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シャープさんとヤンデル先生の相談室

〜ただまぁ、打つ手はないです〜

第6回

「公式」の先駆・シャープさんと、つぶやく病理医・ヤンデル先生が!

悩みを聞くだけ聞いて解決しない相談室を架空のアパート「どうで荘」で開設。
入居者からの「相談」に、各自の持ち場から答えていただきます。

毎月1度、どちらかお一人の回答を無料公開
もうお一人の回答や過去のアーカイブは「どうで荘」入居者向けに掲示します。

今月は病理医ヤンデル先生の回答を無料掲載いたします!

シャープさんの回答や、これまでのアーカイブは「どうで荘」の入居者限定ページにて公開しております!

また、お悩みの募集はどうで荘内で行なっています。入居者の方はドシドシお寄せください。

 

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☆今回のお悩み☆

こんばんは、私は札幌でサラリーマンをしている者です。
毎月楽しみに拝読しています。

最後の締めが毎回「打つ手はないです」で終わる連載企画ということですが、お二人はこれまで「打つ手はなかった」という経験をされたり、耳にされたりしたことはありますか?

私は以前、函館の新聞配達の人から「『新聞を配達している人が私の家(配達先)の犬に勝手に名前を付けていた。しかもその犬が新聞配達の人に妙になついていて、私が名付けた名前で呼んでも反応してくれなくなった』というクレームが来たときに「打つ手はないなと思った」という話を聞いたことがあります。

お二人の「打つ手はないです」という経験や、他人から聞いたお話をぜひ教えてください。

(PN:藤村忠寿)

 

こんばんは、病理医ヤンデルです。いつもはこちらで悩み相談という体裁の、しかし実際には言いたいことだけ言って最終的に「打つ手はないです」と放り出してしまうという押し売り的雑文を連載させて頂いておりますが、お楽しみ頂けていれば何よりでございます。

 

そんな私には、何を隠そうひとつの悩みがございまして。

 

連載第6回目にして、はやくも、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る無頼漢から、悩み相談でもなんでもねぇ、事実上の「いい感じのエッセイを書けというお題」をほうりこまれた、ということでございます。

 

企画の趣旨が雲散霧消! もうテコ入れかよ! ていうかこれそもそも本人なのか!? 確かめる手段なし! いやだねーSNS時代! 商業施設の爆破予告がなんとなくウソっぽいなと思っても安全のために避難しなきゃいけないときの気持ちわかるわー!

心にさまざまな絶叫を響かせながら天を仰ぎましたが、病理検査室の天井にあるLED蛍光灯は最近取り替えたばかりでギラギラと攻撃的であり、目をしょぼしょぼとさせてまたPCに向き合って頭を抱えている次第です。これがまあ、目下の「打つ手がない悩み」と申し上げておきましょう。

 

さておき、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る確信犯からいただいたお題を拝見して、私は、ほろほろと昔のことを思い出しました。

ある日、ある場所で、ある仕事をしていた私が、ある年下の人間から相談を受けたときのことでございます。

私はあのとき、確かに「打つ手はないな。」という気分になりました。



ある人間が、私に向かって、仕事のつらさをとうとうと語りました。

ときに声を詰まらせ、ときに塞ぎ込み、ときに過去に対する深い後悔の念をにじませながら、「私の選択は間違いだった」「目標が消えてしまった」「私の基盤となるものがガラガラと崩れてしまった」というような言葉をぽつり、ぽつりと紡いでいきます。

詳しく聞いてみると、あれもこれもと夢を詰めこみまくって予定を立てたはいいが、次第にマルチタスクを消化しきれなくなり、アップアップになって、ついにはメンタルが爆発してしまった、ということのようでした。

そして、私が「相談」に乗ることになったのですが、その「相談」が、少々変わっておりました。

 

この人間は、こういうしゃべり方をしたのです。

 

――こんな決断をすると皆さんに迷惑をかけることはわかっているんですが。

 

――内心、冷静になって考えると、今こうしてやっていることがもう限界だとわかっているんですけれども。

 

