に入れる気がないのではないか、とも感じます。誰に何を言われても私はどうしようもないのだということを、ご自身の中で何度も咀嚼して、あきらめるまでの時間を稼いでいる。だからこんな文章を私どもに送ることを思い付かれたのではないか。

 

 こうしてひたすら読みとろうと試みていくと……そのいくつかはピント外れだったかもしれませんが……、しみじみ感じます。

 

打つ手がないです。

今回ばかりは全く打つ手はありません。

本当にそうだろうか?

はい、そうです。本当に打つ手はないです。

 

永遠の離別に打つ手はないのです。

 

ただし、待つ手はあるかもしれない。



「打つ手はないです」という言葉がゲシュタルト崩壊するくらい、何度も何度も入力していくと、「手を打たずに待っている棋士の姿」がふと思い浮かびました。長考をする。王も飛車も歩も動かさず、ただ待つ。なんらかの手を指したら局面が動いてしまって、それはあるいは、自分を敗北に導く一手になるかもしれないのだけれど、手を打たずに待てば、その将棋はいつまでも終わらないのです。

だから待てばいいのかなと思う。

将棋だと制限時間があるから許されないやり方ですけれどね。人生ならば待てます。

……まあ人生にも制限時間はあるんですけれども、ここは考えようでして、「永遠の離別」という言葉があるように、別れに伴う時間というのは基本的に無限に引き延ばされるんですよね。その無限を生きるのは本当に辛いことですので、人はしばしば耐えられないほどの辛さを感じます。しかし、無限に続くかのような時を過ごすというのなら、心象風景的には制限時間はなくなっていると言い換えることができます。となれば、いっそ、制限時間のない将棋みたいな気持ちで、いつまでも待つ。そういうことは可能なのではないでしょうか。

 

待つ間には本を読みましょう。永遠の離別を永遠に待つということは、理論上、永遠に本が読めます。

 

先日、エリザベス女王を主人公にしたフィクションを読みました。『やんごとなき読者』という本です。白水社から出ています。エリザベス女王は、多くの方よりも長生きしましたので、じつはとんでもない量の別れを経験している方です。もっとも、この本は女王陛下の別れの苦しみを直接書いたものではないですが、手を打たずに待つ女王の姿と、あるタイミングで手を打つ女王の姿とが両方描かれており、テーマは「限りある人生における、自分で選べない別れと自分で選べる別れ」ではないかと思います。湿っぽい本ではなく、ウィットに満ちあふれています。よかったらどうぞ。

 

あと、少し前になりますけれども、カズオ・イシグロの『クララとお日さま』という本を読みました。この本の主人公はロボットです。人より長く生きます。この「人より長く生きるモチーフ」というのを私はとても好んで、しょっちゅう読んでいます。よかったらどうぞ。

 

そう言えば20年以上も前になりますが、ライトノベルで『狼と香辛料』というシリーズがありまして、これ、基本的には経済ラノベでして、かなりよくできているのでいちいち感心するのですけれども、主人公は狼娘で、もちろん人より長く生きます。よかったらどうぞ。

 

この際ですから申し上げますと、『薄暮のクロニクル』というマンガがありまして、これは機動警察パトレイバーを書いたゆうきまさみさんの著作なのですけれども、主人公は人なんですがもう一人の主人公が吸血鬼で、もちろん人より長く生きますがよかったらどうぞ。

 

あとは『ダンジョン飯』も……いや、これはあまり語らない方がいいかもしれませんが、よかったらどうぞ。既刊12巻で現時点では完結していませんが、なあに、永遠に待っているうちに必ず完結するはずです。

 

 以上、本日は胸を張って申し上げます。かれこれ8本書いて消してこれが9本目になりますが結論ははっきりしています。永遠の離別に、「打つ」手はないです。

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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第7回


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☆今回のお悩み☆

会話をうまく続かせることができません。特に初対面の人ですが、仕事関係、プライベート、性別、年齢問わず、話題が次から次へと出るようになるといいなぁ、と思っています。

『水曜どうでしょう』やYouTube等での藤村さん・嬉野さんを見てると、どんな相手でも会話が途絶えることがなくてすごいなぁ~、と思います。 何かよいアドバイスはありませんか?

