Facebook Facebook Twitter Instagram Youtube 藤村忠寿 嬉野雅道 星アイコン 入居者募集中

藤村でございますよ

前回に引き続きK-POPアイドルグループの番組を作った時のお話です。

あれは6年ほど前。

「BEE SHUFFLE(ビーシャッフル)という韓国人と日本人の混成グループが新曲を出すタイミングで番組を作ってほしい」というオーダーを彼らのマネージメント会社から受けまして。で、その番組は韓国のテレビ局MBCのミュージックチャンネルで流すのでMBCのスタッフと一緒に作ってほしいと、「ほぉーそれは面白そうだ」ということでソウルのMBCに向かいました。

Tシャツ姿で現れたミュージックチャンネルのトップはまだ40代でね、「スーツなんか着てると若い人が構えちゃうからいつもこんな格好です」なんって頭をかきながらにこやかに話してくれまして、もうその時点で意気投合。

打ち合わせもそこそこに「汚い店ですけど、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)の美味い店がありますからご案内します」と、そのフランクな姿勢にも好感触。

「うまいうまい!」とカニを食っていると「あなたの番組制作のパートナーとして、いま売れっ子の女性ディレクターと優秀なカメラマン、さらにアシスタントを日本に派遣しましょう」と言ってくれましてね。「ただし彼女はとても忙しいので3日間だけです」と、そんな条件を与えられました。

日本に帰り「さてどんな番組にしようか」と考えます。

番組の主題はアイドルグループ「BEE SHUFFLE」の新曲の売り出し。ならばいっそのこと新曲のPVを番組で勝手に作ってしまおう、そのメイキングをバラエティー風に仕上げていく、そうすればおのずと新曲の露出は増える。

さらに、せっかく韓国から優秀なディレクターとカメラクルーが来るのなら、ウチからもドラマや「原付日本列島縦断」を共に作った信頼のカメラマン・タケシと音声マン・ガッツを出して、韓国と日本、それぞれでPVを競作し、どちらが良いのか最後に視聴者にジャッジしてもらう番組というのはどうだろうか。

まさに日韓戦。これは伝統的に盛り上がる。

いや、ちょっと待てよ。

彼らのグループ名は「ビーシャッフル」。そもそもグループの構成自体が韓国人と日本人の混成。

そうか「シャッフル」ね。よしよし、ならば番組の撮影スタッフもシャッフルしてしまおう。つまり韓国から来る優秀なカメラクルーを私が使い、韓国のディレクターがウチのタケシとガッツを使ってPVを撮影するという変則技。

例えて言うなら、日本人の監督が韓国代表チームを率い、韓国人監督が日本代表を率いてサッカーの日韓戦をするような感じ。

言葉の通じない選手(カメラクルー)をどう使いこなすか?これこそまさにディレクターの力量が問われる戦い。いやー腕が鳴るじゃあないかぁー。

というわけで新曲「マジ★いいじゃん」を売り出す番組「マジ★しゃっふる⁉︎」の制作がスタートしました。

撮影が近づくと、番組内容を一切伝えていなかった韓国チームから「どのような機材を用意すればよいですか?」という問い合わせがありましたが、「あ、バラエティー番組ですから普通のテレビカメラでいいですよ」と答えておきました。

だってねぇ、韓国の巨大テレビ局MBCで音楽番組を専門にやっている彼らに「ミュージックビデオを撮影します」なんて言ったら、きっとものすごくカッコいい映像を撮れるカメラだの機材を用意してきますからね。こっちは日本のたかがローカル局。そんな機材が揃うわけがない。公平を期すためにも、ウチにあるENGと呼ばれる普段ニュース取材で使うようなカメラだけを用意させました。

ロケ地は真冬の北海道「星野リゾートトマム」。そこへ遠路はるばるやってきた韓国チームに番組内容を伝えます。

「日本対韓国でPV撮影の対決をします」
「ワォ!」
「ただし、日本と韓国のスタッフを入れ替えます」
「ん?」
「つまり、あなたが韓国から連れてきた優秀なカメラマンとアシスタントは、この瞬間から僕のものになります」

瞬時に企画を理解した女性ディレクターは笑ってましたけど、韓国のカメラクルー2人の困惑しきった顔は今も忘れませんね。

「え?あのおっさんの下に付くの?」みたいなね。

でもねぇ、撮影が始まるとやはりプロ。私がやりたいことを身振り手振りで説明すると、それを忠実に理解して撮影し、さらに「こんな映像はどうですか?」と積極的に提案をしてくれる。言葉は通じなくても映像で会話ができる。それはとても楽しい体験でした。

忘れられないのが、氷でできた家の中での撮影シーン。

「この氷の壁越しに左から右へゆっくりドリー(横移動)して」

そんな指示を与えました。通常であれば三脚の下に車輪を付け、そこにレールを敷いて車輪を滑らせれば見事な横移動のカメラワークが出来るんですが、もちろんそんな機材はない。重いカメラを肩に担いでゆっくり横歩きをしてみるけれど、やはりブレてしまう。すると韓国人カメラマンは手袋を外し、自分の手のひらを氷の壁の上に当て、その手の上に重いカメラを載せて、手をゆっくり横に移動させ始めたのです。

「いやいや!そんな素手で!せめて手袋して」
そう言うと
「いや、手袋をしていては滑りが悪くなりますから」と聞きません。

つまり、自分の手の体温で氷を溶かしながらゆっくり横移動すればカメラはブレないと、そういうことなんですね。しかし、カメラを載せるだけでも相当手の甲は痛いはずで、しかも手のひらは冷たい氷の上。でも彼は「これで一度チャレンジさせてほしい」と。その心意気にうたれて撮影をスタートするも、なかなかうまくいかない。でも韓国人カメラマンは諦めない。「もう一回!」「もう一回!」と、自ら編み出した「氷上素手ドリー」で、なんとか私の指示した映像を撮るためにがんばり続ける。何テイク目だったでしょうか、見事に思い通りの映像が撮れたときには、お互い抱き合って喜びましたよ。

「おまえはスゴイ!」って、彼のことを心からリスペクトしました。

一方の我がHTBが誇るカメラマン・タケシとガッツも、「どうせ藤村さんはお笑い路線でしょ」「ウチの監督はオシャレ路線ですから」ってな具合に私に冷ややかな目線を向けて、韓国の女性ディレクターに心を捧げていましたね。

えーまったくもって私のPVはバラエティー路線で、雪かきスコップをマイク代わりに歌わせたり、屋内プールで波にのまれながら歌わせたりと、好き放題アイドルをいじらせてもらいましたよ。

番組はもう今では見ることが出来ないんですが、2日で撮り終えたPVは今でもYouTubeで見ることができます。

「ビーシャッフル 藤村監督」で検索すれば出てきます。視聴者投票の結果は、はい!私が勝ちました!でもそんなことより、とても有意義な体験でした。今でも韓国のカメラクルーのことを思い出します。

(2021年10月13日 藤村忠寿)
記事一覧に戻る