8/26の日誌(嬉野)
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嬉野です。日記です。
実は、少し前に、今は言えないとある企画で、編集さんに「水曜どうでしょう」で、感動した企画を教えてください、というテキスト依頼がありまして。
私としても、「え? 感動した企画なんてあったかな?」と思ったんですが。
たしかに最終回の藤村さんの号泣は感動的でしたが、でも、あの現場では、私ばかりはそんなことになってるとは露ほども感じていなかったので、あの瞬間には感動も何も、「お!いきなりどーした!」的な、驚きしかなかったんものですからね。
なるほど、だったら私が「ロケの現場で感動した」ことなら結構あるなと思い直しましてね。そっちの線でテキストを書き出したんです。
そして、以下のような読み応えのあるテキストが完成したわけです。
↓
「水曜どうでしょう」で感動した企画はと聞かれて、今、思いつくのは、「試験に出る石川県富山県」ですね。
それも最終話で行われた大泉校長の「校長訓話」です。
私はこの訓話をロケ現場で、リアルタイムで、この耳で聴きながら甚だしく感動したことを覚えています。
安田くんが最終試験の7問目で「トンボロ」と答えられず不正解となり、その瞬間、大泉校長の2回目の四国行きが決定してしまう、
「そうか!そうか!今年も四国か!」と大泉校長は思わず畳にのけぞり身悶えましたが、藤村くんに、「校長、締めの言葉を」と厳かに促されると、タレントの責任として、「たしかに番組にコメントで始末をつけなければ」と思ったのでしょう、即座に気持ちを切り替え起き上がるや、つんつるてんの背広で、まず居住まいを正すと、そこから実に3分近くもつづく長セリフを語り出すんですが。。。。
もちろん、あれには台本なんかない。
その場の即興で彼が語り出したことなんです。しかしながら、あの「校長訓話」はそのまま予備校の先生が言いそうな様式にのっとっており、しかも、意外に胸を打つのです。
大泉校長はまず、今も勉強を続けているであろうテレビの前の受験生の努力をねぎらうことを忘れない。
次に、安田くんの敢闘を評し、その上で、「しかし問題には必ず落とし穴があるから受験生の諸君も、そこは慌てず慎重に考えて本番には臨むように」と、静かに受験生たちを諭し、そうすることで安田くんのしくじりを無駄なものにせず、掬い上げると、さらにエールを送るのです。
「安田くんは試合には負けたかもしれないが勝負には勝っていた」と。
だったら、落ち込むな。「負けて悔いなし!」だと。「安田くんは全力を尽くしたんだ」と、それでイイんだ。安心しろ、と、「おまえの骨はオレが拾ってやるんだ」と、打ちひしがれた安田くんの魂を大泉校長は鼓舞し、安田くんの魂を慰めるのです。
その上で、今度は自身を振り返り、「どうでしょうゼミナールの校長として私にできることはここまでです」と、教師としての自分の非力を詫び、四国行きの決意を固める潔さ、
「ここからは1人の人間として、八十八の寺を回ってみなさんの合格を祈願したい」
まさかこんな感動的な流れのスピーチになるとは思ってもいなかったものですから、「いやぁなんかイイもの聴いちゃったなぁ」と、意外な気持ちだったけれど、
そこは大泉洋にしても、流れでついつい神妙に語ってはみたけど、「なんで、オレが独りで四国の寺を回らなきゃならないんだ。そもそも、おかしいだろう」と、やっぱりここでも思えてきたんでしょうね、スピーチの途中から大泉校長も笑っちゃってて。
それ見たら、聴いてる方もね、「あ、そんな気なんか本人にはさらさらなかったよね」ってことも、当たり前ながら思い出されてきて(^^)
でも、今までの訓話が予想外に素晴らしくて感じ入って聴いてしまって分だけなんだか可笑しくなる、という、とても自然な笑いへの運び、構造になってるから、見返すたびに笑ってしまう。
とはいえ、「今は、番組の締めに入っているのだ」と、大泉校長は自分に鞭を入れるように、ゴールへの直線を走り込む、
「案ずるな受験生! 残りの日々をビシッと勉強してください!どうもありがとうございました!」と、
全国の受験生に華々しい檄を飛ばしながら、土下座で締めくくるという、終始よどむことのない構成力と表現力と演技力だったわけです。
ここまでの語りは実に3分近くもあって。それなのに聴く者の心を捉えて離さない実のある内容となっている上に、やっぱり聞かせて爆笑させるという、実になんとも奇跡のスピーチだったのです。感無量。
私は大泉洋の、あの、ここ1番での並でない対応力に毎度深い感動を覚えます。そして今だに見返すたび聴き入り、そして見入ってしまうのです。
そんな大泉洋の長い長い奇跡のスピーチを同じく現場で浴びるうちに、満点が取れずに、失意の中で気の毒なほど茫然自失だった安田くんの表情にも、いつしか自然と笑みが戻っているんですよね。
大泉洋のそんな始末のつけ方に、今思い返しても私の感動は深まるばかりなのです。
おわり
と書いて、私は編集部に原稿を送ったのですが、
「すみません。150字ほどでお願いします」と、泣かれてね。
たしかに最初からそういう文字数でのご依頼だったのです。
なのに、いかん、筆が乗りすぎた。
編集部の方でもお困りの様子だったので、私としてもそれは不本意。
よし!とばかりに、この文字数から一気に150字程度に縮めましてね。
ここから150字カットしたんじゃないんですよ、150字にしたんです。そして送り直して、無事に入稿したんですけど、
さすがに削りすぎたんじゃないか。
150字で、あの私の思いは成仏させられたのか、と、思い。。。。
せっかくなんで、このページでね、皆さんにわたしの長い方のノーカットの原稿をご覧いただいて、
原稿供養をしていただこうと思いたち。
本日、日記の方にしたためさせていただきましたしだい。
あぁ、これで。
長すぎて日の目を見ることのなかった私の原稿も成仏できる。
ありがたい。
チーン。
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