(PN:t-aoao@川崎)

 

 

どうで荘にご入居のみなさま、いかがお過ごしですか。@SHARP_JP の山本です。さて今回は、私もその答えが切実に知りたいお悩みです。私もなかなかどうして、口下手な人間です。特に初対面の相手となると、いっそう「会話を続けること」自体が目的化してしまい、焦ったり、よくわからないことを言ったりと、不審なムーブをとってしまいがち。人との会話が怖い、とまでは言いませんが、会話が負担となる場面は多々あります。なので、そもそも自分が知りたい回答を、はたして自分でひねり出すことができるのか、はなはだ難儀な気持ちになりながら、進めたいと思います。

 

いま私は前文で「進めたいと思います」と書きました。おそらく私はここから先、つらつらと話題を提示しつつ、途絶えることなく文章を書くことができます。できます、というと正確でないかもしれません。今この瞬間はまだできていないけれど、数瞬後にはできているという確信があります。少なくとも私は、書くことにおいては、相談者さんのようなお悩みを抱くことはありません。書くという行為に限って、私は「うまく続かせることができない」という心配を回避できています(もちろんそうやって書かれた文章がおもしろいかどうかはまた別の問題ですが)

 

なぜ私が書くことにおいて、うまく続けられないという不安から自由であるかといえば、それはもう場数の問題といえるでしょう。なぜか私は、書くことが大きなウェイトを占める仕事に就き、書いたものを発信するという職務を長らく続けています。自慢する気持ちはありませんが、結果として私は、一般的な人より膨大な量を書き、それを世に放ってきました。その経験が私から、書くこと(そしてそれが読まれること)への苦手意識を取り去ってくれたのだと思います。

 

と、ここまでつらつら書き進めました。続けましょう。

 

では私はなぜ、書き続けるのは平気なのに、おしゃべりを続ける行為に苦手意識を抱くのでしょうか。たぶんそこには、書くこととしゃべることの本質的な違いが横たわっているのではないか、と思っています。

 

少々乱暴に言いますが、おしゃべりが他者との会話であることに対して、書くことは自分との対話です。たとえ書かれたものが、最終的に読まれることで他者とコミュニケーションを図るものだとしても、書いている間は自分との対話によってしか、書くことを進めることができません。冒頭で私が「今この瞬間はまだできていないけど、数瞬後にはできているという確信」と述べたのは、私は私と一文ごとに対話して、次に自分がなにを言うのかを発見する連続こそが書くことではないか、と考えているからです。

 

私が私と対話すること。それが書くための動力です。翻って会話とは、他者を相手におしゃべりすることです。仕事での初対面なんか、名刺くらいしか寄る辺のない他者でしょう。対話の相手は、勝手知ったる私の中の私。会話の相手は、私の外にあるむき出しの他者。どうやら私の苦手意識には、そういう対話と会話のちがいに関係がありそうな気がしてきました。

 

私もそこそこ年をとりました。職歴も口下手歴もそこそこ長くなりました。おそらく私は「書ける口下手」という微妙なポジションで、ベテランになりつつあります。そしてベテランゆえに私は、対話と会話を分けるものに、おおよその見当がつくようになりました。対話と会話を分けるもの。それは「たわいのなさ」と「段取り」だと思うのです。

 

