はいはい、日誌です。
先週日曜日は浜松の遠鉄百貨店でトークショーをやりましたな。
入居者のみなさんもお越しいただいたようでね、見知った顔がチラホラと。
あの日は秋晴れの良い天気でね、そのせいもあってか休日の浜松の街には活気がありましたね。
遠鉄百貨店の人たちも実に明るく楽しそうで、なんだか、こちらも気分が良くなるような、そんな日でした。
トークショーの会場は、ちゃんとしたホールでね、舞台もあって、そこに会議机が横一直線にビシッと並んでおりましてね。
まるで記者会見のような、おごそかなしつらえでございまして、「すわHTBさんもこの流れで社名を変えるのか!」というようなね、そんな雰囲気もございましたが、そのような暗澹とした世知辛い世の中とは別次元で、私はワインを一本空ける勢いで楽しくやってきました。
トークショーの様子は「はじまらさったTV」にアップされているのでね、ぜひご覧ください。
その夜は、hodの「藤やんうれしー」の会員のみなさんと寄り合いを開きまして、貸切の地中海料理のお店でね、これまた楽しい時間を過ごしました。
さて、その翌日のことでございますが、宿泊していたホテルコンコルドをチェックアウトいたしまして、浜松駅までバスに乗ったんですけどね、ひとりの女性がなにやら落ち着かない様子で車内を行ったり来たりしている。見れば手に一万円札を持っている。
「あ、たぶん両替をしたいんだろうな」と、しかしながらバスの両替機は万札に対応してないと、それでどうしたものかと困っているんだろうと。
残念ながら私は両替できるほどの千円札は持ち合わせていないし、と思っているうちにバスは浜松駅に到着しまして。
そしたら女性の近くにいたおばあちゃんが「わたしが払いますよ」と声をかけたんですね。
女性は恐縮して「いやいやおばあちゃんいいですよ」と、言ったんですけど「いいからいいから、いくらかね?」と小さな小銭入れの中を探っている。
そこまで言ってくれたので女性は「ほんとにすいません」と頭を下げて100円玉と10円玉を何枚か受け取っていたんです。
それを見て私、「あぁ、そうだよな、両替できないなら、そのぐらい払ってあげればいいんだよな」と、そのおばあちゃんの行動にいたく感銘を受けましてね。「なんかオレ、まだまだだな」と。
「おばあちゃん、ほんとに助かりましたありがとう」と、降車の列に並びながら女性は何度も、おばあちゃんにお礼を言ってましてね。その声が、乗り合わせた乗客を一様に澄み渡る秋晴れのごとく清らかな気持ちにさせておりました。
そして女性が「お騒がせしました」と、頭を下げながら料金箱に運賃を入れますと、そのやりとりをずっと聞いていたんでしょう、運転手さんが実に申し訳なさそうに言いましたね。
「あの・・・すいません、あと10円足りません」
と。
これを聞いた女性はもう、全てが吹っ切れていたんでしょう、浜松の秋晴れのごとく、実に爽快に、おばあちゃんに向かってこう言い放ちましたね。
「おばあちゃん、あと10円ちょうだい!」
そして無事に運賃を払い終えた女性は急ぎ足でバスを降りると近くにあった店に飛び込み、何かを買っておばあちゃんに駆け寄り、借りたお金とその買った何かを手渡して、何度も何度も頭を下げておりました。
浜松、いい町でしたね。
(2023年10月29日 藤村忠寿)