――これ、最初の選択が、そもそも無理があったってことですよね。わかっています。



……そう、相談なんですけれど、「全部わかっている」と言うのですよ。

私は面食らいました。

相談じゃないんですよね。

確認なんです。

 

あのときの私は素直にこう感じました。「これって、私から何か言う必要はないな」。そして、かなり強めに感じました。「こりゃあ、打つ手はないな」。

今回、「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗るデウス・エクス・マキナから大鉈をふるわれて、真っ先に思い出したのが、このエピソードでした。

 

思い起こせば、人というものは得てして、「ある程度決断してから人に相談する」ものですねえ。

 

これからどっちの道を選ぶか、という選択肢AとBとがあるとして、選ぶ可能性がフィフティ・フィフティの段階で他人に話を聞いてもらうというのは、実際にはまれなんだと思います。

 

80:20? あるいは、90:10かな。

 

本人の中で、ほぼほぼ、取るべき道が決まっている状態で、「じつは今50:50で迷っているんですけれども」と、90:10であることを(タテマエ上は)隠して相談をするケースのほうが、圧倒的に多いような気がします。

くだんの人間に限った話ではありません。たいていの相談って、「それもう君の中では決まってるよね。」と言いたいものばかりです。「相談者のなかで設定された謎解きを、相談者が選んだ情報をもとに解かされる」というのが、お悩み相談の本質的な性質のひとつなのではないでしょうか。

 

じゃあ、人はなぜ、そこまでして他人に相談をするのかというと……。

うーん、ここからは本当に私の想像なのですけれども、

 

「自分の選択」を誰かに承認してもらうこと自体が、ものすごく大きな人生の目標なんでしょう。

普通、目標と言ったら、何かをやってみたい、どこかにたどり着いてみたい、違うものになってみたい、みたいなものを指すと思われがちです。その目標に向かって取る手段を選ぶ。「選択」とはほかでもない、手段を選んでいる。

 

しかし、その「手段」自体が目的化する。より細かく申し上げれば、「手段を承認してもらうこと」が、本人にとっては、タテマエ上の目標よりも一段でかい、本質的な「影の目標」になっていることがすごーく多いですね。

 

……やあ、言い過ぎたかもしれませんけれどね。

 

本人の中で「わかっているんですけど」と言いながら、「どう思いますか」と人にたずねて回る人間のことを思い出して、だいたい世の中の相談事に、「お前は正しいよ」「その考え方は合っているよ」以外の正解はないんだよなーという気持ちが、あらためてふつふつと湧いてきました。

相談というものは得てして、他人がしゃしゃり出てきて「何かの手を打つ」というものではない。そんなことは求められていない。

思えば、「手を打つ」というのは、注射を打つみたいなもので、セラピー(治療)的です。でも、ほんとうは、「手を打たないでただ背中にそっと当てる」だけでいい場面が山ほどある。ケア(手当て)だけが求められている。

 

今さらですが、「打つ手はないです」で締めるこの企画、じつに深いな、確実に需要と価値がありますね。なるほどよくできている。

 

「ペンネーム・藤村忠寿さん」を名乗る公安の刺客に対するお答えは以上となります。順番的に私の記事が無料公開かな? シャープさんが「打つ手はない」と感じたエピソード、楽しみですねえ、そっちは皆さん、金払って読んでください。「たまにはどっちも無料で読ませろ」みたいなリプライを私個人に送られましてもすみません、当てる手がないわけではないですが、打つ手はないです。

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毎月のお悩みへの回答はおひとりは全文公開。もうおひとりは「どうで荘」内のみでの掲載です。「どうで荘」は特に意味なく初月無料中

 

シャープさんの今月のお悩みへの回答はどうで荘で公開中です!

【回答者プロフィール】

山本隆博
@SHARP_JPの運営者。どうでしょうをサラリーマン目線で見直すのが好きです。

病理医ヤンデル/市原真(43)
好きなどうでしょうはユーコンです。

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