暑いね。暑いですね。どこ行くの。ちょっとそこまで。特に目的もなく、なんとなく交わされるやりとり。私たちの日常は、すべて「意味」が付随する行為だけでできているわけではありません。意味のない行為があるからこそ、私たちは息がつまることなく、リラックスして生きることができます。そしてそういう、特に意味を持たない「たわいのなさ」を交換する行為が、会話にも含まれています。終わりも道筋も見通すことなく、ダラダラと友だちと続けるおしゃべりが楽しいのは、おそらく「たわいのなさ」があって「段取り」がないからではないか、と私は思うわけです。

 

一方対話はそうはいきません。対話は文字通り、相手と面と向かって行われます。上司と部下が机を挟んで話し合うシーンが典型でしょう。そこでは報告あるいは説得、時には叱責が行われます。対話とは、なんらかの目的に向かって双方が話し合ったり、あるいはこの場の意味を両者で共有するためにおしゃべりが進められます。揉めている人同士が話し合うことを会話と呼ばないように、対話には「たわいのなさ」はなく、ひたすら目的に向かうための「段取り」だけがある、とも言えるのではないでしょうか。

 

そう考えて行くと、私が会話より対話の方に苦手意識を感じないことも、あながち無理もない気がしてきます。私はあくまで仕事や職務的な要請から、書くこと(書き続けること)を、自身との対話を通して追求してきました。仕事で書くのだから、目的があり、段取りが存在します。そうやって私は、とことん合目的化した人間になってしまった。そして会話にも段取りを持ち込もうとするようになった。会話に段取りを持ちこむような人間の話に、たわいもなさが存在するはずもありません。こうして会話が苦手な私ができあがった、そういう風に思えてきます。なんだか切なくなってきました。

 

さてここで私は、ひとつ恐ろしいことに気づきます。藤村さんと嬉野さんのことです。あの方たちはなにをやってきたか。よくよく思い返せばあの方々は、どうでしょうで、会話のおもしろさをわれわれに見せ続けたのではなかったか。遠慮のいらない男4人が繰り広げる会話には、たしかに「たわいのなさ」があふれ、「段取りのなさ」の魅力に満ちていました。そしてわれわれは、あの人たちの会話を聞く快楽を知ってしまった。だからあのおふたりに、そもそも会話で勝てるわけがないのです。ひとたびあの方たちがしゃべれば、私たちはただ、耳を傾けざるを得ないのです。ただまぁ、打つ手はないです。

(追伸)

「打つ手はないです」で終わるという縛りが設けられたコラムですから、追伸が禁じ手であることは重々承知の上で、今回はどうかご容赦を。実は今回の相談者さんに、うってつけの書籍があります。田中泰延さんの『会って、話すこと。』という本です。目から鱗とはちがいますが、読めばおそらく気持ちが楽になること請け合いですので、ご一読をおすすめします。

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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第6回

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シャープさんとヤンデル先生の相談室

〜ただまぁ、打つ手はないです〜

第6回

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☆今回のお悩み☆

こんばんは、私は札幌でサラリーマンをしている者です。
毎月楽しみに拝読しています。

最後の締めが毎回「打つ手はないです」で終わる連載企画ということですが、お二人はこれまで「打つ手はなかった」という経験をされたり、耳にされたりしたことはありますか?

私は以前、函館の新聞配達の人から「『新聞を配達している人が私の家(配達先)の犬に勝手に名前を付けていた。しかもその犬が新聞配達の人に妙になついていて、私が名付けた名前で呼んでも反応してくれなくなった』というクレームが来たときに「打つ手はないなと思った」という話を聞いたことがあります。

お二人の「打つ手はないです」という経験や、他人から聞いたお話をぜひ教えてください。

(PN:藤村忠寿)

 

こんばんは、病理医ヤンデルです。いつもはこちらで悩み相談という体裁の、しかし実際には言いたいことだけ言って最終的に「打つ手はないです」と放り出してしまうという押し売り的雑文を連載させて頂いておりますが、お楽しみ頂けていれば何よりでございます。

 

そんな私には、何を隠そうひとつの悩みがございまして。

 

連載第6回目にして、はやくも、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る無頼漢から、悩み相談でもなんでもねぇ、事実上の「いい感じのエッセイを書けというお題」をほうりこまれた、ということでございます。

 

企画の趣旨が雲散霧消! もうテコ入れかよ! ていうかこれそもそも本人なのか!? 確かめる手段なし! いやだねーSNS時代! 商業施設の爆破予告がなんとなくウソっぽいなと思っても安全のために避難しなきゃいけないときの気持ちわかるわー!

