ホテル住まいが長くなるとホテルで洗濯することになるわけで。そしたら私が定宿にしている赤坂のホテルでは、なんと備え付けのコインランドリーが無料です。素晴らしくないですか?
でも、そのせいでコインランドリーは奪い合いです。
おとついのことです。羽生さんとのトークで盛り上がっちゃって気がついたら3時間以上話しちゃってて、それでホテルに帰ってきたらもう夜中の12時を過ぎてたんですけど、着る物のローテーション的に洗濯しなきゃならない日だったんで、部屋に戻る前にランドリーコーナーをひょいと覗いてみたんです。そしたら、うまい具合に3台あるうちの1台が稼働していなかった。残り時間の数字が「ゼロ」になってたんです。
「よし!今のうちに洗濯だ!」
と、部屋に戻って汚れ物をかき集めてすぐランドリーコーナーへ取って返し、洗濯機の蓋を開けて汚れ物を投入すると洗剤をパラパラと振りかけ、蓋をしてスタートボタンを押したわけです。そして「さて、ここから31分」ということでスマホのアラームに31分をセットしてとりあえず洗濯セット完了です。
で、部屋へ戻ろうとしたらランドリーコーナーの出入り口に音も無く1人の若いのが突っ立ってたんで、いきなりそれに気づいて若干びっくりして、「お!なんだよこいつ」と心の中で呟きつつ部屋へ戻ってそこから31分。若干うたた寝もしちゃってたところへスマホのアラームが鳴ったんで、パッチリ目がさめて「よし!次は乾燥だ!」と再びランドリーコーナーへ取って返したんです。そしたらね。洗濯機の前にビニール袋を持ったホテルマンが立ってたんです。
「何してんだこの人は?」と、わたくし無言のうちにチラチラ見ておりましたら、そのホテルマンが私が洗濯機の蓋を開けたのを見て「あの、恐れ入ります」と声をかけてきたわけです。
「え?なんですか?」と訝しげに返しましたらホテルマンは言うわけです。
「あの。お客さまのその洗濯物の中に、他のお客さまの洗濯物が入っておりまして」みたいなことを言いにくそうな顔して言うわけです。
「え? 何言ってんの? そんなバカなことあるわけないじゃない?」と、私が鼻で笑いながら否定しましたら、そのホテルマンが重ねて言うには、どうやら私が汚れ物を洗濯機に投入したとき、既に、洗い終えた他人の洗濯物が洗濯機の底で静かに持ち主の回収を待っていたらしいのです。それをたいして見もしないで私は自分の汚れ物をその上から投入して洗濯機を回してしまっていたようなのです。
しかし、そんなことを聞かされてもまだ信じられない私は、「ほんとかよ」と、実際に洗濯機の中を覗いてみましたら、「あ!」たしかに見覚えのない下着が混じってるわけです。「やべ!」明らかに私の落ち度、判明です。
ビニール袋を持ったホテルマンは「ございますか?」と遠慮気味に確認してくる。「ありますねー」と私がホテルマンを振り向くと手にしていたビニール袋を広げて「ここへお願いします」と言ってくる。
で、私も「選別できるのかな?」とおぼつかない記憶を頼りに選別を開始しましたら、私のパンツもユニクロなら、その混入している他人のパンツもユニクロっぽかったわけで「これは困難かも」と思われて。でも、やっぱり好みというのは人それぞれでね。わりと選別できたわけです。オマケに私のパンツには「水曜どうでしょうキャラバン」のときにパンツのタグに「う」というマジック書きの識別を施しておりましたので、たやすく確認が出来たのです。
こうして無事に私は選別作業を終え、ホテルマンはビニール袋の口を閉じてランドリーコーナーを去って行きました。
「いやー。悪いことしちゃったなぁオレ」と、私は内心忸怩(じくじ)たる思いで乾燥機に洗い上がったばかりの私の洗い立ての洗濯物を移し終えると乾燥機のタイマーを50分に設定してスタートボタンを押しました。
そしたら、「あ、そーか。。オレが洗濯機を回し始めたとき、音もなく立っていた若者がいたけど、あの彼が被害者だったか」と、合点がゆき。「いやはやそれは可哀想なことをした。彼だって洗濯した後、乾燥までしたかっただろうに、オレのせいで2回も洗濯させられちゃって、さらに31分待たされるはめになって、最後はとうとう深夜になって、眠くてもはや乾燥させる気力もなかったんだろうなぁ」と思われ。「でも、あれだな。オレのお陰で2度も洗ったわけだから結果的にかなり清潔になって良かったんじゃないか?」とも思え。それより「とはいえ、オレの落ち度ではありながら、他人の下着と一緒になっちゃったオレとしても抵抗はあるっちゃあるよなー」と、思われ。「あー、でも、一緒にはなったけど、その段階では、もう一回洗濯が終わって清潔になってたんだからオレ的には被害はないわけだし」とか、いろいろ勝手なことを考えて、「いやー、とにかく忘れよう」とか思って寝ようとするんですけど、さっき洗濯が終わるのを待ってる間にうたた寝しちゃったもんだからなんとなく目が冴えていて。窓の外は白んで来るしで、どことなく寝るのも面倒になって、そのまま珈琲を淹れて朝まで起きていようと思ったのでした。
さて「嬉野珈琲店」は、近々、新種の浅煎りブレンド珈琲を発売予定です〜。
(2022年10月23日 嬉野雅道)