私、もう10年近く前に韓国のアイドルグループの番組を作ったことがありましてね。
芸能事務所アミューズが韓国にも事務所を開設したころで、「CROSSGENE(クロスジーン)」という韓国人、中国人、日本人の混成グループをデビューさせようとしてまして。
アミューズの親しい取締役の方から、「藤やん、ちょっと彼らとなんかやってみてよ」という実にアバウトな発注を受けて、何度かソウルに通い、彼らと親しくなって、それで番組を作ることになったんですね。
ゴリゴリのバラエティー番組ですよ。
MCはチームナックスリーダー森崎博之。MCではあるけど、しゃべってるのはほとんどがディレクターの私で、そのあたりどうでしょうとまったく同じテイスト。出演者であるCROSSGENEのメンバーが何をするのかまったく知らないのもどうでしょうと一緒。
番組タイトルは「CROSS BATTLE」。6人のメンバーを3人づつのグループに分けて、真剣に対決させるというもの。
最初の舞台は真冬の北海道、ルスツ高原スキー場。ほとんど初心者の彼らが2時間練習しただけでスノーボードのレースをしたり、犬ゾリのタイムレースをしたり。翌日には真冬の海へ連れ出して、これまたまったく経験のないサーフィンで対決させたり。
続いて舞台を韓国に移して、釜山からソウルまで自転車レースをさせましたね。各チームひとりづつ交代で自転車に乗せて、あとのメンバーと我々は後ろの車からレシーバーで指示を送りながら撮影すると。これなんか「原付シリーズ」とまったく同じ手法ですね。みなさまならば違和感なく見ていられる画ヅラです。
ただまぁ異国での撮影となればいろいろと信じられないことが起こる。あれは、自転車レースのスタート直後でしたかね。アイドルが乗る自転車2台が一般道をすごい勢いで走り出し、激しいレースを展開する。後ろの車では私と森崎リーダーが実況しながら撮影している。
すると、ですね。その撮影車が2台の自転車を追うのをやめて、右折するんですね。
「えっ!えっ!どうしたどうした!」
当然、私とリーダーは騒ぎますよ。
「えっ?なに?え?ガソリン?」
車はガソリンスタンドに入ったんですね。
「えっ!今入れんの?今?ちょっと待てよ!」
「なにやってんだよ!先に入れとけよーっ!」
撮影してんのわかってるはずなんですけどね、ドライバーも。すごいですよね。日本のドライバーならあり得ない話です。でもこういうのが面白い。
あとは、山岳路のレースで上り坂がつらすぎて、アイドルが車の窓から吐きましたね。
「あ、サンミンが吐きました」
という仲間のアイドルの悲しい声が後部座席から聞こえましたね。
甘い物早食いもやりましたね。これもアイドルが吐きましたね。
そんなとても面白い番組なんですが、日本ではHTBの深夜で放送されだけで、メインは韓国のケーブルテレビでの放送。だからテロップも韓国語で作りまして。どうでしょう風にね。
みなさまならよくご存知の「出発」なんていうね、黒バックに白のゴシックでドドン!と出すあのテロップ。
それを編集で入れてたんですけど、韓国の放送局から「仮のテロップが入ったままだ」と言われまして。向こうのバラエティー番組のテロップって、とにかく派手ですからね。黒バックに白文字だけの質素なものだと「仮に入れてるだけのテロップ」だと思われたんですね。それで韓国の方が作り変えてくれたりして。
日本人のスタッフと韓国人のスタッフが、一緒に旅をしながら作った番組。
でもテレビで放送されることは二度となく、誰の目にも触れないまま消えてしまったんですけど。
インターネットを探してみると、いろいろと残ってるもんなんですねぇ。「CROSSGENE CROSSBATTLE」で検索してみてください。とても面白い番組だったんですよ。
K-POP好きの次女は、この番組で当時すっかりCROSSGENEのファンになりました。
それからも韓国とはつながりも多くて、韓国の政府から呼ばれてソウルで日本のテレビ事情の講演をしたり、韓国の有名なバラエティー「一泊二日」や「花よりお姉さん」を作った制作者の方と対談したり。先方は韓国語、こちらは日本語で、通訳を介しての対談だったんだけど、いつのまにか通訳なしで会話できるぐらいに「思いは同じ」で、とても嬉しくなりましたね。
で、韓国のアイドルグループの番組は、他にも1本作ってまして。
そちらのお話はまた次回の日誌で。