心にさまざまな絶叫を響かせながら天を仰ぎましたが、病理検査室の天井にあるLED蛍光灯は最近取り替えたばかりでギラギラと攻撃的であり、目をしょぼしょぼとさせてまたPCに向き合って頭を抱えている次第です。これがまあ、目下の「打つ手がない悩み」と申し上げておきましょう。

 

さておき、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る確信犯からいただいたお題を拝見して、私は、ほろほろと昔のことを思い出しました。

ある日、ある場所で、ある仕事をしていた私が、ある年下の人間から相談を受けたときのことでございます。

私はあのとき、確かに「打つ手はないな。」という気分になりました。



ある人間が、私に向かって、仕事のつらさをとうとうと語りました。

ときに声を詰まらせ、ときに塞ぎ込み、ときに過去に対する深い後悔の念をにじませながら、「私の選択は間違いだった」「目標が消えてしまった」「私の基盤となるものがガラガラと崩れてしまった」というような言葉をぽつり、ぽつりと紡いでいきます。

詳しく聞いてみると、あれもこれもと夢を詰めこみまくって予定を立てたはいいが、次第にマルチタスクを消化しきれなくなり、アップアップになって、ついにはメンタルが爆発してしまった、ということのようでした。

そして、私が「相談」に乗ることになったのですが、その「相談」が、少々変わっておりました。

 

この人間は、こういうしゃべり方をしたのです。

 

――こんな決断をすると皆さんに迷惑をかけることはわかっているんですが。

 

――内心、冷静になって考えると、今こうしてやっていることがもう限界だとわかっているんですけれども。

 

――これ、最初の選択が、そもそも無理があったってことですよね。わかっています。



……そう、相談なんですけれど、「全部わかっている」と言うのですよ。

私は面食らいました。

相談じゃないんですよね。

確認なんです。

 

あのときの私は素直にこう感じました。「これって、私から何か言う必要はないな」。そして、かなり強めに感じました。「こりゃあ、打つ手はないな」。

今回、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗るデウス・エクス・マキナから大鉈をふるわれて、真っ先に思い出したのが、このエピソードでした。

 

思い起こせば、人というものは得てして、「ある程度決断してから人に相談する」ものですねえ。

 

これからどっちの道を選ぶか、という選択肢AとBとがあるとして、選ぶ可能性がフィフティ・フィフティの段階で他人に話を聞いてもらうというのは、実際にはまれなんだと思います。

 

80:20? あるいは、90:10かな。

 

本人の中で、ほぼほぼ、取るべき道が決まっている状態で、「じつは今50:50で迷っているんですけれども」と、90:10であることを(タテマエ上は)隠して相談をするケースのほうが、圧倒的に多いような気がします。

くだんの人間に限った話ではありません。たいていの相談って、「それもう君の中では決まってるよね。」と言いたいものばかりです。「相談者のなかで設定された謎解きを、相談者が選んだ情報をもとに解かされる」というのが、お悩み相談の本質的な性質のひとつなのではないでしょうか。

 

じゃあ、人はなぜ、そこまでして他人に相談をするのかというと……。

うーん、ここからは本当に私の想像なのですけれども、

 

「自分の選択」を誰かに承認してもらうこと自体が、ものすごく大きな人生の目標なんでしょう。

普通、目標と言ったら、何かをやってみたい、どこかにたどり着いてみたい、違うものになってみたい、みたいなものを指すと思われがちです。その目標に向かって取る手段を選ぶ。「選択」とはほかでもない、手段を選んでいる。

