嬉野です。
昨年の年の瀬に、講談師 玉田玉山(たまだぎょくざん)氏の講談を間近に聴く機会があり、その節、私は氏の講談の迫力にスコブル心惹かれたのでありました。玉山氏はまだ30歳になったばかり。驚くほどの色白で、その立ち姿は皆さんもご存知でありましょうところの彼の英国の絵本作家、故レイモンド・ブリッグズさん描くところのスノーマンをさらに撫で肩にして立たせたような感じでありますから、見上げるような大柄でありながら隠しようもない愛嬌があり、その顔立ちはスノーマンよりはよほど口元が小さく目が細く、お人よしと見えなくもないながら、いやまてよ、どうも目の奥が笑っていない気もして油断のならないご面相とも見えますので玉山氏のご性質の真相は、今もって判然とはいたしませんが、とにかく人より雪だるまに近い印象を有するこの幾分人離れした風貌が初見の客にも彼をして人外(にんがい)と見せるのか妙な安心感を与えるところは芸を見せる者としては得であろうと感じいるのでありました。
この玉田玉山氏は、うちの玉木青くんの年来の友人であり、その縁あって、5年ほど前には京都で開催した「よろしく御笑覧ください」という京都のパフォーマーたちを廃校になった京都の小学校の講堂に集めた大イベントでもトップバッターで出演を飾った過去がございます。
あのときはまだ、玉山氏は丸山交通公園という名でステージにスーツを着て立って独りで漫談的なことをやっておりましたが、そのときも彼は、ただ語るだけでは飽き足らず、手に持ったウヰスキーのボトルを満座の中で一本飲み干してしまいながら漫談を語ったという身体を張った荒芸をも披露しまして満天下の度肝を引き抜いたのでありました。
その丸山くんが一念思い立ち、さる高名なる講談師に弟子入りすること4年。この度、ようやく師匠の許しが出て年季が明け、これからはイベントごとも自分の判断で起こせる立場を得まして、ここに晴れて一人前の講談師となり門出を飾ったわけでございますが、この玉山氏、「水曜どうでしょう」の大ファンでもありますことから、去年の年の瀬に大阪で盛大に行いました「第1回どうで荘忘年会」の席で、飛び入りよろしく「うつ病の自分と水曜どうでしょうとの出会い」という即席講談を一席、急遽呼び込まれました舞台で演じてくれましたが、これがすこぶる面白く、問答無用に私の胸ぐらを鷲掴みにしたのであります。
講談という、あの悠長で、なにかと言えば大声を張り上げがちな大袈裟な語りの芸でもって「水曜どうでしょう」を深夜に初めてテレビで見たときの「なんじゃこの番組は?」という玉山氏の驚きを、うつ病にやられていた当時の自分の心境と共に大真面目に語って、なおかつ笑かすという、奇天烈なる可笑しみの世界をお客の前に現出させたのであります。
どうでしょうの味わいを深く知るものにとって玉山氏のこの講談は絶品の味わいで、「水曜どうでしょう」をそらんじるほど繰り返し見てきた猛者ファンほど、玉山氏の「どうでしょう講談」は胸に迫ると思いますので、是非とも間近で体感してほしいのであります。
さて、そのような玉山氏の「水曜どうでしょう講談」が、大阪の忘年会に続き、新春1月8日の「どうで荘新年会」でも聞けるかもしれないということですので、当日ご来場の皆さんは、どうぞ今から「お楽しみに!」と私は言いたいのでございます。
そして、玉田玉山氏の「どうでしょう講談」、良いじゃないか!と、わたくし同様に心を鷲掴みにされた皆さんは、是非とも陰に陽にこれからの氏の活動を支えてあげていただきたいのでございます。
いつか「水曜どうでしょう」をニッポンの伝統芸能である歌舞伎で観たい聴きたいと思っておりましたら、これまたニッポンの伝統芸能である講談で語って笑かすという男が出現しよりました!という、以上、2023年新春のホットな話題でございました。
不思議にニッポンの伝統芸能と小気味よく通底する「水曜どうでしょう」を見つつ今年も朗らかに年を重ねて参りましょう。