 

しかし、その「手段」自体が目的化する。より細かく申し上げれば、「手段を承認してもらうこと」が、本人にとっては、タテマエ上の目標よりも一段でかい、本質的な「影の目標」になっていることがすごーく多いですね。

 

……やあ、言い過ぎたかもしれませんけれどね。

 

本人の中で「わかっているんですけど」と言いながら、「どう思いますか」と人にたずねて回る人間のことを思い出して、だいたい世の中の相談事に、「お前は正しいよ」「その考え方は合っているよ」以外の正解はないんだよなーという気持ちが、あらためてふつふつと湧いてきました。

相談というものは得てして、他人がしゃしゃり出てきて「何かの手を打つ」というものではない。そんなことは求められていない。

思えば、「手を打つ」というのは、注射を打つみたいなもので、セラピー(治療)的です。でも、ほんとうは、「手を打たないでただ背中にそっと当てる」だけでいい場面が山ほどある。ケア(手当て)だけが求められている。

 

今さらですが、「打つ手はないです」で締めるこの企画、じつに深いな、確実に需要と価値がありますね。なるほどよくできている。

 

「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る公安の刺客に対するお答えは以上となります。順番的に私の記事が無料公開かな? シャープさんが「打つ手はない」と感じたエピソード、楽しみですねえ、そっちは皆さん、金払って読んでください。「たまにはどっちも無料で読ませろ」みたいなリプライを私個人に送られましてもすみません、当てる手がないわけではないですが、打つ手はないです。

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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第5回


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シャープさんとヤンデル先生の相談室

〜ただまぁ、打つ手はないです〜

第5

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☆今回のお悩み☆

物心ついた時からこうでした。
悩みというより、不思議に思っていることがあります。
幼稚園に行かず、小学校に上がるまで自宅でずっと過した自分ですが、誰に教えられるわけでもないのに腐っていました。腐っているという表現はもっともっと大きくなってから意味を知ったのですが
男女の普通のロマンスの数倍、男同志のロマンスに興味を惹かれてしまう体質です。誰からも教えられていないのに、変換する脳が備わっていて、しかもそれがあまり大っぴらにしてはいけないということを幼児にして知っていてこっそり、こうであったらばな、あれはこういうことであったのであろうなどと、自らの妄想の世界に一人でいるしかありませんでした。
そして、小さいころあんなに「どうしてこうなったのだ」と悩んでいたのに、長じてみると、こんなに同じことを考えている人が多くて、何でもないのだ。それもまた解せぬ。
どうしてこういう芽が種もなく生えてくるのでしょうか?なんの役に立つのでしょうか?男の人にもあるのでしょうか。

(PN:のりぞう)

 

どうで荘にご入居のみなさま、お元気ですか。@SHARP_JP の山本です。今年はさんざんやばいぞやばいぞと触れ回っていたせいか、夏に身構えるあまり、暑さにどうにか対処できている気がします。信じられないほど世の中が目まぐるし過ぎて、暑さへ注意が向いていないだけかもしれませんが。

 

さて、今回のお悩みです。お悩みというか、一種のカミングアウトと言えるのかもしれません。物心つく前から腐っていたという、相談者さんの告白です。

 

物心つく前から腐っていた。まるで意思を宿すことになったゾンビを描く、実験的なゾンビ映画がはじまりそうなモノローグに思えてきますが、そうではありません。腐るとはこの場合、有機物の腐敗を指すわけではありません。ニンゲンが腐るという意味ではゾンビと似ているのかもしれませんが、ここで腐るのは肉体ではなく、どちらかというとニンゲンの脳です。さいきん認知が進んだとはいえ、腐という文字を見て、意味の第一候補にBLが挙がる人はまだまだ少ないのではないでしょうか。BLのBに属し、Lを投影される男性ならなおさらかと思います。

 

しかし私は違いました。お悩みの文章に忽然と現れる「誰に教えられるわけでもないのに腐っていました」を一瞥してすぐ、これはBLの話だなと理解しました。申し遅れましたが、私はBL方面に話がはやい男性なのです。

 

なぜ私がBLに話がはやい一般男性かというと、自分がBLの素材としてきわめて親和性の高いマンガの主人公となり、BLを主とする出版社から書籍化されるという、そうとう粘度と難度の高い経験をしたからですが、長くなるので割愛します。気になる人は「シャープさんとタニタくん」で検索してみてください。いまでも書籍は買えると思います。

 

とにかく私がその時に理解したのは、BLとか腐女子と称する人たちが愛好し志向する目的とは、自身の性的嗜好を満たすのではなく、意識や認識のレイヤーを各人が増やそうとする行為にほかならない、というものでした。言い換えると、日常を取り巻く2つの事物の間にLOVEのフラグやサインをめざとく検知し、あらゆる事象に見えない物語を見出す力、とでも言えるでしょうか。つまり腐ったと自称される人とは、五感による世界の認識に腐という第六感を付加することで、物事の背景と奥行きを常人の何倍ものパワーで構築できる能力者なのです。

 

そして「腐」がそのような異能を指すのであれば、「誰からも教えられていないのに変換する脳が備わっていた」という相談者さんの述懐も、あながちないとも言えない気がしてきます。腐とはそもそも、人間が先天的に獲得する能力なのかもしれません。幼い子が石や木の枝といった、抽象性の高いモノでごっこ遊びに耽る様子を見ても、人間はそうとう早い段階から事物に物語を見出す能力が備わっているのではないかと、私は思います。

 

しかしここで同時に素朴な疑問も生じます。相談者さんはこうも続けるのです。「長じてみると、こんなに同じことを考えている人が多くて、何でもないのだ」ということがわかった、と。実は同じような能力者がこれほどまでにたくさん存在することを、大人になって知ったわけです。どれほど多いかというと、私が主人公となるマンガが出版社から書籍化され、それが書店で販売されるほど、です。つまり産業と呼べるレベルで、需要と供給や雇用の仕組みが社会にできあがり、文化と呼べる時間をかけ、歴史や作品が豊穣に積み上げられてきたわけです。

 

そう考えていくと、腐の能力を天与の才としてだけ語ることもまた、そうとう乱暴であると思うのです。腐は決して先天的なものだけではない。だれかから受け継がれ、育てられる能力という側面もあるはず。だから私はここで、ひとつの仮説を持つにいたります。

 

相談者さんのご親族、たとえばお母様が腐の者であった可能性はありませんか。物心がつく前から腐っていたとおっしゃる相談者さんは、物心がつく前から腐の指南を受けられていたのではないですか。私は相談者さんが腐の帝王学を修めた方ではないかとにらんでいます。折しも私は知っています。古の時代より腐を極めたベテランの方は、腐ェニックスと称されることを。もし可能であるなら、お母様と腐に関して、腹を割ってお話をされるとよいのではないでしょうか。ただまぁ、打つ手はありません。

 

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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第4回


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☆今回のお悩み☆

実は、これはもう終わった出来事なんですが、かなりもやもやした思いが残ったので、お二人の考えを聞きたいと思い、相談します。 某有名アイス店でシングルを注文したら「今、料金はそのままでダブルにできます」と言われました。私は、野菜のようなたくさん食べてもいいものなら追加しますが、アイスなので追加したくなくて断りました。 すると、店員さんは引き下がらずダブルを勧めてきました。そこからは、先輩店員も出てきて「後から苦情のような事を言われることもあるので…」とよくわからない言い分でしつこく勧められて、私も意地になり「いらないって言ってるんだからいいじゃないですか!」と言い争いになる始末。 結局こちらが折れてダブルにしましたが、あれは何だったんでしょうか? なんかお得の押し付けのような気もしますが、私がおかしいのでしょうか? どうぞよろしくお願いします。

 

これはモヤりますわ。もやもやするのも、無理ないです。「あれは何だったんでしょうか?」にはすみません、ちょっと笑いました。ほんと何だったんですかね。おかわいそうに。お察しします。大変でしたね。

 こういう店員さんみたいな人っていますよねー! こちらの都合とか好みとかを何も聞かずに、いきなり、「これを差し上げます」って一方的にモノを渡してくる人。基本的にそういう人から渡されるものって要りませんよね。だから、相手との関係にもよりますけれども、まあ要らないものは要らないってことで、正直に答えるわけですよ。すると……。

 

「要らねぇ」

「ああ?」

「要らねぇっつってんだよ」

「なんだと鈴虫」

「こんなもの別に欲しくねぇっつってんだ」

「黙って受け取れバカ野郎」

「(カチッ)」

とまあ、こんな感じでつばぜり合いが勃発してくるわけですよね。

ひたすら善意を押しつけてくる人。

本当に私のためを思っているんだったら、私が「それは要りません」と言ったときに、「ああ、要らないならあげるのはやめよう」と思ってくれるのが普通じゃないのかな、って、私も考えてしまいます。ですから相談者の方に100%同意です。

結局こういうことをする人の中で駆動している原理は、私に対する善意じゃなくて、「これを相手に渡すことで自分が良い気持ちになる」という、他でもない、自分に対する善意(何それ)ですよね。

「後から苦情を言われることもあるので~」とかホントに知ったこっちゃないですよ。こっちの都合なんか1ミリも考えちゃいねぇな。

そういう「自分への善行に忙しい人」と関わっていると、いくら日ごろおだやかな我々としても、だんだんイライラしてくるのは当然ですよね、ついカッとなって、バールのようなもので背中をかきながら、

「とにかくこれ要りませんから。はい。要りませんよ」

とね、毅然として対応するしかない。そしたら、たいてい、こんなこと言われませんか?

「こっちはよかれと思ってやってんだよ」

出た~~~~~~~~~~~~~~よかれ~~~~~~~~~~~~~~~。 

「よかれと思ってやってんだよ」が出るシーンって基本的に「やってることが裏目に出てるシーン」だけです。私たち、こんなセリフ恥ずかしくて言えませんよね。本当に相手のことを考えていたら。でもあなたのアイスクリーム屋さんしかり、こういうことをやる人はどこにでも……

あれ?

今のセリフもなんかどっかで見たことありますね? たしか西表島あたりで……。

じつは今回、ご相談にお答えしようとして、文面を読んで考えている最中、なぜか、アイスクリームのダブルの要る要らないみたいなちっちぇえ押し問答をしているのが、とあるスズムシとゲンゴロウのやりとりに変換されてしまって私はたいそう困惑しました。

そして今実際にこうして回答を書きながら、ふと思ったのです。

 「余計なお世話」や、「よかれと思って」をエンタメにした某番組は偉かったなあ……と。

 「よかれと思って」が太字で画面一杯の字幕になる番組、他にないですよね。人間の本質に近いところにある汚ねぇ部分を抽出して笑いに変えていく構造、エグいなあ。だから歴史に残るんだろうなあ。

最終的に今回の件で折れたあなたは、今モヤモヤしていることも含めて、ポジションとしては大泉さんみたいなもんですよ。誇っていいんじゃないでしょうか。

以上、今回のご相談ですが、えー、すでに終わったことだと相談者さんも書かれておりますので、まあ、打つ手はないです。

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シャープさんとヤンデル先生の相談室 〜ただまぁ、打つ手はないです〜 第3回


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☆今回のお悩み☆

2年前から在宅勤務が始まり、会社に
行かなくなってから、同居している母が、
色々な人からかかってくる電話
(私はこの電話の事を“生存確認”と呼ぶ。
何故なら妹や弟、母が昔から仲の良い
友達からだからだ。)で、「私は娘
(つまり、私)が結婚するまでは死ねない。」
と言っているのが聞こえてくる。

私は別に結婚しないつもりもないし、
嫁に行かないと言った覚えもない。

でも、毎度毎度“生存確認”の度に言われると、
さすがの私も凹みます。

こんな母へどんな対応をしたら
良いのか教えて頂きたいです。

(PN:恋するうさぎ)

どうで荘のみなさん、こんにちは。@SHARP_JP の山本です。ご入居の方におかれましては、各部屋に備え付けエアコンの試運転はお済みでしょうか。とか言いながら、どうで荘がエアコン完備な近代的アパートだとはとうてい思えません。やはりどうで荘には、風鈴や扇風機が似合う。あと浴衣と相撲。狭い部屋に男4人。私はそう思います。 

さて、今回は全面的に打つ手がないお悩みでしょう。人間の思い込みほど、対処のしようがないものはない。その思い込みが善意にもとづいたものだとなおさらです。ましてやここは母から娘への思い込み。心配が愛情という行為の大部分を占める親子関係は想像に難くありません。心配が愛情の発露であるかぎり「心配するな」と言っても伝わるはずもなし。それゆえの圧や悲劇が日々どこかで、相談者のようなお悩みを生んでいるのだと思います。

ただしひとつ光明があるとすれば「私は別に結婚しないつもりもないし、嫁に行かないと言った覚えもない」という点ではないでしょうか。あなたは結婚についての態度を、これまでいっさい表明したことがない。ならばいっそのこと、お母さまへ宣言してしまえばいいと思うのです。「未来はわからない。だから未来を決めない」と。

ことほどさように未来はわからない。そればかりはお母さまも、自分の人生を振り返るまでもなく、ここ2年にわたるウイルスの猛威を思うだけでわかるはずです。未来はわからない。わからないからこそ、私は保留する。そう高らかに、お母さまへ宣誓したらどうでしょうか。

「宣誓! 私、娘一名は、そこそこの仲間とそこそこの仕事ができることに感謝し、なんでこうなったと愚痴りたくもなる見通しの立たない社会を呪いつつ、やっぱり私だってそれなりの幸せが欲しいと思うけど、私にとってなにが幸せかから模索せざるをえない時代と人生に、最後の一秒まで諦めることなく、正々堂々と未来を保留することを誓います!」

多少の軋轢は覚悟の上で、私とお母さんの時代は異なるのだと、高校球児のごとく全力で叫べばいいのです。私たちだって、そこそこがんばっているのです。その点は少なくとも私が保証します。

しかしまたここで問題が立ち上がることを、サラリーマンの私は同時に知っています。思い出してほしい。会社で選手宣誓する行為がどういうものだったかを。今期の売上ノルマを立てさせられる時。自らが組み込まれたKPIを設定する時。挑戦する項目をいくつも述べさせられる時。会社はなぜか、自分の都合を社員の目標にすり替えます。その証として、未来の達成を社員の側から宣言させる。その後に待ち受けるのは何か。報連相であり、期末の査定です。

つまりは、大人の宣誓には進捗が問われるのです。「未来はわからない。だから未来を決めない」と宣誓したとたん、母親からの「保留の進捗どうですか」がはじまるでしょう。そのしんどさは、在宅勤務でも仕事をがんばる相談者さんなら、よくわかると思います。ただまぁ、打つ手はありません。

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D陣日誌

藤村でございます

エアキャラバンが終わり、翌日からは会社で新作の編集をしております
現在、第4夜までが完成

髪型が懐かしの林家三平です

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嬉野先生による「引っ越しのご挨拶」はこちら

『週休3日宣言 水曜どうでしょうハウスにこもって考えたこと』の先着ご予約は本日までです。クリックで開きます↓

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